不貞慰謝料の請求を受けた際、相手から「職場にばらす」「家族に言う」「嫌なら今すぐ払え」など、脅迫的な手段で請求を受けることがあります。
法的に有効な請求権であっても、請求方法によっては不法行為や犯罪に該当することがあります。
このページでは、違法になる請求方法や対処法を解説します。
目次
法制度と対処法
脅迫罪(刑法222条)
刑法上の脅迫は、「生命・身体・自由・名誉・財産に害を加える旨」を告知して相手を脅す行為を言います(刑法222条)。たとえば「家族にばらす」「会社にばらす」などと伝えて脅す行為は脅迫に該当することがあります。
何かを要求しなくても脅すだけで脅迫罪が成立します。
強要罪(刑法223条)
さらに、これらの害悪を告知して、支払いや、示談書の作成を要求したりすると強要罪が成立します(刑法223条)。
たとえば「家族にばらされたくなければすぐに支払え」「会社にばらされたくなければ不貞を認める書類を作れ」などと告知すると強要罪が成立することがあります。
名誉毀損罪(刑法230条)
相手が実際に第三者へ言いふらしたり、SNS等で公開すると名誉毀損罪(刑法230条)が成立する場合があります。
名誉毀損は、真実かどうかにかかわらず「公然と事実を摘示して社会的評価を下げる」ことで成立します。つまり、不貞行為が真実であっても、正当な理由がなく会社に伝えたような場合には名誉毀損罪が成立します。
不法行為(民法709条)
また、これらの行為は民法上も不法行為となり損害賠償請求を行うことができるようになります(709条)。
不貞行為が実際にあって慰謝料請求権を有していても、その請求手段が違法な場合には不法行為となって損害賠償請求が可能となります。
「訴える」「弁護士に相談する」だけでは違法にはならない
相手から「払わなければ訴える」「払わなければ弁護士に相談する」などの文言を入れられることがありますが、これらは正当な法的手段を取ることを予告する文言であり直ちには違法とはなりません。
弁護士からの書類
弁護士からの書類にも「会社に伝える可能性」が書かれている場合がありますが、これらは上記の犯罪や不法行為に該当しないように注意深く記載されています。
たとえば「支払わないと給与を差し押さえる(だから会社に伝わる可能性がある)」「連絡を取れない場合には会社宛てに訴状を送達せざるを得ない(だから会社に伝わる可能性がある)」などとなっていると思います。これらは、正当な法的手段の予告に過ぎず違法とはなりません。
脅迫的な交渉をされた時の対処法
基本的には弁護士に依頼するのが最善です。弁護士が入って警告を行うことで、脅迫的な交渉や行動を止められることが大半ですし、実際に会社に通知などをされた場合には損害賠償請求を行うことも可能になります。
やむを得ず弁護士に依頼せずに自力で対応する場合には、次の点を意識しましょう。ただし、弁護士によらず本人で警告をしても効果が薄い点は注意しましょう。
- 証拠化
電話でのやり取りはせず、郵便、メールなど記録が残る形でやり取りをします。郵便にもかかわらず相手が電話をし続ける場合には、着信履歴を残しておきます。 - 連絡方法のルール化
郵便での連絡には応じることなどを明示して記録に残します。
これによって、「連絡がつかないから会社に連絡した」などの反論を封じます。 - 警告
本人に連絡が可能である以上、会社に連絡を行った場合には不法行為になることを明示して警告します。
具体例でイメージしましょう
会社にばらすと言って請求が続くケース
Xは、配偶者がいるYと不貞行為を行ってしまいました。するとYの配偶者のZから不貞行為に基づく慰謝料請求が届きました。Zが主張する不貞行為の回数は、実際にXが行った回数よりもはるかに多く、500万円という過剰な金額が請求されています。
Xが「不貞行為を行ったのは事実だが回数は少なく、200万円が妥当なのでその金額であれば支払う。」と回答したところ、Zからは「500万円を支払え。すぐに支払わないと会社に行って請求する。」と繰り返します。
脅迫を記録した上で弁護士に依頼
XはZに対して、連絡はすべてメールか郵便にするように指定し、さらに「本人と連絡が可能である以上、会社に連絡をすると不法行為として逆に損害賠償請求をする。」と伝えました。
しかし、Zからはさらに電話で「払わないと会社に連絡をしてクビにさせる。」繰り返されます。
Xは弁護士に依頼することにし、弁護士から警告を行った上で交渉を開始します。
しばらくすると、Zにも弁護士の代理人がつき、粛々と法律に基づいた慰謝料支払いの交渉が行われるようになりました。
まとめ
不貞行為があっても、それに乗じて不当な手段で不当な請求を行うことは許されません。
悪質な請求手段に対しては、こちらからも法的な対応を行うことができます。冷静に証拠を確保しつつ弁護士に相談するようにしましょう。
-3-150x150.png)
この記事の執筆者
寺岡法律事務所
弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
※弁護紹介ページはこちら