ビットトレントで意見照会書・損害賠償請求が届いたら|流れ・金額・対応を弁護士が解説
ビットトレントを使用していた場合、氏名・住所が開示される可能性は高いものの、法律上の損害額は書面の請求額を下回ることが少なくありません。まずは直ちに使用をやめることが重要です。
契約しているプロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」という書類が届いた、あるいは法律事務所から高額の損害賠償を求める書面が届いた――そうした不安から、このページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。このページでは、請求が届くまでの流れ、実際に請求を行っている事務所、法律上の支払義務がある金額の考え方、そして意見照会書が届いたときの対応のポイントを解説します。
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届いた直後に何をすべきかは、本文で詳しく解説しています。対応のポイントを見る
ビットトレントの利用で請求が届くまでの流れ
近年、ビットトレント(BitTorrent)などのファイル共有ソフトの利用をきっかけとする発信者情報開示請求や損害賠償請求が急増しています。2024年(令和6年)にプロバイダへ申し立てられた発信者情報開示請求15万4484件のうち、約95.6%にあたる14万7746件が、特定のP2Pファイル共有ソフト(ビットトレントのこと)を用いたアダルト動画の著作権侵害に関する事案だったという調査結果も公表されています。
プロバイダから「意見照会書」が届く
回答期限は2週間程度が一般的です。この時点では、まだ氏名・住所は開示されていません。
契約者の氏名・住所が開示される
回答内容にかかわらず、法律上の開示要件を満たすと判断されれば開示されます。
損害賠償を求める書面が届く
意見照会書から3〜6か月程度で、著作権者側の法律事務所から書面が届くことが多いです。
最初に届くのは「発信者情報開示請求に係る意見照会書」
ビットトレントは、ファイルをダウンロードすると同時に、そのファイルの一部を他の利用者へ送信(アップロード)する仕組みのソフトです。そのため、動画などを「ダウンロードしただけ」のつもりでも、著作権者の許諾なく作品をアップロードしたことになり、著作権(公衆送信権)の侵害にあたり得ます。
著作権者は、侵害に使われたIPアドレスをもとに、情報流通プラットフォーム対処法(2025年4月に旧プロバイダ責任制限法から名称が変わった法律です)5条1項に基づき、プロバイダに対して契約者の氏名・住所などの開示を請求できます。プロバイダは、開示に応じるかどうかを判断する前に、原則として契約者本人の意見を聴かなければなりません(同法6条1項)。このために送られてくる書類が「発信者情報開示請求に係る意見照会書」です。つまり、意見照会書が届いた段階では、まだ氏名や住所は開示されていません。
なお、意見照会書には2週間程度の回答期限が設けられているのが一般的です。
意見照会書の段階では請求者名が分からないこともある
意見照会書の時点で、開示請求を行った著作権者や代理人事務所の名前が判明するかどうかは、プロバイダによって異なります。意見照会書に請求者名が記載されているプロバイダもあれば、秘匿する運用のプロバイダもあります。
回答内容にかかわらず開示される可能性が高い
意見照会書には、開示に同意するかどうかを記載する回答書が同封されていますが、プロバイダは発信者の意見に拘束されるわけではなく、法律上の開示要件を満たすと判断すれば開示を行います。ビットトレントを実際に使用していた場合には、専用の検知システムによって通信の記録が特定されており、通常は開示の要件を満たすため、回答書の記載内容にかかわらず開示されると考えておいた方がよいでしょう。
開示から3〜6か月ほどで損害賠償請求の書面が届く
開示がされると、著作権者(代理人弁護士)に契約者の住所と氏名が伝わり、その住所宛てに損害賠償を求める書面が届きます。意見照会書が届いてから実際に請求の書面が届くまでには、3か月から6か月程度の期間が空くこともあります。ただし、開示請求がされている以上、そのまま請求が来ずに終わる可能性は低いと考えておくべきです。
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請求を行っている主な法律事務所
書面に記載されていることが多い3つの事務所
現在、ビットトレントに関する損害賠償請求を行っているのは、主に次の3つの事務所です。
- ITJ法律事務所
- 八重洲コモンズ法律事務所
- 赤れんが法律事務所
お手元に届いた書面にも、このいずれかの名称が記載されていることが多いと思われます。いずれも実在する弁護士の事務所であり、書面自体が架空請求や詐欺というわけではありません。
本当にその事務所からの書面かどうかの確認方法
一方で、実在する事務所の名をかたった書面が紛れ込む可能性は否定できません。日本弁護士連合会のウェブサイトにある「弁護士検索」では、全国すべての弁護士の氏名や所属、事務所の所在地といった基本情報を確認できます。書面に記載された事務所名・住所・電話番号がこうした公的な情報と一致するかを確認したうえで、連絡や支払いを検討することをおすすめします。
請求額として88万円などの金額が記載されていることが多い
届いた書面には、和解金として88万円といった金額が記載されていることが多くあります。もっとも、これは著作権者側が提示している和解案の金額であり、裁判所が法律に基づいて認める損害額と同じとは限りません。次の項目で、法律上の支払義務の考え方を説明します。
法律上の支払義務がある金額の考え方
著作権法114条に基づく損害額の計算
著作権侵害による損害額の算定方法は、著作権法114条に定められています。ビットトレントの事案では、対象作品のアップロード回数(その作品が他の利用者にダウンロードされた回数)に、権利者が作品1本を販売して得られる利益額を掛けて損害額を計算する方法が用いられています。
計算例
例えば、アップロード回数が10回、作品の販売価格が3,000円、粗利益率が40%(1本あたりの利益は3,000円×40%=1,200円)の場合、損害額は10回×1,200円=12,000円となります。
(3,000円×40%)
(10回×1,200円)
アップロード回数はどのように数えるのか
リーディングケースとなった知財高裁の裁判例
ビットトレントによる著作権侵害の損害賠償については、知財高裁令和4年4月20日判決(令和3年(ネ)第10074号・債務不存在確認請求控訴事件)がリーディングケースです。この判決は、次のように判断しました。
自分が直接関与していない分も含めて責任を負う
分かりやすく言うと、その作品をアップロードできる状態にした後、ビットトレントをパソコンから削除するまでの期間に生じたアップロードについて、賠償義務を負うということです。例えば、1年間ビットトレントを使用していて、その期間中にその作品が100回アップロードされていた場合には、100回分すべてが賠償の対象になります。ビットトレントの仕組み上、実際に自分の端末が関与したアップロードはそのうちの一部にすぎませんが、同じ時期にその作品を共有していた他の利用者との共同不法行為(民法719条)として、自分が関与していない分も含めた全体について責任を負うとされています。
100回の場合の計算例
もっとも、仮にアップロード回数を100回として先ほどの計算式に当てはめても、100回×1,200円=120,000円にとどまります。書面に記載された請求額と、裁判例の考え方から導かれる損害額との間には、大きな開きがあるケースが多いのが実情です。
和解案の例
(アップロード100回の場合)
※いずれも本文中の例に基づくイメージです。実際の金額は、アップロード回数や作品の価格などの事情によって異なります。
ビットトレントをいつまで使っていたかの認定
使用をやめた時期は請求された側が示す必要がある
前記のとおり、損害額は「ビットトレントの使用をやめた時点」までのアップロード回数で決まります。そして、ビットトレントを使用しなくなったという事実は、事実上、請求された側で主張・立証する必要があると考えられています。使用をやめた時期を示せなければ、賠償の対象となる期間が長く認定され、損害額が大きくなるおそれがあります。
裁判例では通知を受けて使用をやめた時点までの損害が認められた
前記の裁判例では、権利者側からの通知を受けてビットトレントの使用をやめたという経緯に沿って使用停止の時点が認定され、その時点までのアップロードについて賠償義務が認められました。裏を返せば、意見照会書などの通知が届いた後もビットトレントを使い続けていれば、その間のアップロードも賠償の対象に含まれ、損害額は増え続けることになります。
ただし、この事実認定は、あくまでも当該事案で通知を受けて怖くなってビットトレントを削除したと認定されたに過ぎない点は注意が必要です。
意見照会書が届いたときの対応のポイント
すぐにビットトレントの使用をやめる
以上の裁判例の考え方からすると、意見照会書が届いた時点で最も重要なのは、直ちにビットトレントの使用をやめ、ソフトと対象ファイルを削除することです。これにより、賠償の対象となる期間の終わりを早い時点で区切ることができ、損害額が増えていくことを防げます。
使用をやめた時期を説明できるようにしておく
当事務所では、意見照会書が届いた段階でご相談いただいた場合、次の流れで対応を進め、遅くてもその時点までにビットトレントを削除したと認定されやすいように証拠を整えていきます。
ビットトレントの削除
ご相談いただいた際に、直ちにビットトレント本体と対象ファイルを削除していただきます。
依頼手続きと回答書の提出
速やかに依頼手続きをしていただいたうえで、意見照会書への回答書を提出します。
著作権者側への受任通知の発信
開示後に請求を行ってくる著作権者側の事務所へ、受任通知を発信します。これにより、使用をやめた時期を示す材料を残していきます。
まとめ
意見照会書は、氏名・住所が開示される前に契約者本人の意見を聴くための書類であり、ビットトレントを使用していた場合には、回答内容にかかわらず開示される可能性が高いといえます。開示の後、意見照会書から3〜6か月程度で損害賠償請求の書面が届くことが多く、88万円などの金額が記載されている例が目立ちます。もっとも、裁判例の考え方では、損害額は「使用をやめるまでのアップロード回数×作品1本あたりの利益額」で計算され、請求額を大きく下回るケースが少なくありません。使用をやめた時期は請求された側が示す必要があるため、意見照会書が届いたらすぐに使用をやめ、その時期を説明できるようにしておくことが重要です。
一方で、記載された金額に驚いてそのまま支払ってしまうと、法律上の損害額を大きく上回る負担になるおそれがありますし、逆に、対応を後回しにしてビットトレントを使い続ければ、賠償の対象となる期間が延び、損害額は増え続けます。回答書にどう記載するか、使用をやめた時期をどのように示すかによって、その後の見通しは変わってきます。回答書を提出したり、相手方へ連絡したりする前に、一度弁護士へご相談ください。ご事情を伺えば、見込まれる金額の水準と対応の進め方を具体的にお伝えできます。
※本ページは2026年8月時点の法令・裁判例等に基づく一般的な解説であり、個別の事案についての結論を示すものではありません。具体的な対応は、それぞれの事情によって異なります。
この記事の執筆者
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