不貞慰謝料の請求を受けた際、証拠として探偵(興信所)の調査報告書が添付されていることがあります。報告書には写真や行動記録が詳しく記載されていますが、内容をよく確認すると、実は不貞行為の証明としては不十分なケースも少なくありません。
このページでは、探偵の報告書を示されたときに確認すべきポイントを解説します。
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目次
不貞慰謝料と証拠に関する法律知識
不貞行為とは
不貞行為とは、配偶者のある人が配偶者以外の異性と性的関係(性交渉)を持つことをいいます。民法770条1項1号は「配偶者に不貞な行為があったとき」を離婚原因の一つとして定めています。また、不貞行為は民法709条・710条に基づく不法行為として、損害賠償(慰謝料)の対象にもなります。
不貞行為の相手方(いわゆる浮気相手)も、配偶者と同様に慰謝料を請求されることがあります。不貞行為による慰謝料のことを一般に「不貞慰謝料」と呼んでいます。
不貞慰謝料が発生する条件
不貞慰謝料が発生するためには、原則として性交渉の存在が必要です。食事やデートをしただけでは、基本的に不貞行為には該当しません。ただし、性交渉に至らない場合であっても、抱き合っている写真やキスをしている写真がある場合などには、慰謝料が認められる可能性はあります。もっとも、その場合に認められる金額は、性交渉がある場合に比べて低額になる傾向があります。
不貞慰謝料の請求額は、最初の請求段階では300万円から500万円程度の金額が主張されることが多いです。ただし、最終的に裁判所で認められる金額は、これよりは大幅に少なくなることが多いです。
不貞行為の立証責任は請求する側にある
不貞慰謝料を請求する側(配偶者側)が、不貞行為の存在を証拠によって証明する必要があります。これを「立証責任」といいます。つまり、請求を受けた側が自分の潔白を証明する義務を負うわけではありません。
性交渉は密室で行われるのが通常ですので、直接的な証拠(性行為そのものの写真など)が提出されることは稀です。そのため、ラブホテルに二人で出入りしている写真など、間接的な事実(間接事実)から不貞行為を推認する(推測して認定する)という方法が一般的です。
探偵の報告書があれば不貞が証明されるわけではない
探偵の報告書が提出された場合、それだけで不貞行為が証明されたと思い込んでしまう方がいます。しかし、報告書はあくまで調査会社が独自に作成した書面であり、裁判所が認定するかどうかは別問題です。
報告書の記載内容と添付された写真を照らし合わせると、実は写真では報告書に書かれている内容を確認できないケースがあります。たとえば、報告書の文章では「二人がホテルに入室するのを確認した」と記載されていても、添付写真を見ると一人しか写っていなかったり、写真がぼやけて人物を特定できなかったりすることがあります。
このように、報告書の「結論」だけを読むのではなく、結論を裏付ける写真や時系列の記録が実際に揃っているかどうかを精査することが重要です。
間接事実の積み重ねによる立証
不貞行為の立証は、一つの決定的な証拠だけではなく、複数の間接事実を組み合わせて行われることが多いです。探偵の報告書のほかに、LINEやメールのやりとり、ホテルの領収書、相手方の自白(不貞を認める発言)なども証拠となり得ます。
したがって、探偵の報告書だけでは不貞行為を立証できない場合でも、他の証拠と合わせて判断されることがあります。報告書の証明力が弱いからといって、安易に不貞行為を全面的に否定する対応が適切とは限りません。相手方がどのような証拠を保有しているかを慎重に見極めることが大切です。
探偵の報告書を確認する3つのチェックポイント
探偵の報告書を受け取った場合には、以下の3つの視点から内容を精査することが有効です。
チェック1:人物の特定性
報告書に添付された写真で、そこに写っている人物が自分(請求を受けた本人)および交際相手であると特定できるかを確認します。写真の解像度が低い場合や、顔が写っていない場合には、そもそも誰が写っているのか判別できません。
報告書の文章部分では「対象者AとBがホテルに入室するのを確認した」と記載されていても、写真を見ると人物が特定できないことがあります。文章の記載だけで人物を特定しているに過ぎない場合には、写真としての証拠価値は低くなります。
チェック2:不貞行為を推認できる場面の有無
不貞行為を推認するためには、二人がラブホテルなどに一緒に出入りしている場面が写真に収められている必要があります。以下のようなケースでは、不貞行為の推認が難しくなります。
ホテル付近の道路を歩いているだけの写真:ホテルの近くを通行しているだけでは、そのホテルに入ったとは認定できません。
二人で歩いている写真とホテルの写真が別々:二人が一緒に写っている写真と、ホテルの外観の写真が別々に撮影されている場合、二人がそのホテルに一緒に入ったとは認められない可能性があります。
テーマパークや飲食店での写真のみ:仲良く過ごしている写真だけでは、性交渉があったことの証明にはなりません。親密な関係を示す証拠にはなりますが、不貞行為の直接的な推認には不十分です。
チェック3:時間的な連続性と滞在時間
不貞行為を推認するためには、二人が一緒にホテルに入った時刻と出てきた時刻の両方が記録されていることが重要です。入室の写真だけがあり退出の写真がない場合には、「ホテルの部屋に送り届けただけで、もう一人はすぐに帰ったのではないか」という反論が成り立つ可能性があります。
また、入室から退出までの滞在時間が極端に短い場合(たとえば5分程度)には、性交渉があったとは考えにくいとの判断がなされることもあります。時刻の記載があれば必ず確認し、不自然な点がないかを検討しましょう。
さらに、写真のタイムスタンプや報告書の時系列の記載に矛盾がないかも確認のポイントです。時刻の記載が前後していたり、写真の撮影順と報告書の記述が一致していなかったりする場合には、報告書全体の信用性が問われることになります。
報告書を受け取ったときの対応の進め方
探偵の報告書を受け取ったら、まず冷静に内容を精査することが大切です。上記の3つのチェックポイント(人物の特定性、不貞推認の場面、時間的連続性)を確認し、報告書の証明力を客観的に評価しましょう。
報告書の証明力が弱いと判断した場合でも、すぐに全面的な反論をすることは避けた方がよい場合があります。相手方が報告書以外にも証拠を保有している可能性があるためです。早い段階で詳細な反論をしてしまうと、相手方にこちらの主張内容を把握され、追加の証拠を用意されるおそれがあります。
そのため、証拠の評価や対応の方針については、弁護士に相談のうえで戦略的に進めることが望ましいです。
まとめ
探偵の調査報告書は、一見すると不貞行為を証明する強力な証拠のように見えることがあります。しかし、人物の特定性、不貞行為を推認できる場面の有無、時間的連続性といったポイントを精査すると、実際には証明力が不十分なケースもあります。
報告書を受け取った場合には、記載内容を鵜呑みにせず、写真と文章の整合性を一つ一つ確認することが大切です。証拠の評価や相手方への対応に不安がある場合や、内容が複雑で判断が難しい場合には、弁護士に相談されることをお勧めします。
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この記事の執筆者
寺岡法律事務所
弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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