不貞慰謝料の時効は、不貞行為が発覚してから3年、行為の時から20年が原則です。しかし、実際には配偶者間の特例や、発覚の時期によって時効の成否が変わるなど、一般に思われているよりも複雑な仕組みになっています。
このページでは、不貞慰謝料の時効について、基本的な制度の説明から具体的なケースまで、法律に詳しくない方にも分かりやすいように整理して解説します。「時効が過ぎているから大丈夫」と安心してよいのか、あるいは「まだ請求されるおそれがあるのか」を判断するための手がかりとしてご活用ください。
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目次
不貞慰謝料の時効に関する法律の基礎知識
不貞行為とは
不貞行為とは、配偶者以外の人と性的関係を持つことをいいます。夫婦はお互いに貞操義務を負っているため、不貞行為は離婚原因になるだけでなく(民法770条1項1号)、不法行為に基づく損害賠償請求の対象にもなります(民法709条)。
不貞行為による損害賠償は「慰謝料」と呼ばれ、不貞行為をした配偶者だけでなく、その相手方(いわゆる浮気相手)にも請求できる場合があります。
不貞慰謝料の消滅時効とは
消滅時効とは、一定の期間が経過すると、権利を行使できなくなる制度です。不貞慰謝料も例外ではなく、法律で定められた期間を過ぎると、請求を受けた側は時効を主張して支払いを拒むことができるようになります。
なお、時効期間が経過しても、自動的に権利が消滅するわけではありません。請求を受けた側が「時効を援用する」(時効であることを主張する)ことが必要です(民法145条)。
時効期間の原則:「発覚から3年」と「行為から20年」
不貞慰謝料は不法行為に基づく損害賠償請求にあたります。不法行為による損害賠償請求権の時効は、民法724条により、次の2つのうちいずれか早い方とされています。
⑴ 損害および加害者を知った時から3年
⑵ 不法行為の時から20年
実務上は、⑴は「不貞行為が発覚し、相手が誰かも分かった時から3年」、⑵は「不貞行為が行われた時から20年」と理解して問題ありません。
発覚しなければ20年
「3年」という数字だけが知られていることが多いですが、あくまで「発覚してから3年」という数え方です。不貞行為の事実に気づいていない場合は、3年の時効は進行しません。
ただし、発覚しない場合でも、不貞行為が行われた時から20年が経過すると権利が消滅します。
継続的な不貞関係の場合
不貞行為が1回ではなく、継続的に行われていた場合、時効の起算点(いつからカウントするか)が問題になります。この点については、不貞関係の終了時点や最後の行為時点を基準とするのが一般的な考え方です。
夫婦間の慰謝料請求には特例がある
不貞行為をした配偶者に対する慰謝料請求については、民法159条に特例が設けられています。
夫婦間では、婚姻中に権利行使を控えるやむを得ない事情があり得ることから、婚姻関係が解消(離婚など)された後6か月を経過するまでは時効が完成しないとされています。
この特例は、あくまで夫婦間(配偶者に対する請求)にのみ適用されます。不貞行為の相手方(浮気相手)に対する請求には適用されませんので、注意が必要です。
よくある勘違い:「3年経てば安心」ではない
不貞慰謝料の時効について、「3年経てば大丈夫」と考えている方は少なくありません。しかし、以下のような事情があるため、単純に3年で時効が成立するとは限りません。
発覚時期が遅い場合:不貞行為自体が何年も前であっても、相手方がその事実を知ったのが最近であれば、その時点から3年間は請求が可能です。
配偶者への請求の場合:前述の民法159条の特例により、離婚後6か月間は時効が完成しません。そのため、離婚の時期によっては、3年を大きく超えてから請求されることもあり得ます。
時効の中断(更新)がある場合:請求者が裁判を起こしたり、請求を受けた側が債務を承認したりすると、時効がリセットされる場合があります(民法147条以下)。
請求先ごとの時効の整理
ここまでの内容を整理すると、次のようになります。
不貞相手への慰謝料請求:発覚から3年、または行為から20年のいずれか早い方
配偶者への慰謝料請求:発覚から3年、または行為から20年。ただし、離婚後6か月を経過するまでは時効が完成しない
このように、請求先が配偶者か不貞相手かによって、時効の取り扱いが異なる点がポイントです。
時効を意識した対応のポイント
不貞慰謝料の時効は、想定するよりも長くなる場合があります。発覚後3年間は請求される可能性があり、実際に2年以上経過してから請求される例も珍しくありません。
そのため、まだ請求を受けていない場合でも、時効の成否を正確に把握しておくことが大切です。時効が成立しているかどうかの判断は、発覚時期や婚姻関係の状況など、複数の要素が関係するため、自分だけで判断することが難しい場合もあります。
また、仮に時効が成立していない場合に備えて、慰謝料の減額に影響し得る事情(たとえば、婚姻関係がすでに破綻していたこと、不貞行為の期間が短いことなど)を裏付ける資料や証拠を保存しておくことも重要です。
請求を受けた場合や、時効の成否に不安がある場合には、早い段階で専門家に状況を整理してもらうことで、適切な対応がとりやすくなります。
まとめ
不貞慰謝料の時効は、「発覚から3年」「行為から20年」が原則ですが、配偶者に対する請求には離婚後6か月の猶予があるなど、状況によって結論が変わります。「しばらく請求されていないから大丈夫」と安易に判断するのは危険です。
時効の成否は、発覚時期、婚姻関係の状況、時効の中断事由など、複数の要素が絡み合って決まります。判断が難しいと感じた場合や、実際に請求を受けて対応に迷っている場合には、弁護士に相談して状況を整理することをおすすめします。
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この記事の執筆者
寺岡法律事務所
弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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