裁判で勝ってもその前に財産を隠されてしまうと差し押さえはできません。
仮差押えは、将来の強制執行に備えて、相手の財産を一時的に処分できない状態にしておく手続です。このページでは、仮差押えの要件や流れを解説します。
目次
仮差押えの基本
仮差押えとは
仮差押えは、金銭債権を持つ人や法人(会社など)が、将来の強制執行が不可能または著しく困難になるおそれがあるときに、相手(債務者)の財産を仮に差し押さえる民事保全手続の一つです(民事保全法20条以下)。
対象となる財産は、債務者の預貯金などの債権、不動産などです。
仮差押えの要件は被保全権利と保全の必要性
仮差押えでは、裁判所に対して、①金銭債権が存在すること(被保全権利)と、②回収が困難になる危険があること(保全の必要性)を、資料により疎明(そめい)する必要があります。
疎明とは、一応の証明といった意味合いになります。相手方の反論はありうるものの、ある程度の証拠が揃っていれば疎明がされたということになります。
被保全権利の疎明は、契約書・注文書・納品書・請求書・入金履歴・メール履歴などで行います。
保全の必要性の疎明は、支払遅延、取引先の経営状況が悪化していること、財産を売却したり移転していることを示す証拠を提出します。
流れ:申立て→担保→命令→執行(実際に「押さえる」まで)
仮差押えは、裁判所の判断と手続を経て執行されます。一般的な流れとして、申立て→裁判官面接→担保決定→担保の提供(供託書等提出)→保全命令発令、という順序が案内されています。
- 申立て
申立先は、原則として「本案(後で起こす訴訟等)の管轄裁判所」または「対象財産の所在地を管轄する地方裁判所」です。申立手数料は基本的に1件2,000円です(他に予納郵券が必要になります)。
申立書のほか、疎明資料、法人の資格証明書(登記事項証明書)などを用意します。不動産なら登記事項証明書や評価資料、債権(預貯金等)なら「仮差押債権目録」等の作成が必要になります。 - 裁判官面接
裁判所で裁判官と面接し、事情を説明します。被保全債権や保全の必要について説明することになりますが、それ以外の本質的な申立てに至る事情も説明することになります。 - 担保決定と担保金の用意
申立てが通る場合、裁判所は通常、債権者に担保提供を命じます(担保決定)。担保は、実際には被保全債権や保全の必要がなかった場合の相手方に対する損害賠償義務を担保するためのものになります。相手の反論や証明を経ることなく仮差押えがなされるため、このような担保金が必要になります。
担保の方法は、現金供託のほか、支払保証委託契約書の提出が用いられることもあります。 - 命令発令と執行
命令が出た後、実際の押さえ方は財産で異なります。
債権(預貯金など)に対する仮差押えでは、第三債務者(銀行など)に対して、債務者への支払を禁止する命令を発する方法で執行されます。
不動産の場合は、仮差押えの登記の方法で実施されます。仮差押え登記の後に購入(登記)をした人は、仮差押えを実施されると不動産の所有権を失うことになります。
「仮差押え=すぐ回収できる」ではない
仮差押えは、将来の強制執行を可能にするための準備です。仮差押えだけで、預金がそのまま債権者に支払われたり、売掛金が自動的に回収できたりするわけではありません。その後に本案訴訟で債権を確定させ、強制執行へ進むことで回収を目指します。
仮差押えが任意の支払いにつながることもある
事業での支払いに利用している口座を差し押さえられたり、事業用の不動産に差し押さえ登記が付されていると、事業の遂行に支障をきたすことがあります。このため、仮差押えを行うことで任意の支払いを受けられることがあります。
まとめ
仮差押えは、取引先が財産を処分や隠匿してしまう前に財産を保全し、将来の強制執行の準備をする暫定手続です。あくまでも一時的な措置ですので、本案訴訟の提起の準備と並行して実施する必要があります。
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この記事の執筆者
寺岡法律事務所
弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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