不貞慰謝料の証拠・示談書の保存期間はいつまで?時効との関係
保存期間は時効が目安です。示談が成立していなければ発覚から3年、示談が成立していれば支払期日から10年が一応の区切りです。
不貞問題が解決した後、示談書やLINE・通話記録などの証拠をいつまで保管すればよいか、迷っていませんか。保存期間は時効が一つの目安になります。示談が成立していなければ発覚から3年、示談が成立していれば支払期日から10年が区切りです。保存すべき書類とその方法を解説します。
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不貞慰謝料の基本的な法律知識
不貞慰謝料とは
不貞行為とは、配偶者以外の人と性的関係を持つことをいいます。夫婦はお互いに貞操義務を負っており、不貞行為はこの義務に違反するものです。不貞行為が行われた場合、離婚原因となりうるほか(民法770条1項1号)、不法行為に基づく損害賠償請求の根拠にもなります(民法709条、710条)。
この損害賠償のことを一般に「慰謝料」と呼んでいます。不貞行為を行った配偶者だけでなく、不貞行為の相手方(いわゆる浮気相手)も、損害賠償義務を負うことがあります。請求額としては、当初300万円から500万円程度で請求されることが多いですが、最終的な金額は個別の事情によって異なります。
示談(和解契約)とは
示談とは、当事者間で話し合いにより紛争を解決する合意のことで、法的には「和解契約」と呼ばれます(民法695条)。不貞慰謝料の場面では、慰謝料の金額や支払い方法、支払期限などを取り決め、書面(示談書)に残すことが一般的です。
示談が成立すると、当事者はその内容に拘束されます。例えば、示談書に「甲と乙は、本件に関し、本示談書に定めるもののほかに、何ら債権債務がないことを相互に確認する」といった清算条項が含まれている場合、示談で定めた以上の請求は原則としてできなくなります。この清算条項があるかどうかは、解決後の書類保存を考えるうえでも重要なポイントです。
不貞慰謝料の時効期間
不貞慰謝料の請求権には時効があり、一定期間が経過すると、請求を受けても時効を主張して支払いを拒むことができるようになります。時効期間は、請求の根拠によって異なります。
不法行為に基づく時効(示談が成立していない場合)
不貞慰謝料は不法行為に基づく損害賠償請求ですので、民法724条の時効が適用されます。具体的には、「損害および加害者を知った時から3年」または「不法行為の時から20年」の経過で時効が完成します。相手方から慰謝料を請求されているということは、相手方は不貞行為の事実と加害者を知っているといえますので、基本的には「発覚から3年」で時効が完成すると考えてよいでしょう。なお、配偶者に対する慰謝料請求については、離婚後6か月間は時効が完成しないという特則があります(民法159条)。
和解契約に基づく時効(示談が成立している場合)
示談(和解契約)が成立した場合、示談金の請求権は和解契約に基づく債権として扱われます。この場合の時効は、「権利を行使することができることを知った時から5年」または「権利を行使することができる時から10年」のいずれか早い方で完成します(民法166条1項)。示談書に支払期日が明記されている場合は、通常、その支払期日が起算点になります。支払期日から10年が経過すれば、示談金の請求権は時効により消滅することになります。
示談後は一切請求されないと安心してはいけない
「示談で解決したのだから、もう請求されることはない」と考える方がいらっしゃいます。清算条項のある示談書が作成されていれば、法的には追加請求に対して反論する根拠になりますが、それでも相手方が再度請求してくる可能性が絶対にないとはいえません。
例えば、示談後に別の不貞行為が発覚した場合には、新たな慰謝料請求がなされることがあります。また、示談書の内容に争いが生じ、「示談の効力が無効だ」と主張されるケースもゼロではありません。こうした事態に備えるためにも、示談書やそれに関連する書類は適切な期間、保管しておくことが大切です。
証拠・示談書の保存期間の目安
示談が成立していない場合の保存期間
示談が成立せず、支払いだけで一応の解決とした場合(支払った事実はあるが、正式な示談書がない場合など)は、不法行為に基づく時効の枠組みで考えることになります。
この場合、相手方が不貞行為の事実を知ってから3年で時効が完成しますので、発覚から3年間は関連資料を保存しておくことが目安になります。3年が経過した後は、仮に請求を受けても時効の主張が可能です。
ただし、時効を主張するためには、「相手方がいつ不貞行為を知ったのか」を示す必要があります。そのため、相手方からの請求書や内容証明郵便など、請求を受けたことを示す書類については、不貞行為から20年間保存しておくことが望ましいです。これは、20年の時効期間(民法724条2号)との関係で、最長20年間は請求される可能性が理論上あるためです。
示談が成立している場合の保存期間
示談が成立し、示談書が作成されている場合は、和解契約に基づく時効を基準に保存期間を考えます。示談書に記載された支払期日から10年が経過すれば、示談金に関する請求権は時効で消滅します。
したがって、示談書は支払期日から少なくとも10年間は保管しておくようにしましょう。示談金を支払った証拠(振込明細書や領収書など)も同様に10年間保管しておくと安心です。また、示談書に清算条項が含まれている場合、その条項は示談で解決済みであることを証明する重要な根拠になります。万が一、示談後に追加の請求を受けた場合に清算条項を示すことで反論できますので、示談書の保管は特に重要です。
保存すべき書類の種類
保存が望ましい書類の例としては、次のようなものがあります。
- 示談書(和解契約書)の原本
- 相手方からの請求書・内容証明郵便
- 弁護士との間でやり取りした書面
- 慰謝料の支払いを証明する書類(振込明細書、領収書など)
- 交渉経過を記録したメールやメッセージのやり取り
これらの書類は、後から紛争が蒸し返された場合に、解決済みであることや支払い済みであることを証明するための重要な資料になります。
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書類の具体的な保存方法
原本の保管が望ましい
裁判で証拠を提出する場面を想定すると、書類は原本で保管しておくことが望ましいです。裁判所では、証拠書類の原本確認が行われることがあり、コピーしか手元にない場合は証拠としての信用性が低く評価される可能性があります。
特に示談書は、原本と写しとで証拠としての価値が大きく異なります。示談書の原本は、紛失しないように大切に保管しておきましょう。
原本保管が難しい場合はスキャンデータで対応する
もっとも、必要になるかどうかわからない書類を何年も原本で保管し続けることは、現実的に大変な場合もあります。そのような場合は、次善の策として、スキャンしたデータ(PDF等)を保存しておく方法があります。
スキャンデータは、原本に比べると証拠としての価値は下がりますが、書類の存在や内容を示す手がかりにはなります。スキャンする際は、文字が読み取れる解像度で、書面全体が欠けずに写るように保存しましょう。保存先としては、パソコンのハードディスクだけでなく、クラウドストレージや外付けハードディスクなど、複数の場所にバックアップしておくと、データの消失リスクを減らせます。
証拠保存で注意しておきたいポイント
証拠や示談書の保存について、実務上注意しておきたいポイントを整理します。
まず、書類を保存する期間は、上で解説した時効期間を目安にしてください。示談が成立していない場合は発覚から3年(請求を受けたことを示す書類は不貞行為から20年)、示談が成立している場合は支払期日から10年が一つの区切りです。
次に、保存方法については、原本の保管が最も望ましいですが、難しければスキャンデータでも構いません。重要なのは、「いつでも書類の内容を確認できる状態にしておくこと」です。
また、保存期間が経過した後の取扱いについてですが、時効期間が経過したからといって、直ちに書類を処分しなければならないわけではありません。保管スペースに余裕があるのであれば、念のためもう少し長く保管しておくことも一つの選択肢です。解決後に再び請求を受けた場合は、保管していた書類をもとに弁護士に相談することで、適切な対応をとることができます。
まとめ
不貞慰謝料に関する書類の保存期間は、時効が一つの目安になります。示談が成立していない場合は発覚から3年(請求を受けたことを示す書類は不貞行為から20年)、示談が成立している場合は支払期日から10年が区切りです。保存方法は原本が望ましいですが、難しければスキャンデータでも構いません。とくに清算条項のある示談書は、蒸し返しへの反論の根拠になる重要な書類です。
一方で、「示談したからもう安心」と書類を早く処分してしまうと、後から再請求や効力を争う主張を受けたときに、解決済みであることを示せなくなるおそれがあります。判断に迷う場合や、解決後に再び請求を受けた場合は、保管していた書類をもとに一度弁護士へご相談ください。経緯を伺えば、時効が成立しているか、保管書類で反論できるかを具体的にお伝えできます。
この記事の執筆者
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