取引基本契約書で未回収を減らす条項のポイント(遅延損害金・相殺・期限の利益)

事業上の取引では、同種の契約を繰り返し締結することになるため、取引の手間を軽減するため、取引基本契約書を締結した上で、以降は簡易の合意で取引がされることが多いです。この取引基本契約書の内容によっては、売掛金の回収ができなくなった場合に、損失額が増大するリスクがあります。
このページでは、中小企業向けに、取引基本契約書の条項の設計によって売掛金未回収のリスクを低減する方法を解説します。

未回収を減らすために押さえる3つの条項

取引基本契約書とは

取引基本契約書は、継続的な売買・業務委託などで、個別発注ごとに共通して適用するルールを定める契約書です。これによって、毎回の取引ごとに、改めて契約書を作成することを省略でき、メールやFAXなどによる発注書で個別の取引をできるようになります。また、支払条件、検収、損害賠償、解除、相殺、期限の利益喪失などを先に決めておくことで、取引ごとに条件が変わることを防ぎ、取引内容を統一することが可能になります。

遅延損害金

遅延損害金は、代金などの金銭債務の支払が遅れたときに発生する損害賠償です。民法419条は、金銭債務の不履行について、原則として法定利率で損害賠償額を定めつつ、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率によると定めています。ただし、この約定利率は利息制限法による制限の範囲(15%未満)で定める必要があります(14.6%と定めることが多いです。)。また、法定利率は、2026年時点では年3%となっています。
分かりやすい言い方をすると、遅延損害金の利率は、規定がなければ3%であり、規定を設けることで14.6%とすることができます。

遅延損害金を定めておくことで、支払いが遅れたときに相手が支払うべき金額が増えていくことになります。これは、取引先に対して、この債権者に対する債務は優先的に支払う必要があるというプレッシャーを与えることができます。

相殺

相殺は、当事者が互いに債権・債務を負っている場合に、対当額で債務を消滅させる制度です(民法505条)。
例えば、自社が相手に100万円の買掛金債務を負っており、逆に100万円の売掛金債権を持っている場合には、相殺するという意思表示を行うことで、債権・債務が消滅します。これによって、事実上、売掛金債権を回収した状況を作ることができます。
ただし、相殺をするためには、両方の債権が履行期にある必要があります。そこで、次の期限の利益の喪失が重要になります。

期限の利益の喪失

期限の利益とは、支払期日まで履行を猶予される利益です。破産手続開始決定を受けた場合などは期限の利益を失います(民法137条)。しかし、単に支払いが遅れただけなどの信用不安では期限の利益は喪失しません。
そこで、取引基本契約書で、これに加えて信用不安事由(支払停止、不渡り、差押え、倒産申立て等)が生じた場合や、買掛金の支払いが遅れた場合などに期限の利益を喪失することを定めます。これによって、支払いが遅れた時点で期限の利益を喪失させ、相殺による売掛金の回収を行うことが可能になります。

まとめ

担保というと、抵当権などを思いつきやすいですが、契約書の設計でも担保的な効果を得ることができます。
取引基本契約書で未回収を減らすには、遅延損害金・相殺・期限の利益喪失の3条項を、単体ではなく連動して設計することが重要です。

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この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
 弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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