不貞慰謝料請求を受けたとき分割払いにすることはできる?

不貞(不倫)を理由に慰謝料を請求された際、一括支払いができず分割での支払いを希望されることがあります。分割払いは法律上当然に要求することはできませんが、相手が同意すれば示談で分割にできる場合があります。
分割払いは支払いが途絶えるリスクがあるため、簡単に同意を得ることはできません。
ここでは、分割払いの可否、示談を進めるためのポイントを解説します。

法律上の仕組みや交渉のポイント

不貞行為とは

不貞行為とは、配偶者以外の人と性交渉を行うことを言います。
夫婦は互いに貞操義務を負っており、不貞行為を行った場合には、離婚原因になったり(民法770条1項1号)、不法行為に基づく損害賠償(709条)の原因になったりします。
また、不貞行為の相手方(要は浮気相手)も同じく損害賠償義務を負います。
この不貞行為による損害賠償義務を一般に「慰謝料」と呼んでいます。

分割払いは「相手の同意」が前提

損害賠償は原則として一括請求されます。分割払いを一方的に要求できる制度はありません。もっとも、示談(当事者の合意)で支払方法を定めることは可能です。
分割払いとした場合には、途中で支払いが途絶えるリスクがあるため、簡単に同意を得ることはできません。そこで、分割を受け入れてもらうには、一般的には次のような事情が必要です。

(1)一括支払いは困難であることを資料で示す
お金がないから分割支払いをしたいと言っても簡単には信用されません。
通帳の写し、収入証明(給与明細や源泉徴収票)などを提示して、分割払いでなければ支払いをできないことを示すことが必要になります。

(2)頭金を用意する
全額を分割で支払うというのは現実的ではありません。
ある程度まとまった金額を最初に支払うことが必要になる場合が多いです。
交渉中から頭金用の資金を少しずつ積み立てておくようにしましょう。

(3)支払確実性を高める仕組み
分割支払いにおいては請求側としては支払いが途絶えるリスクを負うことになります。
このため、分割支払いが途絶えることがないような仕組みを要求されることがあります。

つまり、一括支払いでは慰謝料の回収は不可能であるが、分割払いを認めることで回収が可能になると相手に納得させることが重要になります。

分割払いの示談書で必要な条項

分割払いの合意においては、次のような条項が必要になります。もちろん、細かく定めるほど支払い側には不利になるため、可能な限り条件を緩めたいところです。
重要なのは、請求者に対して、適切に支払いを受けられると認識させるような状況にすることです。

  • 支払総額、回数、毎月の支払日、振込先
    少し大きめの金額で定めておき、約定通りに支払えば残りを免除するという内容にすることがあります。
  • 遅延時の取扱い(遅延損害金)
    約定通りに支払っていれば遅延損害金は発生しないが、遅延が発生したら遅延損害金が発生するという内容にすることが多いです。
    利率は14.6%とすることが一般的です。
  • 期限の利益喪失条項
    支払いが滞った場合には残額を一括で支払うという条項を入れます。
  • 強制執行認諾文言
    この条項を有効にするためには公正証書で作成する必要があります。
    この条項があれば、裁判や調停を経なくても強制執行を行うことが可能になります。

減額・免責・分割支払いを検討するポイント

分割払いの交渉をする前に、まず「支払義務があるか」「金額が適正か」を検討します。
もちろん、分割支払いを受け入れさせるのと引き換えに多少の支払額の増額を検討する必要が生じます。
支払い義務や金額の検討においては次のポイントを意識します。

  • 不貞行為(性交渉等)の立証が十分か
    そもそも不貞行為を立証できる余地がない場合には、支払い自体を拒絶できる可能性があります。
  • 既婚者だと知っていた/知り得た(故意・過失)か
    既婚者だと知らなかった場合には、不貞慰謝料の支払い義務はありません。
  • 時効で消滅していないか
    不貞行為の慰謝料は、発覚時から3年、行為時から20年で時効消滅します(民法724条)。
  • 婚姻関係がすでに破綻していたか
    不貞行為よりも前に婚姻関係が破綻していれば不貞慰謝料の支払い義務がありません。

分割払いを認めてもらうためには対価が必要

分割は相手側に未払いリスクがあるため、単に「分割にしてほしい」だけでは合意されません。合計金額、公正証書化などの対価を差し出すなどして、相手を納得させる必要があります。
重要なのは、相手に一括支払いよりも有利な解決であると認識させることです。

分かりやすく具体例でイメージしてみましょう

300万円請求→100万円に減額→120万円を分割払い

Xさんは、配偶者がいるYさんと不貞行為を行い、Zさんから300万円の不貞慰謝料請求を受けました。
Xさんは、Zさんと交渉を行い、不貞回数が少ないこと、Yさんからも支払いを受けることなどを主張して、支払額を100万円まで減額しました。
しかし、Xさんは貯金がなく100万円を一括で支払うことができません。そこで、支払額を120万円に増額する代わりに分割払いとすることで合意し、最初に30万円、残り90万円を毎月5万円ずつ18か月(1年半)で支払うことにしました。

まとめ

分割払いは相手が同意すれば示談で可能ですが、当然に認められるわけではありません。分割にするなら、期限の利益喪失条項や遅延時の取扱いを明確にし、公正証書化などの履行確保方法まで含めて交渉することが重要です。
また、示談を有利に進めるには、支払義務の有無(故意過失・破綻・時効)と金額の妥当性を、証拠と時系列に基づいて整理してから交渉するのが重要です。

※弁護士費用などはこちらをご参考ください。

この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
 弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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