不貞慰謝料を請求されたら|交渉のポイントと法律の基礎知識

不貞慰謝料の請求書(内容証明郵便など)が届いた場合でも、記載されている金額をそのまま支払う必要はありません。不貞行為があったとしても、請求の根拠・証拠・金額の妥当性などを丁寧に確認し、反論すべき点は反論することが重要です。このページでは、不貞慰謝料に関する法律の基礎知識と、請求された側がとるべき対応のポイントをわかりやすく解説します。

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不貞慰謝料に関する法律の基礎知識

不貞慰謝料とは

不貞行為とは、配偶者のある人が配偶者以外の人と性的関係を持つことをいいます。夫婦は互いに貞操義務を負っており(民法752条)、不貞行為は離婚原因になる場合があります(民法770条1項1号)。また、不貞行為は不法行為(民法709条・710条)にあたるため、精神的苦痛に対する損害賠償、いわゆる「慰謝料」の請求原因になります。

通常、慰謝料請求が認められるためには性的関係(不貞行為)が必要です。ただし、性的関係がなくても、親密な交際や継続的なデートが不貞行為に準じると判断され、慰謝料請求の対象になるケースもあります。

なお、最初に請求される金額は300万円〜500万円程度とされるケースが多いですが、これはあくまでも最初の主張額です。実際に認められる金額はこれより低くなるのが通常です。

配偶者と不貞相手、どちらにも請求できる(共同不法行為)

不貞行為は性質上、必ず二人の当事者が関与します。「配偶者がいる人」と「その相手方」は共同不法行為(民法719条)として、それぞれが損害賠償義務を負います。

共同不法行為では、次のようなルールが適用されます。

  • 請求する側(被害者)は、二人それぞれに対して慰謝料の全額を請求できます。
  • 一方が慰謝料を支払った場合、もう一方の支払義務もその分だけ減少します。

たとえば、認められる慰謝料が200万円の事案で、配偶者(不貞行為を行った側)がすでに100万円を支払っていれば、不貞の相手方に対して残る請求は100万円となります。このため、交渉の際には配偶者側の支払状況も確認することが重要です。

慰謝料額の相場と決まり方

慰謝料額は一律に決まるものではなく、個別の事情に応じて判断されます。一般的な目安としては、100万円〜200万円程度になることが多いです。

主に考慮される事情は次のとおりです。

  • 不貞行為の期間(長期間ほど高額になりやすい)
  • 不貞行為の回数(多いほど高額になりやすい)
  • 婚姻関係への影響(離婚に至ったかどうかなど)
  • 相手方の認識(既婚者と知っていたか、知らなかったか)
  • 婚姻期間や子供の有無など

これらの要素が複合的に考慮されるため、請求書に記載された金額が必ずしも最終的な支払額になるわけではありません。

立証責任は請求する側にある

不貞行為があったことの立証責任は、慰謝料を請求する側が負っています。つまり、請求された側が「なかった」ことを証明しなければならないわけではありません。

実際に用いられる証拠としては、次のようなものが考えられます。

  • ラブホテルへの出入りを撮影した写真・動画
  • 宿泊施設の利用記録・領収書
  • LINE・SMS等の親密なやり取り(肉体関係を推認させる内容)
  • 継続的なデートや密会の記録

また、交渉の過程で不貞行為を認めてしまったり、証拠と矛盾した説明をしてしまったりすることも、不貞行為の存在を推認する事情として扱われる場合があります。このため、最初の対応は非常に重要です。

請求を受けたときに取るべき対応のポイント

冷静に、順を追って対応する

突然の請求書に動揺して、すぐに認めたり否定したりするのは危険です。まず落ち着いて、相手が何を主張しているのか・どのような証拠を持っているのかを確認するところから始めましょう。

対応の手順として、次の点を意識してください。

  • 不用意に認めない・不用意に否定しない:安易に認めれば証拠になりますが、証拠がないと高をくくって安易に否定をして矛盾が生じると不利な間接事実となります。
  • 相手の主張と証拠を確認する:いつ・どこで・どのような不貞行為があったとされているのか、具体的な内容を確認し、証拠の開示を求めましょう。
  • 反論の余地を整理する:不貞行為がそもそもなかった、既婚者とは知らなかった、婚姻関係がすでに実質的に破綻していた、回数や期間が少ないなど、慰謝料を否定・減額できる事情がないかを確認します。
  • 訴訟を恐れず粘り強く交渉する:訴訟になっても慰謝料額が自動的に増えるわけではありません。請求する側にとっても立証負担がありますので、過度に恐れる必要はありません。

交渉が長期化すると精神的・時間的な負担が増し、不利な内容でも早く解決したいという気持ちが生まれやすくなります。交渉の負担が大きいと感じる場合には、弁護士に依頼して交渉を任せることも一つの方法です。

具体例でイメージ:請求を受けたXの交渉の流れ

※注:解説用の架空の事案です。

事例の概要

Xは、配偶者がいることを知りながらYと交際し、不貞行為に及んでいました。ある日、Yの配偶者Zから内容証明郵便が届き、「不貞慰謝料300万円を支払え。支払わなければ訴訟を提起する。」という請求を受けました。Xは動揺しましたが、すぐには回答せず、落ち着いて対応策を検討することにしました。

対応の流れ

①相手の主張と証拠の確認を求める

Xは、Zに対し「いつ・どこで・何回の不貞行為があったのか」「その根拠となる証拠は何か」を具体的に示すよう求めました。Zからは「3か月の間に約5回の不貞行為があった。証拠は確保しているが、裁判外では開示できない。」という回答がありました。

Xは、Zが主張する期間・回数が実際よりも少ないこと、証拠の有無が不明であることを確認しました。

②事実関係を一定の範囲で認めつつ金額交渉へ

Xは証拠の存在が不明であることを踏まえ、不貞行為の存在について明確には認めない形を保ちながら、金額についての交渉を行いました。Zが改めて300万円を要求したのに対し、Xは次のように反論しました。

  • 不貞行為の期間・回数が少ないため、仮に慰謝料が認められるとしても200万円程度が相当であること
  • ZはYに対しても慰謝料を請求できるため、Xが負担すべきは半額の100万円程度であること

③訴訟をちらつかせる相手に対して粘り強く交渉

Zは「200万円なら受け入れるが、全額をXが支払え。応じなければ訴訟で300万円を請求する。」と要求してきましたが、Xは「100万円の支払いしか応じられない。訴訟になっても構わない。」と回答し、立場を変えませんでした。

④粘り強い交渉の結果、100万円で合意が成立

Xが100万円の提案を一貫して続けた結果、Zが折れ、「XがZに100万円を支払うこと、それ以外の一切の請求権を放棄すること」を確認する合意書を取り交わして解決に至りました。最初の請求額から大幅に減額された形での解決となりました。

まとめ

不貞慰謝料の請求書が届いたとしても、請求額がそのまま確定するわけではありません。不貞行為の有無・証拠の内容・請求額の妥当性・共同不法行為の関係など、丁寧に検討することで、支払額を減らせる余地があります。

請求する側にも立証の負担があり、訴訟を提起することには相応のコストがかかります。過度に不安にならず、時間をかけて交渉に臨むことが大切です。

自身での対応が負担であったり不安を感じる場合には、弁護士への相談を検討してみてください。

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この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
 弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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