突然届いた「支払督促」に、どう対応すればよいのか分からず不安を感じていませんか。支払督促は、放置すると給与や預金の差押えにつながる可能性がある手続です。しかし、適切な期限内に異議を申し立てれば、通常の裁判手続で反論する機会が確保されます。このページでは、支払督促の仕組みから対応の流れまでを分かりやすく解説します。対応に不安がある場合は、弁護士への相談もご検討ください。
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目次
支払督促の基本的な仕組みと法律上の効果
支払督促とは
支払督促とは、金銭の支払いなど一定の請求について、債権者(お金を請求する側)の申立てに基づき、簡易裁判所の裁判所書記官が発付する書面です(民事訴訟法382条~)。通常の裁判(訴訟)では、原告と被告の双方が主張と証拠を出し合い、裁判所がその内容を審理したうえで判断を下します。しかし、支払督促の手続ではそのような審理は行われません。裁判所書記官は、債権者が提出した申立書の書面上の不備がないかを確認するだけで支払督促を発付します。
つまり、債務者(請求される側)の言い分を聞くことなく、一方的に届くのが支払督促の大きな特徴です。このため、届いた時点では、請求内容が正しいかどうかは裁判所によって判断されていません。
受け取りから2週間以内の異議申立てが最も重要
支払督促を受け取った場合に最も重要なのは、受け取った日から2週間以内に「督促異議」を申し立てることです(民事訴訟法386条2項)。この2週間という期限は厳格に適用されます。
2週間以内に督促異議を申し立てれば、支払督促の手続は通常の訴訟(裁判)に移行します(民事訴訟法395条)。通常訴訟に移行すれば、当事者双方が主張と証拠を出して争うことができるようになります。請求内容に心当たりがない場合はもちろん、金額に争いがある場合や、すでに支払い済みである場合なども、異議を申し立てたうえで裁判の中で反論することが可能です。
異議を出すと通常訴訟に移行する
督促異議が適法に申し立てられると、支払督促の手続は自動的に通常の訴訟手続に移行します。ここからは通常の裁判と同じ流れとなり、原告と被告が、それぞれ自分の主張を書面にまとめ、証拠を提出して争います。
督促異議の申立書には、異議の理由を詳しく書く必要はありません。「異議がある」という趣旨が記載されていれば足ります。理由や反論は、通常訴訟に移行した後に答弁書や準備書面で主張すれば問題ありません。
なお、基礎となる事実自体に争いがない場合でも、督促異議を出すことは認められています。たとえば、不貞行為の事実に争いがなくても、請求されている慰謝料の金額が過大であると考える場合には、異議を申し立てて通常訴訟の中で適正な金額を争うことが可能です。実際には、支払督促で請求される金額が相場より高めに設定されているケースが多いです。
放置すると仮執行宣言を経て強制執行(差押え)に至る
支払督促を受け取ったにもかかわらず、2週間以内に督促異議を申し立てなかった場合、債権者は仮執行宣言の申立てを行うことができます(民事訴訟法391条)。裁判所書記官がこの申立てに基づき「仮執行宣言付支払督促」を発付すると、債権者はそれをもとに強制執行(差押え)を申し立てることが可能になります。
強制執行が行われると、給与の一部が差し押さえられたり、預金口座が差し押さえられたりする場合があります。仮執行宣言付支払督促が届いた後も、受け取りから2週間以内であれば督促異議を申し立てることは可能ですが、この段階でも期限管理が極めて重要です。
言い換えれば、支払督促を放置すると、こちらの言い分を一切主張する機会がないまま、強制執行をされる事態に至ります。
よくある勘違い:支払督促は裁判所が請求内容を認めたものではない
支払督促が届くと、「裁判所が請求を認めた」「支払義務が確定した」と誤解される方が少なくありません。しかし、先に説明したとおり、支払督促は申立書の書面上の形式を確認しただけで発付されるものです。実際に請求の原因となる事実が存在するかどうか、証拠があるかどうかは、裁判所書記官は確認していません。
したがって、支払督促が届いたからといって、請求どおりに支払わなければならないわけではありません。請求内容に争いがある場合は、督促異議を申し立てて通常訴訟の中で争うことが、法律上予定されている正当な対応です。
一方で、異議を出さずに放置してしまうと、本来は支払義務がなかったとしても、強制執行が可能な状態になってしまいます。この点が支払督促の制度において最も注意すべきところです。
仮執行宣言付支払督促が届いた場合の対応
仮に最初の支払督促への異議申立てを逃してしまい、「仮執行宣言付支払督促」が届いた場合でも、まだ対応の余地はあります。仮執行宣言付支払督促を受け取ってから2週間以内であれば、督促異議を申し立てることが可能です(民事訴訟法393条)。ただし、仮執行宣言が付されているため、異議を申し立てても強制執行が直ちに停止されるわけではなく、別途「強制執行停止の申立て」が必要になる場合があります。
この段階になると手続が複雑になるため、できる限り最初の支払督促が届いた時点で、速やかに督促異議を申し立てることが重要です。
支払督促が届いたときに取るべき3つの対応
期限と請求内容をすぐに確認する
支払督促が届いたら、まず異議申立ての期限を確認してください。受け取った日から2週間が期限です。あわせて、誰からのどのような請求なのか、請求金額はいくらかを確認し、内容を正確に把握します。
期限内に督促異議を提出する
期限を確認したら、督促異議の申立書を作成して、期限内に裁判所へ提出します。異議申立書に詳しい理由を記載する必要はなく、異議がある旨を記載すれば足ります。請求内容に心当たりがある場合でも、金額や内容に争いがある場合は、遠慮なく異議を申し立ててかまいません。
通常訴訟に備えて準備を始める
督促異議を提出すると通常の裁判に移行します。相手方の主張内容を整理し、自分側の反論を準備するとともに、関連する証拠(メールやメッセージのやり取り、書面など)の収集・保存を行いましょう。裁判の進め方や主張の組み立てに不安がある場合は、弁護士に相談することで、見通しを把握しやすくなります。
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まとめ
支払督促は、債権者の申立てにより裁判所書記官が書面審査のみで発付するものであり、届いた時点で請求内容の正当性が認定されたわけではありません。受け取ってから2週間以内に督促異議を申し立てれば、通常訴訟に移行して主張・証拠をもとに争う機会が確保されます。一方、放置すると仮執行宣言を経て強制執行(差押え)に至る可能性があります。まずは期限を確認し、速やかに督促異議を提出することが最も重要な対応です。手続の進め方や主張内容の組み立てに不安がある場合は、弁護士に相談することで適切な見通しを立てることができます。
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この記事の執筆者
寺岡法律事務所
弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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