不貞慰謝料請求で裁判になった場合の流れ、敗訴リスクや費用はどれくらい?

不貞慰謝料請求を受けた方からよく聞かれるのが、「裁判になったら負けるのではないか」「弁護士費用まで含めると、結局どちらが得なのか」という点です。
裁判を避けたいと考える方は多いですが、金額面だけで見れば、裁判も視野に入れて争った方が有利になるケースが少なくありません

裁判になった場合の敗訴リスクと金額の相場

不貞慰謝料請求では、内容証明郵便で300万円前後の請求がなされることが多いです。
しかし、裁判になった場合に300万円全額が認められるケースは多くありません。
裁判所が認める金額(認容額)は、100万円~200万円程度に収まることが多いです。
言い方を変えると、請求額から100万円程度は減額できることが多い計算になります。
このため、敗訴リスクはあまり高くないといえます。

弁護士費用を含めた実際の損得

では、認容額の相場と弁護士費用を踏まえて、裁判で争った方がよいのかどうかを計算してみます。

100万円の減額をできた場合

まずは、100万円を減額できた場合で計算してみます。
この場合の弁護士費用は次の通りとなります。
※算定方法はこちらのページから費用基準をご参考ください。

  • 着手金:33万円
  • 成功報酬:15.4万円
  • 期日日当:9.9万円(3回の期日で和解したと仮定)
  • 合計=約58万円(税込)

この場合、弁護士費用は50~60万円程度になります。
差引で見れば約50万円程度は支払額が減っている計算になります。

200万円の減額をできた場合

次に、200万円の減額をできた場合で計算してみます。

  • 着手金:33万円
  • 成功報酬:30.8万円
  • 期日日当:9.9万円(3回の期日で和解したと仮定)
  • 合計=約74万円(税込)

この場合、弁護士費用は70~80万円程度になります。
差し引きで見れば約130万円程度の支払額が減っている計算になります。

このため、訴訟に移行したことで金額面でマイナスになるケースは多くありません。

裁判の流れ

次に裁判の流れと負担を解説します。
ここでは、負担の程度をイメージしていただくため、依頼人視点での流れを解説します。

①訴状の提出から送達
最初に、相手方(慰謝料請求者)の弁護士が訴状を裁判所に提出します。
こちらに弁護士がついている場合、弁護士宛てに送達されることが多いです。
このため、この段階では依頼者において必要な作業はありません。何らかの理由で、依頼者のもとに訴状が送達された場合には、訴状を弁護士に転送していただければ大丈夫です。

②裁判期日
裁判期日には弁護士が出席するので、依頼者が出席する必要はありません
期日ごとに弁護士から報告があり、必要に応じて事実関係の整理や打ち合わせを行います。打ち合わせはオンラインで足りることがほとんどで、来所が必要になるケースは多くありません。

③和解または判決
数回の期日を経ると、裁判所から和解案が示されて和解が成立することが多いです。
和解が成立しない場合には、証人尋問を経て判決に進みます。実際には和解で終了することが大半で、証人尋問や判決まで至るケースは少数です。

このように、訴訟に移行しても依頼人においては負担は大きくありません。

交渉戦術との関係

そして、訴訟が金銭面でも負担面でも不利ではないということが、交渉戦術との関係で重要な意味を持ちます。

訴訟は、実は慰謝料を請求する側の負担が大きい手続です。
訴状の作成、主張の整理、証拠収集など、多くの労力と時間がかかります。
そのため、請求する側としても、可能であれば裁判は避けたいと考えています。

このため、「訴訟を恐れない」という姿勢を示すことで、訴訟を避けたい請求者側に減額を求めやすくなります。
つまり、訴訟を前提に冷静に対応することで、結果的に交渉段階で有利な解決に至ることもあり得ます。

まとめ

不貞慰謝料請求では、「訴訟=不利」と決めつけず、訴訟を恐れずに冷静に対応することが重要になります。