不貞行為の時点ですでに婚姻関係が完全に破綻していた場合には、慰謝料は発生しません。本ページでは、「婚姻関係破綻」と不貞慰謝料の関係、争点になりやすいポイントを解説します。
不貞行為とは
不貞行為とは、配偶者以外の人と性交渉を行うことを言います。
夫婦は互いに貞操義務を負っており、不貞行為を行った場合には、離婚原因になったり(民法770条1項1号)、不法行為に基づく損害賠償(719条)の原因になったりします。
また、不貞行為の相手方(要は浮気相手)も同じく損害賠償義務を負います。
この不貞行為による損害賠償義務を一般に「慰謝料」と呼んでいます。
婚姻関係が破綻していた場合
婚姻関係が完全に破綻していた場合、すでに夫婦としての実体が失われています。この場合には不貞慰謝料は認められません。
ただし「単に夫婦仲が悪い」程度では足りず、回復不能なほどに破綻していることが必要になります。
「破綻」と評価されやすいケース
破綻が認められやすいのは、客観的にみて離婚が現実のものとして進行していた場合です。典型例としては次のような状況が挙げられます。
- すでに離婚を前提とした協議・交渉が始まっている
- 離婚調停(場合によっては訴訟)に進んでいる
- 離婚を前提に長期間の別居をしており、婚姻共同生活の実態がない
このように、破綻が認定されるハードルはかなり高いと考えたほうが良いといえます。
「破綻」と評価されにくいケース
一方で、次のような事情だけでは、破綻と認められないことが多いです。
- 単に仲が悪い、喧嘩が多いだけである
- 片方が離婚したいと考えているだけである(相手は修復を望んでいる等)
- 一時的に別居しているだけである
婚姻関係は外から見えにくいため、客観的に見て破綻していたと見える事情がなければ破綻と認定される可能性は低くなります。
これから関係を持つ場合の注意点
ここまで見た通り、婚姻関係が破綻していると認定されるハードルはかなり高くなります。
裁判で「まだ破綻に至っていなかった」と認定されたり、「不貞行為が原因で離婚に至った」と認定されて不貞慰謝料の支払い命令を受ける場合があります
相手から「もう夫婦関係は終わっている」と説明されても、安易に関係を持つべきではありません。
慰謝料請求をされた場合の対応
すでに慰謝料請求を受けている場合は、何とかして破綻に至っていたことを主張する必要があります。もしくは、破綻に至っていなかったとしても、破綻していたと信じたことに過失がないと主張することが考えられます。
証拠になりうる資料は次のようなものです。
- 別居を示す証拠(住民票や賃貸借契約書など)
- 破綻していたと聞いていた証拠(LINEの履歴など)
- 離婚協議を行っていた証拠(調停関連の書類、離婚協議の書類など)
焦って不合理な主張をしたり、事実と異なる主張をすると、後に不利な認定に至る可能性があります。
落ち着いて事実や主張を整理していくようにしましょう。