不貞慰謝料の分割合意で「期限の利益喪失」条項を求められたときの意味と注意点

不貞慰謝料請求に対して、一括で支払いを行うことができない場合には、分割払いの交渉を行うことになります。この時、示談書に期限の利益喪失条項を入れるよう求められることがあります。
このページでは、期限の利益喪失条項の意味や効果、注意点などを解説します。

期限の利益喪失条項

期限の利益喪失条項とは

分割払いは、債務者にとってはそれぞれの支払い期限までは支払いを待ってもらえるという利益(期限の利益)がある状態になります。この場合、1回の支払いが滞っても、それ以降の支払いについては期限前であるため、訴訟などで請求して強制執行を行うことができるのは、滞っている1回分だけになります。
この場合には、訴訟や強制執行に要する費用との兼ね合いで、法的手続きに移行するのが困難になります。

そこで、期限の利益喪失条項を設けます。
「支払いを●回滞った場合」「合計●円の遅滞が発生した場合」などと条件を定めて期限の利益を喪失することを定めた条項を作ります。これによって、条件を満たすとすべての債務が履行期になり、訴訟や強制執行を行うことが可能になります。

分かりやすい言い方をすると、期限の利益喪失条項がある場合には、支払いを怠った時点で一括払いの義務が生じるということになります。

基本的には受け入れることになる

慰謝料を請求する側としては、分割払いに応じる以上は、期限の利益の喪失条項を付けることは一般的です。また、本来は慰謝料は一括で支払うのが原則です。このため、期限の利益を喪失しても本来通り一括払いになるだけなので、実質的には不利益は小さいといえます。
このため、基本的には期限の利益の喪失条項は受け入れることになるのが原則です。

公正証書+強制執行認諾文言には注意

強制執行認諾文言とは

示談書を作成する際に、公正証書にした上で強制執行認諾文言を入れたいと要求されることがあります。

期限の利益を喪失しても、強制執行を行うためには訴訟提起を行う必要があります。ところが、公正証書にした上で強制執行認諾文言を入れておくと、訴訟を行うことなく強制執行を行うことが可能になります。
これと期限の利益喪失条項を入れておくことで、支払いが滞った時点で、直ちに全額について強制執行を行うことが可能になります。

強制執行認諾文言は避けたい

強制執行認諾文言付きの公正証書を作成してしまうと、本来は不可能であった裁判なしでの強制執行が可能になってしまいます。
このため、本来よりも重い負担が発生しますので、できるだけ避けたいところです。
入れるのであれば、大幅な減額などの対価と引き換えにするようにしましょう。

まとめ

期限の利益喪失条項は、不利な条項ではありますが、現実的には受け入れることになります。ただし、公正証書にする場合には重い負担が発生しますので注意するようにしましょう。

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この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
 弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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