突然、弁護士名義の内容証明郵便で不貞慰謝料を請求された場合、驚きと不安を感じるのは当然のことです。しかし、焦って対応すると、取り返しがつかない結果になることがあります。内容証明郵便には法的な強制力はありませんが、無視してよいものでもありません。
このページでは、不貞慰謝料請求の内容証明郵便が届いたときに知っておくべき基本的な法律知識、絶対に避けるべき対応、そして冷静に取るべき行動を整理して解説します。
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不貞慰謝料請求と内容証明郵便の基礎知識
内容証明郵便とは
内容証明郵便とは、郵便局(日本郵便)が「いつ、誰が、誰に対して、どのような内容の文書を送ったか」を証明してくれる郵便制度です(郵便法48条)。一般の手紙と異なり、差出人が送った文書の内容と送付日を郵便局が記録・保管するため、後日「届いていない」「そのような内容ではなかった」といった争いを防ぐ機能があります。
不貞慰謝料請求の場面では、請求者側の弁護士が、慰謝料の請求意思と金額を明確に伝えるために利用するのが一般的です。
内容証明郵便に法的強制力はない
内容証明郵便は、あくまで「文書の内容と送付の事実を証明する制度」にすぎません。裁判所の命令や判決とは異なり、内容証明郵便に記載された金額を支払う法的義務が直ちに生じるわけではありません。
つまり、内容証明郵便に「300万円を支払え」と書かれていても、それだけで300万円の支払義務が発生するものではないということです。もっとも、これは内容証明郵便を無視してよいという意味ではありません(後述します)。
不貞慰謝料請求の法的根拠
不貞慰謝料請求の法的根拠は、民法709条(不法行為に基づく損害賠償請求)と民法710条(財産以外の損害の賠償)です。配偶者のある者と性的関係を持つ行為(不貞行為)は、他方の配偶者に対する不法行為に該当し得るため、精神的損害に対する慰謝料を請求されることになります。
内容証明郵便に記載されている一般的な内容
弁護士から送られてくる不貞慰謝料請求の内容証明郵便には、多くの場合、以下のような項目が記載されています。
まず、弁護士が請求者から委任を受けて代理人として連絡している旨が記載されます。そのうえで、本人(請求者)には直接連絡せず、必ず弁護士宛てに連絡するよう求める内容が記載されるのが通常です。
次に、不貞行為があったとする具体的な主張(時期・場所・状況など)が記載されます。そして、慰謝料の請求額が明示されます。この金額は300万円程度と記載されることが多いですが、事案によって異なります。
さらに、指定された回答期限(通常は到達から2週間程度の短い期間)が設定され、期限までに支払いまたは回答がなければ訴訟などの法的措置に移行する旨が記載されるのが一般的です。弁護士によっては「訴訟になればより高額の慰謝料を請求する可能性がある」旨を記載することもあります。
一般の方にとって、内容証明郵便という形式自体が馴染みの薄いものですし、文面も法律用語が多く厳しい口調で記載されていることが多いため、精神的な圧迫を感じやすいと思います。しかし、上述のとおり内容証明郵便自体に法的強制力はありませんので、冷静に対処することが大切です。
不貞慰謝料の相場について
不貞慰謝料の金額は、個々の事情によって大きく異なりますが、裁判例の傾向として、おおむね50万円から300万円の範囲に収まることが多いです。具体的な金額は、不貞行為の期間や回数、婚姻期間の長さ、子どもの有無、不貞行為が発覚した後の婚姻関係への影響(離婚に至ったかどうか)などの事情を総合的に考慮して判断されます。
内容証明郵便で最初に提示される金額は、交渉を見越して相場よりも高めに設定されていることが多いのが実情です。そのため、提示された金額がそのまま最終的な支払額になるとは限りません。
よくある勘違い
「内容証明郵便の期限を守らなければ大変なことになる」は正確ではない
内容証明郵便に記載された回答期限は、あくまで相手方が設定した任意の期限です。この期限を過ぎたからといって、直ちに不利益が生じるわけではありません。もちろん、長期間にわたって何の連絡もしないことは望ましくありませんが、期限に焦って拙速な対応をする必要はありません。
「謝れば許してもらえる」とは限らない
不貞行為を認めて謝罪すれば穏便に解決できると考える方もいますが、実際には逆効果になることがあります。不貞行為を認める発言や文書は、そのまま相手方の証拠として利用される可能性があります。相手方が十分な証拠を持っていなかった場合でも、こちらの自認が決定的な証拠となり、その後の交渉や訴訟で不利な立場に立たされることがあります。
「無視すれば相手が諦める」わけではない
内容証明郵便を無視しても、問題が消えるわけではありません。連絡が取れない状態が続くと、相手方が訴訟を提起する可能性が高くなります。また、連絡が取れないことを理由に、職場への連絡が正当化される可能性もあります。訴訟を提起されてからも無視を続けた場合には、相手方の主張がそのまま裁判所に認定される(欠席判決)こともありますので、無視は最も避けるべき対応のひとつです。
内容証明郵便が届いたときに絶対に避けるべき対応
言いなりに支払ったり、安易に合意すること
内容証明郵便で提示される慰謝料額は、多くの場合、交渉を見越して相場よりも高めに設定されています。裁判になれば減額される可能性が大きいケースも少なくありません。しかし、一度支払いを完了したり、合意書に署名してしまうと、後からそれを覆すことはできません。提示された金額をそのまま受け入れる前に、その金額が適正かどうかを慎重に検討することが重要です。
不貞行為を安易に認めること
不貞行為を認める発言は証拠として利用されます。相手方がどの程度の証拠を持っているかは分からない段階で、安易に事実を認めてしまうことは避けるべきです。電話やメール、LINEでのやり取りであっても、不貞を認める内容は証拠として記録される可能性があります。
事実と異なる弁明をすること
相手方がどの程度の事実を把握し、どのような証拠を保有しているかは、内容証明郵便の段階では分からないことが多いです。「証拠はないだろう」と思い込んで事実と異なる弁明をすると、後に証拠と矛盾が明らかになった場合、その矛盾自体が不貞行為を推認させる材料となる可能性があります。事実と異なる弁明は、かえって立場を不利にするリスクがあります。
内容証明郵便を無視すること
前述のとおり、無視は問題の解決にはつながりません。訴訟への発展、職場への連絡、欠席判決による不利な結果など、無視によって生じ得る不利益は大きいです。何らかの形で対応する必要があります。
内容証明郵便が届いたときに取るべき対応
落ち着いて状況を整理し、弁護士に相談する
不貞慰謝料請求は、感情的に対応すると不利になりやすい分野です。まずは落ち着いて、内容証明郵便に記載されている主張内容を整理しましょう。いつの出来事について、どのような行為を不貞行為として主張しているのかを冷静に確認します。不貞行為の心当たりがある場合でも、相手方の主張が実際の事実と一致しているとは限りません。
そのうえで、弁護士に相談することを検討してください。弁護士に相談することで、相手方の主張と証拠の強さを客観的に評価し、適切な対応方針を立てることができます。相手方が設定した回答期限は任意のものですので、期限に追われて焦る必要はありません。弁護士に依頼する手続きを落ち着いて進めましょう。
相手方の証拠を見極める
慰謝料請求が裁判で認められるかどうかは、最終的には証拠の有無と内容によって判断されます。確かな証拠がなければ、不貞行為は裁判で認定されません。相手方がどのような証拠を持っているのか、その証拠が裁判でどの程度の証明力を持つのかを慎重に見極めることが重要です。認めるべき事実と認める必要がない事実を区別し、証拠に基づいて交渉することで、適切な解決を図ることが可能になります。
まとめ
不貞慰謝料請求の内容証明郵便が届いた場合、最も重要なことは冷静に対応することです。内容証明郵便自体に法的強制力はなく、記載された金額をそのまま支払う義務はありません。一方で、無視をすることは訴訟や欠席判決などのリスクにつながるため避けるべきです。安易に不貞を認めたり、事実と異なる弁明をしたりすることも、後の交渉や訴訟で不利になる可能性があります。内容証明郵便の内容を冷静に確認し、対応方針を検討することが大切です。
対応の難しさを感じた場合には、弁護士に相談されることをお勧めします。
不安な場合には早期に弁護士に相談しましょう。
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この記事の執筆者
寺岡法律事務所
弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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