売掛金の回収時に、分割に応じることで回収額が上がることもあります。しかし、何の手当もなく分割払いに応じた場合には、単に先延ばしにされて、何らの回収も得られない危険もあります。そこで重要なのが、分割払いの合意書の作成です。このページでは期限の利益の喪失、適切な担保的手段、強制執行認諾文言付公正証書など、合意書に設けるべき条項を解説します。
目次
分割払い合意書で回収の実効性を高める
分割払いの合意書
分割払い合意書は、もともとの売掛金(商品代金・請負代金など)について、本来の支払期日を変更して、新たに分割での支払期日を定めるものであり、和解契約になります。原因となる取引と残額を特定し、毎回の支払期日・金額・方法、違反時の扱いまでを一つの書面にまとめます。
合意書に入れたい基本条項
分割払いが単なる支払猶予にならず、回収可能性を高めるためには適切な条項を定める必要があります。特に、分割払いの条件は明確に定めた上で、期限の利益の喪失条項を定めておかなければ、支払いが滞った時に訴訟移行すら困難になる場合があります。
- 当事者
- 原因債権の特定
- 分割条件(初回日、毎月の支払日、回数、金額、振込先、手数料負担)
- 遅延損害金
- 期限の利益喪失条項
期限の利益喪失条項の重要性
分割払いは、債務者にとってはそれぞれの支払い期限までは支払いを待ってもらえるという利益(期限の利益)がある状態になります。この場合、1回の支払いが滞っても、それ以降の支払いについては期限前であるため、訴訟などで請求して強制執行を行うことができるのは、滞っている1回分だけになります。
この場合には、訴訟や強制執行に要する費用との兼ね合いで、法的手続きに移行するのが困難になります。
そこで、期限の利益喪失条項を作ります。
「支払いを●回滞った場合」「合計●円の遅滞が発生した場合」などと条件を定めて期限の利益を喪失することを定めた条項を作ります。これによって、条件を満たすとすべての債務が履行期になり、本来は期限が到来していなかったものについても、訴訟や強制執行を行うことが可能になります。
また、これは期限の利益を喪失しないために、頑張って分割払いを行うという債務者のインセンティブにもなります。
担保条項
分割払い中に経営状態が悪化した場合に備えて担保条項を定めることが考えられます。
不動産の抵当権などのようなものに限らず、分割払いの売掛金について経営者に連帯保証をさせることも考えられます。これによって、会社の財産を引き出してから会社を倒産させるような方法で支払いを免れることを防ぐことができます。
強制執行認諾文言付公正証書
分割払いの合意を公正証書で行い、強制執行認諾文言を入れます。これによって、支払いが滞って期限の利益を喪失した際に、訴訟を経ることなく強制執行を行うことができるようになります。
本来であれば訴訟などを行う必要があったところを、訴訟なしで強制執行を可能にする点で、分割払いに応じる大きなメリットになります。
ポイント:分割払い(期限の付与)に対応する対価を得る
分割払いを認めるということは、期限の付与という譲歩を行うものです。この譲歩に応じた対価を得ることを意識しましょう。
「本来よりも大きな金額を支払う。」というような対価は、支払い遅延に陥っているような会社相手では単なる空手形になる可能性があります。ポイントは、回収可能性を高めるような対価を得ることです。
まとめ
売掛金の分割回収は、経営が悪化している取引先から回収する手段としては、現実的な落としどころになり得ますが、適切な合意書を作成しなければ、支払いを猶予したまま逃げられるという事態になりかねません。
一括払いよりも回収可能性を高められるような、適切な条件を定めた合意書を作成するようにしましょう。
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この記事の執筆者
寺岡法律事務所
弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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