「関係の期間が短かった」「会った回数が少ない」「浮気はあったが肉体関係まではなかった」という場合でも慰謝料を支払う必要があるのかという相談を受けることがあります。
本ページでは、不貞行為の期間や回数、肉体関係の有無が慰謝料にどのように影響するのかを解説します。
そもそも不貞行為とは
不貞行為とは、配偶者以外の人と性交渉を行うことを言います。
夫婦は互いに貞操義務を負っており、不貞行為を行った場合には、離婚原因になったり(民法770条1項1号)、不法行為に基づく損害賠償(719条)の原因になったりします。
また、不貞行為の相手方(要は浮気相手)も同じく損害賠償義務を負います。
この不貞行為による損害賠償義務を一般に「慰謝料」と呼んでいます。
不貞行為の期間や回数が少ない場合
「1回だけだった」「期間はごく短かった」という場合でも、肉体関係があれば不貞行為に該当し、不法行為として損害賠償義務(慰謝料支払義務)は発生します。
不貞行為は回数や期間に関係なく成立するため、「1回だから慰謝料は不要」ということにはなりません。
もっとも、慰謝料額を決める際には、不貞行為の回数や期間は重要な判断要素になります。
長期間にわたる不貞や頻繁な肉体関係がある場合には、慰謝料額が高くなります。
逆に言えば、期間が短い、回数が少ないケースは、慰謝料額が低くなります。
慰謝料請求の段階では「長期間にわたり、多数回の不貞行為があった」として、300万円前後の高額な請求がされています。
そのため、期間が短かった、回数が限定的であったという事情は、減額交渉の大きな材料になります。
肉体関係がない場合はどうなるか
肉体関係がなければ、原則として不貞行為には当たりません。
そのため、法律上は慰謝料の支払義務は発生しないのが基本です。
しかし、請求する側は弁護士費用を支払って依頼しているため、「肉体関係が立証できないから一切支払わない」という合意は困難です。
そこで「肉体関係はないが、不貞を疑わせる状況を作ってしまったことへのお詫び」という位置づけで、十万円から数十万円程度の少額での合意をすることがあります。
これは、不貞行為を認めずに、和解に持ち込むための手段にもなります。
まとめ
- 不貞行為の期間が短い、回数が少ない場合でも、肉体関係があれば慰謝料支払義務は発生する
- 期間や回数は慰謝料額の減額要素として重要である
- 肉体関係がない場合、原則として不貞慰謝料支払義務はない
- 関係性や状況次第では、少額の支払いでの解決を検討する余地がある