不貞慰謝料請求の裁判はどこで行われる?管轄の決まり方を弁護士が解説

不貞慰謝料を請求されたとき、「裁判はどこの裁判所で行われるのか」という点は大きな関心事です。遠方の裁判所で訴訟を起こされると、出頭するだけで時間と費用がかかり、精神的にも負担になります。

このページでは、不貞慰謝料請求の訴訟で管轄がどのように決まるのか、基本的なルールから実務上のポイントまで分かりやすく解説します。訴訟手続きについて不安がある場合は、弁護士に相談されることも選択肢です。

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不貞慰謝料と裁判管轄の基本知識

不貞慰謝料とは

不貞行為とは、配偶者以外の人と性交渉を行うことをいいます。夫婦はお互いに貞操義務を負っており、これに違反する不貞行為は、離婚原因になるだけでなく(民法770条1項1号)、不法行為に基づく損害賠償の対象にもなります(民法709条、710条)。

不貞行為の当事者だけでなく、その相手方(いわゆる浮気相手)も損害賠償義務を負います。この損害賠償義務に基づいて支払うお金を、一般的に「不貞慰謝料」と呼んでいます。

事物管轄とは ── 裁判所の種類の決まり方

事物管轄とは、事件の内容や請求額に応じて、どの種類の裁判所(地方裁判所・簡易裁判所など)が担当するかを決めるルールです。

請求額が140万円以下の事件は簡易裁判所が管轄になり(裁判所法33条)、140万円を超える事件は地方裁判所が管轄になります(裁判所法24条)。

上記のとおり、不貞慰謝料の請求額は300万円以上であることが一般的ですので、不貞慰謝料請求の訴訟は地方裁判所に提起されることがほとんどです。

土地管轄とは ── どの地域の裁判所で裁判をするか

土地管轄とは、同じ種類の裁判所の中で、どの地域の裁判所(たとえば大阪地裁本庁、堺支部、岸和田支部など)が事件を担当するかを決めるルールです。不貞慰謝料の請求は不法行為に基づく損害賠償請求ですので、次のいずれかの場所にある裁判所に管轄が認められます。

被告の住所地(民事訴訟法4条)

訴えられる側(被告)の住所地を管轄する裁判所です。不貞慰謝料の請求を受けた場合、あなたの住所地の裁判所がこれに該当します。被告の住所地は原則的な管轄として認められており、すべての民事訴訟に共通するルールです。

不法行為地(民事訴訟法5条9号)

不法行為が行われた場所を管轄する裁判所です。不貞慰謝料の場合、不貞行為(性交渉)が行われた場所がこれに該当します。たとえば、ホテルや住居など実際に不貞行為が行われた場所の裁判所に管轄が認められます。

義務履行地=原告の住所地(民事訴訟法5条1号)

損害賠償義務の履行地として、被害者(原告)の住所地を管轄する裁判所にも管轄が認められます。不法行為に基づく損害賠償の義務履行地は被害者の住所とされていますので、請求者の住所地の裁判所で訴訟を提起できることになります。

原告が管轄を選べる

上記のとおり、不貞慰謝料請求では複数の裁判所に管轄が認められることが多いです。この場合、原告(請求する側)がどの裁判所に訴訟を提起するかを自由に選ぶことができます。通常は、原告にとって最も便利な自分の住所地で訴訟を提起するケースが多いため、請求される側としては、相手の住所地の裁判所で裁判が行われることを想定しておく必要があります。

実際にはあまり困らないことが多い

管轄のルールを知ると「遠方の裁判所になったらどうしよう」と不安になるかもしれません。しかし、不貞慰謝料の事件では、実際にはそれほど困らないケースが多いです。その理由を解説します。

当事者が地理的に近い場所に住んでいることが多い

不貞行為は、配偶者のある人と相手方が肉体関係を持つことですので、両者は日常的に接触できる距離に居住していることがほとんどです。当然、請求者(配偶者)と請求される側(あなた)の住所も近いことが多くなります。

そのため、原告の住所地で訴訟を提起されたとしても、被告の住所地と同じ裁判所の管轄になるか、近隣の裁判所になることが一般的です。管轄が大きく離れるのは、単身赴任中に不貞行為があった場合や、不貞行為の後にどちらかが引っ越した場合など、限られたケースです。

弁護士のWEB出頭が一般的になっている

以前は、弁護士が裁判所に実際に足を運んで手続を行うのが通常でしたので、遠方の裁判所の事件では交通費や出張日当、宿泊費などが弁護士費用に上乗せされることがありました。

しかし、現在では裁判手続のIT化が進み、民事訴訟の口頭弁論期日や弁論準備手続期日にWEB会議システムを利用して出頭できる運用が広がっています。これにより、弁護士が遠方の裁判所の事件を担当する場合でも、事務所にいながら期日に出席できるため、交通費等の追加費用が大幅に軽減されています。

そのため、相手の住所地で訴訟を提起された場合であっても、以前ほどの経済的負担は生じにくくなっています。

訴訟を提起された場合の対応方針

不貞慰謝料を請求され、相手方から「訴訟を起こす」と言われた場合、裁判手続きの負担が気になって譲歩してしまうことがあります。しかし、上記で解説したとおり、実際には遠方の裁判所まで出向く必要が生じるケースは限られています。

まず、訴訟提起をほのめかされたとしても、それだけで慌てる必要はありません。仮に遠方であっても弁護士のWEB出頭で対応できる場合がほとんどです。訴訟をおそれて不利な条件で示談に応じてしまうよりも、冷静に状況を把握して適切な対応を検討することが重要です。

管轄が遠方になりそうな場合や、訴訟になりそうな場合には、早めに弁護士に相談して見通しを立てておくことをお勧めします。

まとめ

不貞慰謝料請求の訴訟では、被告の住所地、不法行為地、義務履行地(原告の住所地)のいずれかの裁判所に管轄が認められ、原告が自由に選択できます。請求額が300万円以上の場合は地方裁判所が管轄です。

もっとも、不貞慰謝料の事件では当事者が地理的に近い場所に住んでいることが多く、裁判手続のIT化によりWEB出頭も一般的になっています。管轄が遠方であること自体が大きな障害になるケースは減っています。

訴訟をほのめかされて不安を感じている場合でも、管轄の見通しや費用の目安を把握しておけば、冷静に対応できます。訴訟手続きに不安がある場合には、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。

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この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
 弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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