不貞慰謝料の示談書にサインする前に確認すべきポイントと必須記載事項

不貞慰謝料の請求を受け、金額や支払方法について合意に至っても、示談書(合意書)に不備があると、後から追加請求されるリスクを抱えることがあります。示談がいったん成立すると、基本的に取り消しや変更ができません。
このページでは、不貞慰謝料の示談書にサインする際に注意するポイントと、記載しておきたい条項を解説します。

法制度の解説

示談とは

示談は、当事者間で争いをやめる和解契約です。本来の権利関係(慰謝料額や不貞の内容)にかかわらず、示談で定めた内容で権利関係が確定します。示談が成立した際に、成立の証しとして作成されるのが示談書です。

一度示談が成立すると、撤回や取り消しはできません。「納得できない示談書にサインをしてしまった」という相談を受けることがありますが、示談後に内容を修正することはできません。

示談書の記載条項

主な示談書の記載内容は次の通りです。

  • 当事者・対象事実の特定
    誰と誰の不貞行為についての、誰と誰の間の慰謝料請求について合意するのかを特定します。
  • 支払義務(慰謝料)に関する条項
    誰が誰に対して、何円を支払うのかを記載します。
    支払期日や支払方法を記載するほか、分割払いの場合には「毎月末日」などのように分割払いの支払期日を記載します。
  • 清算条項
    示談が成立したことで、両者の間にそれ以外の債権債務関係が存在しないことを記載します。この記載に不備があると後日に再度の請求を受ける危険が発生します。
    相手方と別の債務などがある場合には「本件に関し」という留保をつけて、清算の範囲を特定します。
  • 口外禁止条項
    示談内容や不貞の事実について第三者に口外しないという合意です。
    職場や家族に知らされることが怖い場合に追加することがあります。
  • 強制執行認諾文言
    合意通りに支払わない場合に訴訟などを経ずに強制執行をできるとする条項です。これが有効になるためには公正証書で作成する必要があります。
    分割払いに合意させるための対価として追加することが考えられます。
    支払者側には不利な条項ですので基本的には記載しません。

具体例で対処法をイメージしましょう

慰謝料に合意したが書類が不十分

Xは配偶者のいるYと交際していたところ、Yの配偶者Zが不貞の現場に乗り込んできました。Zから「100万円を支払えばなかったことにする。」と言われ支払うことにしましたが、Xから支払いについて書類を作成してほしいと提案しました。
Zはその場で「●月●日に不貞行為をしたので100万円を支払います。」と手書きし、Xにサインを求めました。

サインを拒否して交渉

Xは、この書面では後日別の不貞行為について再度請求される危険があると考え、「この書類では不十分なので、しっかりとした書類を作ってから振り込みで支払うことにしたい。」伝え、後日書類を作成することにしました。
Xは自ら次の内容の示談書案を作成しZに送りました。

  • XとYの間における不貞行為による慰謝料として100万円を支払う。
  • 示談成立後1か月以内にZの口座に振り込む
  • XとZの間にはほかに一切の債権債務関係がない。

Zは、突然堅い形式の書類が届いたことに驚き、書類は作成せずに口約束で支払いだけ終えてほしいと提案してきました。
Xは、示談書を作成できなければ支払いはできないし、それが嫌であれば訴訟提起してもらって構わないとして再度示談書の作成を要求しました。

示談書を作成して支払い

Zは、Xの提案を承諾し、XとZ双方のサインのある示談書を作成しました。
蒸し返しを防ぐことのできる示談書を作成できたことで、XはZに慰謝料100万円を支払い、事件は無事終了しました。

まとめ

不貞慰謝料の示談書は、合意金額だけでなく「示談の範囲」「清算条項」「支払方法」など、将来蒸し返しを防ぐことのできる規定を設ける必要があります。
示談書作成後の撤回や取り消しはできないので、十分に内容を確認することが重要です。

※弁護士費用などはこちらをご参考ください。

この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
 弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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