代理人が弁護士ではないときはどうすればよいですか?

「代理人」を名乗る人物から不貞慰謝料請求が来ることがあります。しかし、代理人が弁護士ではない場合には、合意が無効になったり、二重払いをする羽目になる危険があります。
このページでは、弁護士ではない代理人と交渉するリスクや対応を解説します。

法制度の解説

「代理人」とは

本人に代わって意思表示(例:和解や金額交渉)を行う人を代理人といいます。
代理権がある人が結んだ和解は、本人に効果が及びます。一方、代理権がない人(無権代理人)が行った和解は、本人に効果が及びません。

弁護士以外が「不貞慰謝料の示談交渉」を行うことはできない

不貞慰謝料請求のように、すでに発生している紛争についての和解交渉は「法律事件」と呼ばれ弁護士以外が代理することはできません(弁護士法72条)。

行政書士・司法書士ができること

法律系の資格として、行政書士や司法書士が知られていますが、これらの資格者は次の通り不貞慰謝料の交渉を行うことができません。

  • 行政書士
    行政書士は、いわゆる書類の代筆が業務であり(行政書士法1条の3)、法律事件の代理を行うことはできません。
    「交渉書類の代筆をしているだけ」などと主張して交渉を代理する者もいますがこれは違法です。
  • 司法書士
    司法書士は、登記又は供託に関する手続について代理(司法書士法3条)が主な業務であり、原則として法律事件の代理を行うことはできません。
    一定の要件を満たすと簡易裁判所の管轄になる法律事件(140万円未満の事件)については代理することが可能(司法書士法3条1項6号、2項)ですが、不貞慰謝料の請求額の相場は300万円であるため、司法書士が取り扱うことはできません。

弁護士ではない代理人と交渉することのリスク

  • 本人に合意の効果が及ばず二重払いの危険がある
    資格がない者が代理した場合には、合意の効果が本人に及ばす、再度本人から請求されたり、紛争を蒸し返されて二重払いをすることになる危険が生じます。
  • 本人に慰謝料が届かない危険がある
    資格がないのに代理行為を行う人は本人に対しても違法な行動を取るケースがあり、慰謝料を持ち逃げしたり、不法に高額の報酬を受け取るケースがあります。このため、せっかく支払った慰謝料が本人に届かない危険があります。
  • 違法な交渉が行われ紛争が拡大する危険
    弁護士には職務上の規律や懲戒制度があり、相手方との折衝も一定の枠内で行われることが期待できます。一方で、資格のない代理人が介在すると、違法な要求がされたり、職場に連絡するなどの違法な交渉が行われ、紛争解決が遠のく危険があります。

対処法

非弁行為による危険から身を守るために請求書が届いたら次の対処を行いましょう。

  • 資格登録の確認
    弁護士であれば日本弁護士連合会の弁護士検索ページに掲載されています。請求書に記載されている住所、氏名、電話番号などと日弁連のページに記載されている情報が一致しているかを確認します。
    弁護士でない場合には、資格のない者(無資格者)による代理であるとして対応します。
  • 資格団体への通報
    無資格者が、行政書士や司法書士の場合には、行政書士会や司法書士会に登録しています。これらの資格名が記載されている場合には、これらの協会に通報を行いましょう。
  • 本人と交渉する
    無資格者が代理人となっている場合には代理人と交渉することはできませんので、本人と交渉を行うようにしましょう。
  • 連絡は書面で行う
    無資格者の場合には違法な(脅迫的な)交渉をされることがあります。そのような場合に備えて、書面で交渉を行い記録を残すようにしましょう。
  • 資格のある弁護士に依頼する
    無資格者は弁護士が介入していないことに乗じて不当な交渉を行うことが多いです。資格のある弁護士に依頼することで、無資格者を排除して合理的な手続きを介することが可能になります。

具体例でイメージしてみましょう

「代理人行政書士Z」からの不貞慰謝料請求

Xは、既婚者Yと交際していたとして、Yの配偶者から慰謝料300万円を請求する通知を受けました。通知の差出人は「代理人Z(行政書士)」で、「今後の連絡はすべてZへ。期限までにZ指定口座へ振り込めば解決する。応じない場合は職場にも連絡する」などと記載されています。Xは、交渉の窓口が弁護士ではないことや、振込先が本人名義ではないことに不安を感じています。

交渉拒絶と行政書士会への通報

XはZに対して、Zが弁護士ではなく代理をできないことと、本人としか交渉しないことを郵便で送ります。
しかし「Zからは自分は行政書士であり法律の専門家である」「支払わない場合には職場に連絡する」などと再度脅迫的な通知を送ってきます。
Xが行政書士会の会員検索システムで検索したところ、Zの氏名や住所には間違いがないことが判明しました。そこで、Xは行政書士会に行政書士Zから弁護士しか代理できない慰謝料請求を受けていると通報し、同時に弁護士に依頼をしました。
弁護士からZに警告の通知を発送して数週間後、改めて請求者が依頼した弁護士から受任の連絡がありました。以降は弁護士同士の交渉が行われるようになりました。

まとめ

「弁護士ではない代理人」から連絡が来た場合、(1)非弁行為(弁護士法72条)になり得ること、(2)行政書士や司法書士でも慰謝料請求の交渉代理を当然に行えるわけではないこと、(3)これらの者と交渉をしても二重払いになる等のリスクがあることを押さえましょう。窓口を本人(または弁護士の代理人)に限定し、書面による記録を残して対応することが重要です。

※弁護士費用などはこちらをご参考ください。

この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
 弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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