取締役の責任

株式会社において,役員(取締役など)は会社に雇われているに過ぎません。
また,株式会社においては株主有限責任の制度がとられています。このため,役員は会社のために様々な責任を負っています。

1 役員の会社に対する責任

役員は会社から雇われている関係にあるため,役員は会社に対して,忠実義務,善管注意義務を負っています。


意味合いとしては次の二つの意味であると捉えてください。
① 自分や(会社以外の)第三者の利益を図ることなく,会社の利益のために経営を行う必要がある。
② 十分な注意をはらって経営を行う必要がある。

①の義務は,会社の利益を犠牲にして自身や第三者の利益を図ってはならないというものです。
注意したいのが,一人で複数の会社を経営している場合です。
XさんがA社とB社の二つの会社を経営している場合に,A社の利益のためにB社の利益を犠牲にしたような場合には,B社に対して義務を懈怠したことになります。

②の義務は,プロの経営者としての注意を払って経営を行う必要があるというものです。

2 役員の任務懈怠責任

役員が上記の義務に違反した場合には,それによって会社に発生した損害を賠償する必要があります。
単に損失が出たのみ損害賠償義務を負うものではなく,経営者として当然に果たすべき注意義務を怠った場合に損害賠償義務を負うことになります。
例えば,明らかに損失が発生する事業を十分な調査を行うことなく実施した,適法性を検討することなく(または違法であると分かった上で)違法な事業活動を行った場合が考えられます。

また,著しい義務違反によって会社以外の第三者に対して損害を負わせた場合には,当該第三者に対して損害を賠償する必要があります。
例えば,放漫経営や,会社財産を違法に流出させたことによって会社が倒産し,銀行の融資を返済できなくなったような場合には,銀行に対してその金額を賠償する必要があります。