不貞慰謝料を支払わないとどうなりますか?すぐに支払った方がいいですか?

不貞慰謝料の請求を受けると、「支払わなかった場合に何が起きるのか」「無視すると不利になるのか」と不安が出てきます。
特に、弁護士名での内容証明郵便が届いた場合には、すぐに払わないといけないのではないかという不安が生じます。
不定慰謝料を支払わない場合、交渉段階・訴訟段階・判決後のどの段階にあるかによって、影響が異なります。
結論としては、判決が出ていない場合はすぐに支払う必要はありません。
ここでは、それぞれの場面で起こり得る影響と注意点を整理します。


交渉段階で支払わない場合

「弁護士からの内容証明郵便が届いた」「相手方から請求書が届いた」といった 交渉段階 では、支払わないからといって直ちに不利益が発生することはありません。この段階で支払わなくても、相手が訴訟提起をする可能性があるだけです。

交渉段階で注意するのは次の内容です。

  • 不適切な返答、曖昧な対応、不利な内容の合意をしない
    「話し合いでおさめるために、、、」と考えて、謝罪文を送ったり、事実と異なる内容を認めてしまったり、不利な合意書を作成してしまったりすると、それが後の訴訟で不利な証拠として使用されてしまうことがあります。
  • 主張・証拠の整理をせずに交渉をしない
    不貞行為の有無、証拠の内容、夫婦関係の状況などを正確に判断しないまま対応すると、必要以上の金額を支払う方向に誘導される可能性があります。
    また、不合理な反論をしたりすると、それが不貞行為の間接証拠となってしまう危険があります。

交渉段階では、支払わないことは直ちに不利益にはなりませんが、適切な対応をしないと後の手続きで不利になっていく危険があります。


訴訟段階で支払わない場合

相手が不貞慰謝料請求訴訟を提起した場合、ここからは 裁判所での手続 になります。判決が出ていないので、支払わないだけでは不利益が生じることはありません。

ただし、重要なのは以下の点です。

  • 主張や証拠を適切に出さなければ、不利な判決になる可能性が高い
    「すでに婚姻関係が破綻していた」などの事情があっても、それを主張立証しなければなかったものとして扱われます。
    このため、訴訟においては適切に主張を提出する必要があります。
  • 何も反論しないと、不利な判決になる可能性が高い
    不貞行為の証拠が不足している、相手の主張よりも不貞行為の期間や回数が少ないという場合でも、それを主張立証しなければ、相手の主張がそのまま認定されます。
    このため、訴訟においては適切に反論を行う必要があります。

訴訟では「支払わない」こと自体より、適切に反論しないこと の方が大きなリスクになります。


判決後に支払わない場合の影響

裁判が終了し、慰謝料の支払いを命じる判決が確定したにもかかわらず支払わない場合、初めて明確な不利益が発生します。それが 強制執行(差押え) です。

差押えの対象としては、一般に以下が考えられます。

  • 預貯金
  • 給与
  • 不動産や自動車などの財産

給与差押えが行われた場合、勤務先に知られる可能性がある点も大きな懸念となります。
判決が出た後は放置することによる不利益が非常に大きく、支払方法などを検討する必要があります。
もちろん、判決が出る前の交渉や裁判段階で適切な対応をすることが重要です。


不貞慰謝料請求に対して取るべき対応

支払わないことで直ちに不利益が生じる場面は限られていますが、いずれの段階でも以下の点が重要です。

  • 不貞行為が立証できるのかを冷静に検討する
     証拠が不十分であれば、支払義務が否定される可能性があります。
  • 交渉段階の対応が後の訴訟に影響することを理解する
     認めるべきでない点を軽率に認めると、後の反論が難しくなります。
  • 訴訟になった場合は証拠提出と法的主張が重要
     適切に反論しなければ、請求額がそのまま認められるリスクがあります。
  • 判決後は放置すると差押えの可能性がある
     支払方法の調整が必要になります。