支払督促は、簡易の手続きかつ費用負担も小さく実施できるため、少額債権の回収に適しています。他方で、異議が出されると効力は生じず、通常裁判に移行するため訴訟移行も考慮して選択する必要があります。
このページでは、支払督促の要件や手続きの流れを解説します。
支払督促の基本
支払督促とは
支払督促とは、金銭など一定の請求について、債権者の申立てに基づき、簡易裁判所の裁判所書記官が支払を促す書面を発する手続です。期日に出頭して主張・立証を行う訴訟とは異なり、支払督促は書類審査で進みます。
対象となる請求は「金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付」を目的とするものに限られます(民事訴訟法382条)。中小企業の経営の範囲では、金銭の支払請求にのみ利用できるとの理解でよいでしょう。
利用できる要件と申立先のルール
支払督促は、実質的には金銭の支払い請求にのみ利用できます。手続きの簡便さなどを考慮すると、少額の金銭の支払請求権を弁護士に依頼せずに請求する場面で活用することになるでしょう。
申立先は、「相手(債務者)の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官」です(民事訴訟法383条1項)。通常の裁判では、義務履行地(ほとんどの場合は債権者の住所地)で訴訟提起をできるのに対して、支払督促では相手方の住所地になるという注意点があります。
申立書に貼付する印紙額は、通常の訴訟の半額となります。手続きの簡便さから弁護士に依頼せずに実行しやすいため、弁護士費用という面からも費用負担が小さくなります。
手続の流れ
支払督促手続きの大まかな流れは次の通りです。
- 支払督促の申立て
申立書や添付資料を提出します。訴訟と異なり証拠資料は必要ありません。 - 受理・審査
裁判所書記官によって、申立書の受理・審査がされます。書面の内容の審査であり、証拠など主張の真実性の審査は行われません。 - 支払督促の発付・送達
債務者に支払督促が送達されます。 - 債務者の異議期間(2週間)
債務者は、受け取ってから2週間以内に督促異議を申し立てることができます。 - 仮執行宣言の申立て
債務者による督促異議が出ない場合には、債権者は仮執行宣言の発付申立てを行うことができます。 - 仮執行宣言付支払督促の送達
債権者はこれに基づき強制執行手続きが可能になります。 - 債務者の異議期間(2週間)
債務者は、仮執行宣言付き支払督促を受け取ってから2週間以内に督促異議を申し立てることができます。 - 異議がなければ確定
- 仮執行宣言付支払督促に対し異議が出なければ、確定して強制執行の根拠(債務名義)となります。
異議が出たら通常訴訟に移行
支払督促または仮執行宣言付支払督促に対して督促異議が出ると、通常の訴訟手続に移行します。ここから先は、当事者の主張と証拠に基づいて、裁判所が判断することになります。
このため、支払督促を申し立てる際は、異議が出れば訴訟に移行することを想定しておく必要があります。特に、本来は自分の住所地で裁判をできたところが、相手の住所地で裁判を行うことになる点は考慮しておく必要があります。
有効な活用場面
支払督促は書面審査で進むため、ひな形を準備しておけば同種の請求においては容易に実施することができます。他方で、1件だけのために手続きを調べることは大変ですし、異議を申し立てられて訴訟に移行することが確実であれば、最初から訴訟提起する方が手間が小さくなります。
数十万円程度の売掛金が、多数の顧客に対して発生するタイプの事業において、ひな形を準備しておいて、自社で支払督促を申し立てる、という運用が有効と言えます。
ひな形の作成や、手続きマニュアルの作成などを弁護士に依頼して、普段の申立てを自力で実施するのが良いでしょう。
まとめ
支払督促という手続きを知っておくことで、少額の債権の回収手段を得ることができます。最初は弁護士のサポートを得ながら、少しずつ自社で実施できるようにしていくことで債権管理手段の幅を広げることができます。
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この記事の執筆者
寺岡法律事務所
弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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