不貞慰謝料を請求されたら?請求から解決までの流れ
内容証明で高額な慰謝料を請求されても、その金額がそのまま認められるとは限りません。事情によっては大幅な減額が可能なことも少なくなく、多くは弁護士を通じた交渉で解決します。
ある日突然、内容証明郵便で高額な慰謝料を請求され、「全額を支払うしかないのか」「会社や家族に知られないか」と不安を感じていませんか。本ページでは、不貞慰謝料の基本的な仕組みや相場に加え、請求を受けてから解決に至るまでの流れを、具体的なストーリーとともに解説します。
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不貞慰謝料の基本的な法律知識
具体的なケースを見る前に、不貞慰謝料の基本的な考え方を整理します。「どのような行為が対象になるのか」「なぜ慰謝料を支払う義務が生じるのか」「金額の相場はどれくらいか」という3つの観点から説明します。
不貞行為とは
不貞行為とは、婚姻関係にある人が、配偶者以外の人と自由な意思に基づいて性的関係を持つことをいいます。一般に「浮気」「不倫」と呼ばれる行為のうち、法律上の不貞行為に当たるのは、原則として性交渉またはこれに類する行為があった場合です。
そのため、デートや食事をした、LINEやメールでやり取りをしていた、というだけでは、原則として不貞行為には当たりません。ただし、親密な交際が続き、夫婦の平穏な共同生活を侵害していると評価される場合には、例外的に慰謝料が認められることもあります。相手が主張する行為が法律上の不貞行為に当たるのかを正確に把握することが、対応の第一歩になります。
慰謝料が発生する仕組み
不貞慰謝料は、民法上の不法行為(民法709条)に基づく損害賠償として請求されます。夫婦はお互いに貞操義務を負っており、不貞行為はこの義務に反する行為です。不貞行為によって配偶者の「平穏な婚姻生活を送る利益」が侵害され、精神的苦痛(民法710条)が生じたとして、慰謝料の支払義務が生じます。
慰謝料を負担する可能性があるのは、不貞行為をした配偶者本人だけではありません。その相手方(いわゆる浮気相手)も、共同不法行為者(民法719条)として損害賠償義務を負うことがあります。そのため、配偶者の立場だけでなく、浮気相手の立場で請求を受けるケースもあります。
不貞行為をした配偶者と浮気相手の損害賠償義務は、法律上「不真正連帯債務」と呼ばれる関係にあります。これは、どちらか一方が全額を支払った場合、もう一方に対して負担部分の返還(求償)を求められるという意味です。この求償の問題は、特に浮気相手の立場で請求を受けたときの交渉材料になることがあります。
不貞慰謝料の相場
不貞慰謝料の金額は、法律で一律に決まっているわけではなく、個々の事情に応じて判断されます。裁判例の傾向としては、おおむね次のような幅があります。
金額に影響する主な要素としては、婚姻期間の長さ、不貞行為の期間や回数、子どもの有無や年齢、行為の悪質性の程度、すでに社会的な制裁を受けているかどうかなどがあり、これらは増額・減額の双方向に働きます。
なお、交渉の最初の段階では、相場を上回る300万〜500万円程度の金額が主張されることも多くあります。ただし、最初に提示された請求額がそのまま認められるわけではないため、まずは冷静に受け止めることが大切です。
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【具体例】内容証明で300万円を請求されたケース
※ 以下は実際の事案ではなく、複数の事案をもとに構成した架空のストーリーです。
事案の設定
Xは配偶者Zと婚姻5年目でしたが、夫婦関係がうまくいっておらず、子どもはいませんでした。Xはスポーツジムで知り合ったYと親しくなり、約6か月の交際を経て性的関係に至りました。これを知ったZは弁護士(ZB弁護士)に依頼し、XとYそれぞれに300万円の慰謝料を請求する内容証明郵便を送りました。
配偶者Zとの婚姻5年目。Yと交際していました。Xが相談・依頼した弁護士を「XB弁護士」とします。
Xとともに慰謝料を請求されました。Yが依頼した弁護士を「YB弁護士」とします。
不貞を知り、XとYに慰謝料を請求しました。Zが依頼した弁護士を「ZB弁護士」とします。
Xの対応の流れ
内容証明郵便が届く
ある日帰宅すると、ZB弁護士から内容証明郵便が届いていました。不貞慰謝料として300万円の支払いを求める内容です。配偶者Zに話そうとしましたが、「弁護士に任せたので直接は対応しない」と言われました。
弁護士に相談する
XはXB弁護士にメールで相談を申し込み、翌日オンラインで法律相談を受けました。慰謝料の減額交渉が可能であること、通常は勤務先に知られる可能性は低いことなどの説明を受けました。あわせて、Yについては利益相反のため同じ弁護士は受任できず、別の弁護士(YB弁護士)を紹介できると伝えられました。
委任契約を結ぶ
翌日、XB弁護士の事務所で委任契約の手続を行いました。相談を済ませていたため、本人確認と契約書類への記名・押印で10分ほどで完了しました。
弁護士同士で交渉する
依頼後、XB弁護士がZB弁護士に受任を連絡し、交渉が始まりました。やり取りはすべて弁護士の間で行われ、XとZが直接連絡を取ることはありませんでした。依頼から約3か月後、「150万円での和解が見込める」との報告があり、Xは早期の解決を望んでこの内容で和解することにしました。
和解・解決
Xは和解金と弁護士費用をXB弁護士の指定口座に振り込み、XB弁護士から相手方へ和解金が送金されました。その後、和解書などの書類を受け取り、事件は終了しました。
Yの対応の流れ
内容証明郵便が届く
Yのもとにも、同じく300万円を求める内容証明郵便が届きました。Xから連絡があり、利益相反のため同じ弁護士には依頼できないこと、別の弁護士(YB弁護士)を紹介してもらえたことを聞きました。
弁護士に相談する
Yは紹介されたYB弁護士に連絡し、翌日オンラインで相談を行いました。YB弁護士はXB弁護士からあらかじめ事情を聞いており、Yについても慰謝料の減額が可能であるとの見解を示しました。
郵送で委任契約を結ぶ
Yは依頼の意向を伝え、郵送で委任契約の手続を行いました。届いた書類に記入・押印し、本人確認書類のコピーとともに返送しました。
交渉・和解・解決
Yの交渉は、X側の交渉が終わった後に本格的に始まりました。委任から約4か月後、YB弁護士から「50万円での和解が見込める」との連絡があり、Yはこの内容で和解しました。Xと同様に、弁護士を通じて和解金を支払い、和解書を受け取って事件は終了しました。
このケースでは、当初それぞれ300万円とされていた請求が、交渉の結果、Xは150万円、Yは50万円で解決しました。最初に提示された金額が、そのまま支払う金額になるわけではないことがわかります。
まとめ
不貞慰謝料は、請求された金額がそのまま認められるわけではなく、事情に応じて大幅な減額が可能なケースも少なくありません。今回のストーリーでも、当初それぞれ300万円とされた請求が、交渉によってXは150万円、Yは50万円で解決しました。まずは慌てずに、事実関係を冷静に整理することが大切です。
一方で、相場の判断や交渉の進め方には法的な専門知識が必要で、ご自身だけで対応すると負担が大きくなりがちです。相場を大きく上回る金額で合意してしまったり、清算条項のない和解書で後から再請求されたりするおそれもあります。請求を受けたまま放置するのも望ましくありません。対応を決める前に、一度弁護士へご相談ください。事情を伺えば、減額の見込みや解決までの流れを具体的にお伝えできます。
この記事の執筆者
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