不倫(不貞行為)を理由とする慰謝料請求の内容証明郵便が突然届いた場合、急いで返信しなければならないのではないか、返信しなければ不利益が生じるのではないかという相談を受けることがあります。内容証明郵便への返信は法律上の義務ではありません。ただし、無視を続けることで予期しない不利益が生じる場合があります。
このページでは、内容証明郵便の意味・効力、無視した場合のリスク、そして具体的な対応のポイントについて解説します。
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目次
内容証明郵便と不貞慰謝料の法的な仕組み
内容証明郵便とは
内容証明郵便とは、郵便局が「いつ・誰が・誰に・どのような内容の文書を差し出したか」を記録・証明する郵便サービスです。慰謝料請求の場面では、相手方が「この日にこの内容の請求をした」という事実を後日の交渉や裁判で証明するために利用されることが多いです。
内容証明郵便を受け取ったこと自体は、支払義務の発生や法的な敗訴を意味するものではありません。あくまでも「相手が請求をしたという記録が残る」という点に意味があります。
また、内容証明郵便には、記載されている事実の真実性を証明する効力はありません。例えば、「本当に不貞行為があったか」「慰謝料請求権が存在するか」という点は、内容証明郵便を送ったことだけでは証明されません。
不貞慰謝料とは
不貞行為とは、配偶者以外の人と性交渉を行うことをいいます。民法上、夫婦には互いに貞操義務があり、不貞行為は離婚原因になるだけでなく、不法行為に基づく損害賠償責任の原因にもなります。
この損害賠償義務を一般に「慰謝料」と呼んでいます。また、不貞行為を行った配偶者の相手方(いわゆる浮気相手)についても、同様に損害賠償義務を負います。
請求額については、最初の請求段階では300万円〜500万円程度とされるケースが多いですが、裁判で実際に認められる金額は、婚姻期間・不貞行為の態様・有責性の程度・婚姻関係破綻の有無などによって大きく異なります。
返信は法律上の義務ではない
内容証明郵便に「●日までに支払え」「期日を過ぎれば法的措置をとる」などと記載されていたとしても、その期限が過ぎた時点で自動的に敗訴になったり、財産が差し押さえられたりするわけではありません。
返信しなかった場合に直ちに何かが起きるわけではありませんが、放置することが自分に有利に働くわけでもありません。後述するように、無視を続けることで不利な状況が生まれることがあります。
無視し続けることで生じる不利益
職場への連絡の可能性
不貞行為の事実を職場など第三者に連絡することは、原則として許されません。しかし、本人に連絡がつかない状態が続く場合には、やむを得ない事情として職場への連絡が認められる場合があります。
つまり、内容証明を無視し続けることで、本来であれば許されなかった職場への連絡が認められる状況を自ら作り出してしまうリスクがあります。職場での信用に関わる問題ですので、連絡がつく状態を保つことが重要です。
訴訟への移行と欠席判決のリスク
内容証明への返信がなければ、相手方が訴訟(民事裁判)に移行する可能性があります。争うつもりがある場合には、裁判に移行すること自体を過度に恐れる必要はありませんが、裁判所からの呼出状まで無視してしまうと、欠席判決(相手の主張通りの判決)が出てしまうリスクがあります。
裁判所からの書類が届いた場合は、必ず確認し、適切な対応をとるようにしましょう。
受け取り拒否・未開封では問題を回避できない
「内容証明郵便を受け取り拒否すれば大丈夫」「開封しなければ届いていないことになる」と考えている方がいますが、これは誤りです。
内容証明郵便は、受け取り可能になった時点(不在票がポストに投函された時点)で相手方に到達したものとして扱われます。
受け取り拒否をしたり開封しなかったりしても、前述のような不利益(職場への連絡・欠席判決等)を回避することはできません。実際に受領し、内容を確認した上で適切な対応をとるようにしましょう。
内容証明が届いた場合の対応のポイント
内容証明郵便が届いた場合には、まず次のような対応をとることが基本となります。
- 内容を確認し、文書を保管する(スキャンしておくと後で確認しやすくなります)。
- 相手が主張している事実(不貞行為の内容・期間など)と請求額を整理する。
- 自分の立場を確認する——認める点、否定する点、婚姻関係の破綻の有無、時効の成否など。
- 感情的な表現を避けた返信文を作成し、連絡がつく状態を相手に示す。最初の返信ですべての反論を尽くす必要はありませんが、「連絡がとれる状態」であることを示すことで、職場への連絡などを防ぐ効果があります。
請求額が高額であったり、事実関係に争いがあったりする場合、また、どのように返信すればよいか判断に迷う場合には、弁護士に相談することで方針を整理しやすくなります。
まとめ
不貞慰謝料の内容証明が届いても、返信は法律上の義務ではなく、受け取っただけで支払義務が確定するものでもありません。しかし、無視を続けると職場への連絡が認められる状況が生まれたり、裁判に移行した際に欠席判決となったりするリスクがあります。
届いたらまず内容を確認・保管し、相手の主張を整理した上で、連絡がつく状態を示す返信を行うことが基本的な対応です。
請求額が高額であったり、事実関係に争いがあったりする場合や、返信の内容や今後の交渉方針に迷う場合には、弁護士に相談して方針を立てることをご検討ください。
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この記事の執筆者
寺岡法律事務所
弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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