不貞行為は性質上、二人で行われるものです。そのため、不貞慰謝料についても、原則として二人ともが支払い義務を負います。
一人が先に全額を支払った場合には、その負担をもう一人に求めることができます。ただし、どのような場合でも請求できるわけではなく、法律上の要件や注意点があります。
不貞慰謝料の法的な位置づけ
不貞行為は、法律上「共同不法行為」に該当します。そして、損害賠償義務(慰謝料支払い義務)は「不真正連帯債務」になります。
この関係では、被害者はどちらに対しても慰謝料の全額を請求することができ、いずれか一人が支払えば、被害者との関係では二人とも支払い義務を免れることになります。
このままでは一人だけが全額を負担することになり、不公平が生じます。
そこで、法律上、自分の負担すべき範囲を超えて支払った場合には、もう一人に対してその超過分を請求することが認められています。これを「求償権」といいます。
わかりやすい具体例
例えば、XさんとZさんが夫婦で、XさんとYさんが不貞行為を行い、これにより300万円の慰謝料が発生したとします。
ZさんがYさんに対してのみ請求し、Yさんが300万円全額を支払った場合を考えます。
XさんとYさんが半分ずつ負担すべきとすると、Yさんの負担額は150万円です。
この場合、Yさんは150万円多く支払っているため、その超過分150万円をXさんに対して請求することができます。
注意点
求償権の行使にあたっては、3つの注意点があります。
第一に、請求できるのは「自分の負担を超えて支払った分」に限られます。例えば、先ほどの例でYさんが200万円を支払った場合、超過分は50万円ですので、Xさんに対して請求できるのは50万円にとどまります。
第二に、相手も支払いをしていた場合には、請求できないことです。先ほどの例で、Xさんも自ら150万円を支払っていた場合には、Xさんに対して請求することができません。
第三に、そもそも慰謝料支払い義務がない場合には求償もできません。例えば、不貞以前にXさんとZさんの婚姻関係が破綻していた場合には、そもそも慰謝料の支払い義務がありません。それを知らずにYさんが支払っていたとしても、Xさんに対して請求することはできません。
実務上の対応
このように、もう一人の支払い状況や反論の予定を知らずに支払ってしまうと、後から求償することができません。
このため、慰謝料を支払う前に、もう一人の支払い状況や対応方針を確認した上で対応することが重要です。
まとめ
不貞慰謝料を一人で支払った場合でも、もう一人に対して負担分を請求することができます。しかし、適切な準備をせずに支払ってしまった場合には、この請求をできなくなります。
慌てて全額を支払う前に、状況を整理した上で慎重に対応することが重要です。
-3-150x150.png)
この記事の執筆者
寺岡法律事務所
弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
※弁護紹介ページはこちら