不貞慰謝料を支払う場面で、現金手渡しを要求されることがあります。
現金手渡し自体が直ちに違法・無効になるわけではありませんが、手渡しは支払った証拠が残りにくく、後日争いになる危険があります。
このページでは、現金で不貞慰謝料を支払うことの危険と、トラブルを避けるためのポイントを解説します。
法律上の解説
不貞慰謝料とは
不貞行為とは、配偶者以外の人と性交渉を行うことを言います。
夫婦は互いに貞操義務を負っており、不貞行為を行った場合には、離婚原因になったり(民法770条1項1号)、不法行為に基づく損害賠償(709,710条)の原因になったりします。
また、不貞行為の相手方(要は浮気相手)も同じく損害賠償義務を負います。
この不貞行為による損害賠償義務を一般に「慰謝料」と呼んでいます。
通常は、不貞行為(性交渉)がなければ慰謝料は発生しませんが、それに至らない浮気であっても不貞慰謝料の請求を受けるケースがあります。
不貞慰謝料の請求額の相場としては、最初は300万円~500万円程度で主張されるケースが多いです。
現金手渡しも振込も有効な支払
不貞慰謝料は金銭債務なので、合意した金額を相手に渡せば、支払い(弁済)としての効果が生じます。
支払いを行う場合には引き換えに領収書の交付を求めることができ(民法486条)、領収書の交付を受けられない場合には支払いを拒んでも支払いを遅滞したことになりません。
振込については、相手の口座に着金した時点で支払いの効果が生じます(民法477条)。
証拠がない支払いは危険
現金手渡しの最大のリスクは、証拠が残らないことです。
支払った事実は、支払った側が主張・立証する必要があります。
振込であれば、通帳の記載・取引明細・振込控えなど、支払ったことの証拠が残ります。
一方、手渡しであれば、領収書がないと、立証が困難になります。特に不貞慰謝料は感情的対立が強く、追加請求や蒸し返しが起きやすい類型です。証拠が乏しい支払いは、二重払い(もう一度払う羽目になる)の危険があります。
手渡しにするなら領収書を要求する
手渡しにする場合には、支払いの証拠として領収書を引き換えにすることが必須です。
領収書には次の内容を記載させるようにしましょう。
- 支払った日付
- 支払った金額
- 受領者名
- 宛名(支払った人の名前)
- 不貞慰謝料の支払いであること
対応のポイント
支払う側・受け取る側のどちらの立場でも、トラブル予防の観点からは振込とすべきです。どうしても手渡しにする場合は、次の順番で進めるようにしましょう。
- 示談書で、総額/支払期日/支払方法(手渡し日程・場所)/清算条項を決める
- 現金と引換えに領収書(受取証書)へ署名押印をもらう(事前にひな形を用意)
- 支払後は、領収書と示談書を保管する
まとめ
不貞慰謝料を現金手渡しで支払うこと自体は、禁止されるものではありません。
ただし、手渡しは証拠が残りにくく、未払い主張や追加請求の危険があります。
基本は振込で支払うようにし、手渡しにする場合には「示談書で条件を確定し、現金と引換えに領収書を受け取る」ことが重要です。
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この記事の執筆者
寺岡法律事務所
弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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