不貞慰謝料の請求を受けたとき、「支払いが遅れたら高額の遅延損害金を請求する」と主張して支払いを要求されることがあります。遅延損害金という聞き慣れない言葉と、高額な請求額におそれを感じて、十分に検討しないまま請求に応じてしまうケースも少なくありません。しかし、不貞慰謝料の遅延損害金は、正しく理解すれば過度におそれる必要はありません。
このページでは、遅延損害金の意味、起算点(いつから発生するか)、利率(何%か)、具体的な計算方法を整理したうえで、請求を受けた場合の対応方法について分かりやすく解説します。
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目次
不貞慰謝料の遅延損害金の基礎知識
遅延損害金とは
遅延損害金とは、金銭の支払いが期限どおりにされなかった場合に、遅れた期間に応じて発生する損害賠償のことです。一般に「遅延利息」と呼ばれることもあります。
金銭債務の不履行については、原則として法律で定められた利率(法定利率)によって遅延損害金を計算します(民法419条1項)。ただし、当事者間の合意(約定利率)が法定利率を超える場合には、約定利率が適用されます。
不貞慰謝料は不法行為に基づく損害賠償(民法709条)ですので、不法行為に基づく損害賠償についての遅延損害金のルールが適用されます。不法行為に基づく損害賠償債務は、損害が発生したと同時に遅滞に陥ります。
起算点(いつから遅延損害金が発生するか)
不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金は、損害が発生した時点、つまり不法行為があった時から発生します。不貞慰謝料の場合、理論上は不貞行為があった時が起算点です。請求や催告がなくても、不貞行為の時点から自動的に遅延損害金の計算が始まります。
継続的な不貞行為の場合の起算点
不貞行為は一度きりではなく、一定期間継続することが多いため、「不法行為の時」を特定しづらいという問題があります。そのため、実務上は事案に応じて、次のような日を起算点として計算することが多いです。
- 最終の不貞行為の日(または不貞関係の終了日)
- 訴状送達の翌日(起算日を明確にするため)
利率は年3%(法定利率)
不貞慰謝料の遅延損害金は、当事者間で別途合意がない限り、法定利率によって計算します。
法定利率は、2020年(令和2年)4月1日施行の民法改正によって、従来の年5%から年3%に引き下げられました(民法404条2項)。この法定利率は3年ごとに見直される変動制ですが(民法404条3項)、法務省の告示により、令和11年(2029年)3月31日までは年3%が維持されることが確定しています。
計算方法(単利・日割り計算)
遅延損害金は、次の計算式で日割り計算します。複利ではなく単利で計算します。
遅延損害金 = 元本 × 法定利率(3%) × 遅延日数 ÷ 365
たとえば、慰謝料額が200万円で、支払いが1年間遅れた場合の遅延損害金は次のとおりです。
200万円 × 3% = 6万円
慰謝料額ごとの遅延損害金の目安(1年間遅延した場合)は、次のとおりです。
| 慰謝料額 | 遅延損害金(1年間) |
| 100万円 | 3万円 |
| 150万円 | 4万5,000円 |
| 200万円 | 6万円 |
| 300万円 | 9万円 |
このように、1年間支払いが遅れたとしても、遅延損害金の額は元本に対して大きなものではありません。交渉に時間をかけたことで支払い時期が多少遅くなっても、遅延損害金が大きく膨らむことはないといえます。
年14.6%などの高い利率が当然に適用されるわけではない
相手方から「支払いが遅れた場合は年14.6%の遅延損害金を請求する」などと主張されることがあります。14.6%という数字は、契約における約定利率として定められることの多い利率です。
しかし、法定利率を超える利率で遅延損害金を請求するためには、当事者間の合意(約定利率の取り決め)が必要です。不貞慰謝料の請求の場面では、まだ合意が成立していない段階で請求書や通知書が届くことがほとんどです。合意がなければ、14.6%という高い利率での遅延損害金は発生しません。法定利率の年3%が適用されます。
もっとも、示談書で約定利率を定めた場合には、その合意した利率が適用されます。示談書に署名する際には、遅延損害金の利率についても確認することが大切です。
遅延損害金を請求されたときの対応
計算の根拠を確認する
高額の遅延損害金が記載された請求書や通知書を受け取った場合には、まず、計算の根拠を確認しましょう。どの時点を起算点としているのか、利率は何%で計算しているのか、元本はいくらとしているのかを確認します。法定利率を超える利率で計算されている場合や、不合理な起算点が設定されている場合には、その計算どおりに支払う義務はありません。
自分でも計算してみる
上記の計算式を使って、ご自身でも遅延損害金の金額を計算してみましょう。相手方が主張する慰謝料額の100万円、200万円、300万円など、いくつかのパターンで計算すると、仮に1年間交渉に時間がかかったとしても、遅延損害金の額は数万円程度であることが分かります。
あわてず落ち着いて対応する
遅延損害金の額が大きくはないことが分かれば、急いで不利な条件で合意する必要はありません。たとえば、1年間交渉を続けて慰謝料額を50万円減額できた場合、遅延損害金を考慮しても大幅に支払額を減らすことができます。「遅延損害金が膨らむ」という相手方の主張に振り回されず、落ち着いて適切な金額を検討することが重要です。
まとめ
不貞慰謝料の遅延損害金は、法定利率(年3%)で計算され、短期間で大きく膨らむ性質のものではありません。相手方が年14.6%などの高い利率を主張していても、合意がなければ法定利率が適用されます。遅延損害金の起算点や計算方法を正しく理解し、自分でも計算してみることで、落ち着いた対応が可能になります。
遅延損害金の問題に限らず、不貞慰謝料の請求を受けた場合には、法的な知識を踏まえた対応が必要になります。対応が難しいと感じた場合や、具体的な事情に応じたアドバイスが必要な場合には、弁護士に相談されることをお勧めします。
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この記事の執筆者
寺岡法律事務所
弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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