不貞慰謝料を請求されたときのLINE・SNSの証拠の使い方

LINEやSNSでのやり取りは裁判において証拠となり得ますが、スクリーンショット1枚だけで自動的に事実が認定されるわけではありません。通常は、他の証拠とあわせて総合的に立証していく必要があります。
本ページでは、LINE・SNSのやり取りを証拠として提出する際のポイントについて、請求する側・請求される側それぞれの立場から解説します。

不貞慰謝料における「証拠」

不貞慰謝料とは

不貞行為とは、配偶者以外の人と性交渉を行うことを言います。
夫婦は互いに貞操義務を負っており、不貞行為を行った場合には、離婚原因になったり(民法770条1項1号)、不法行為に基づく損害賠償(709,710条)の原因になったりします。
また、不貞行為の相手方(要は浮気相手)も同じく損害賠償義務を負います。
この不貞行為による損害賠償義務を一般に「慰謝料」と呼んでいます。

通常は、不貞行為(性交渉)がなければ慰謝料は発生しませんが、それに至らない浮気であっても不貞慰謝料の請求を受けるケースがあります。

不貞慰謝料の請求額の相場としては、最初は300万円~500万円程度で主張されるケースが多いです。

証拠能力と証明力

証拠能力とは、その証拠を訴訟で提出できることを言います。証拠能力がない場合には、そもそも訴訟で提出することができませんし、裁判官が判断の材料にすることもできません。民事訴訟においては、証拠能力が否定されるケースはほとんどありません。

証明力とは、その証拠が事実の証明にどの程度役立つかというものを言います。
例えば、当事者が写っていないホテルの入り口の写真では不貞行為の証明には役立たないので証明力は低いと言えますし、ホテルから当事者二人が一緒に出てきた写真であれば証明力は高いと言えます。

証拠をどの程度信用するか、証拠からどのような事実を認定できるか(証明力)は裁判官が判断します(自由心証主義:民事訴訟法247条)。
このため、当事者としては証明力の高い証拠を集めて提出する必要があります。

証明力が上がりやすい保存方法:日付・相手・前後関係をセットで残す

LINEのような会話形式の文章は、前後の会話がなければ他人からは意味が分かりません。例えば次の文章を読んでみましょう。

  • 昨日のことは皆には秘密にしてください

この文章だけでは、昨日がいつ(何月何日)のことか分かりません。さらに、誰が誰に対して送った文章なのかもわかりません。これでは、裁判官が何らかの事実を推認することができません。
このため、日付、相手方、発信者などが分かる部分から連続して保存して証拠として提出する必要があります。

LINEについては、トーク履歴をテキストで出力することができますので、このテキストで全体の会話を証拠提出し、重要な部分をスクリーンショットなどで提出することになります。

証拠として有効なやり取り

請求する側にとって有効なやり取りの例は次のようなものです。

  • 性的関係を直接示すやり取り
    「昨日のセックス…」「次はホテルで」など、性的関係を明示する文言
  • 性的関係を強く推認させるやり取り
    ホテル・宿泊などの同室利用をうかがえる内容
  • 既婚であることを知っていたことを示すやり取り
    「家族にバレないように」や家庭の話題など

請求された側にとって有効なやり取りは次のようなものです。

  • 既婚ではないと説明されていたやり取り
    「独身です」など
  • 家庭の存在を隠していたやり取り
    「親と同居だから家には呼べない」など
  • 婚姻関係が破綻していると説明されていたやり取り
    「別居して離婚調停中」など
  • 性的関係がないと推認させるやり取り
    (二人で旅行したとされる日程について)他の大人数で旅行に行っていたやり取りなど

よくある勘違い

特定の証拠が一個あれば勝てる、それがなければ負けるという構造ではありません。一つの証拠について、それを信用できるとするための証拠を提出するなど、多数の証拠を組み合わせて証明していくことになります。

取るべき対処法

とにかく保存

不貞慰謝料の請求を受けたら、まずはLINEの履歴が消えないようにしましょう。不利に感じるものであっても絶対に消してはいけません。
交際相手とのやり取りはテキストで出力した上で消えないように注意します。それ以外の人とのやり取りについて、何かに使える可能性があるので消えないように配慮します。

反論を整理

並行して、反論を整理します。不貞行為自体を否認するのか、減額事由を主張するのかなどを整理します。

証拠を探す

反論が整理出来たら、反論を証明できるやり取りがどこかにないか探します。
交際相手とのやり取りはもちろん、無関係の人とのやり取りであってもアリバイの証拠になるものが見つかる可能性があります。

まとめ

LINEやSNSのやり取りも、不貞慰謝料の場面で証拠になり得ますが、前後の文脈や日時などが分かるように提出する必要があります。
請求された側としては、既婚と知らなかった経緯や婚姻破綻を過失なく信じた事情、性的関係がないことを示すやり取りを証拠として提出することになります。まずは改ざんを疑われない形で保存し、争点ごとに整理することが重要です。

※費用などはこちらをご参考ください。

この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
 弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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