民事裁判の手続きの中で、裁判官から突然「和解を検討してみませんか」と言われることがあります。裁判所が和解を勧めることには法律上の根拠があり、実際に多くの民事訴訟が和解によって終結しています。
このページでは、和解の勧試とは何か、その意味や法的効果、勧められた場合の対応について分かりやすく解説します。裁判手続きで困っている方は弁護士に相談してください。
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目次
裁判所が和解を勧める制度の仕組みと法的効果
和解の勧試とは
和解の勧試(わかいかんし)とは、裁判官が訴訟の途中で当事者に対して和解を試みることをいいます。民事訴訟法89条は「裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる」と定めています。
つまり、訴訟が始まったばかりの段階でも、審理が進んだ段階でも、裁判官はいつでも和解を提案できるということです。裁判官が「お話し合いの余地はありますか」「和解を検討されてはいかがですか」と声をかけるのは、この法律に基づく正式な手続きの一つです。
なお、和解の勧試はあくまで裁判官が和解の検討を促すものであり、当事者に和解を強制する効力はありません。和解に応じるかどうかは、当事者の自由な判断に委ねられています。
訴訟上の和解は確定判決と同じ効力を持つ
訴訟の中で当事者双方が合意に至り和解が成立すると、その内容は裁判所の「和解調書」に記載されます。民事訴訟法267条は「和解(中略)を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する」と定めています。
これは非常に重要な意味を持ちます。和解調書に記載された内容は確定判決と同じ効力を持つため、たとえば金銭の支払いについて合意したにもかかわらず相手方がこれを守らない場合には、和解調書に基づいて強制執行を申し立てることができます。
また、和解が成立すると訴訟は終了しますので、判決の場合のように上訴(控訴や上告)で争われるリスクがなくなり、紛争を確実に終結させることができます。
和解を勧められるタイミングと裁判官の心証
和解の勧試が行われるタイミングとして典型的なのは、争点整理が終わった後と証人尋問の後の2つです。
他にも、訴訟の初期段階や途中でも和解の勧試が行われることは珍しくありません。この場面では、具体的な和解を提案するというよりは、話し合いの余地があるか否かの確認という意味合いが大きくなります。
争点整理後の和解勧試
双方の主張が出そろった段階では、裁判官は事件の大まかな見通しを持っていることが多いです。この時点で和解が勧められる場合、裁判官がその時点での心証(判決になった場合の見通し)をある程度念頭に置いて和解を提案していることがあります。ただし、その後の証拠調べによって結論が変わる余地は残されています。
証人尋問後の和解勧試
証人尋問が終わった段階は、訴訟の終盤にあたります。この時点では、裁判官の心証はほぼ固まっていることが多く、和解の席で裁判官がその心証を開示することもあります。尋問後に提示される和解案は、判決の結論にかなり近い内容になります。そのため、この段階で提示された和解案の内容は、慎重に検討する必要があります。
和解を拒否すると裁判で不利になるわけではない
「裁判所から和解を勧められたのに断ると、裁判官の心証が悪くなって判決で不利になるのではないか」と心配される方は少なくありません。しかし、和解を拒否したことそれ自体が判決の内容に影響を与えることは、制度上はありません。
裁判官は、証拠と法律に基づいて判決を下す立場にあります。和解の諾否は当事者の自由であり、拒否したからといって報復的に不利な判決を下すことは、裁判官としての職責に反する行為です。裁判官にとって最も避けたいのは、上級審で自分の判決が覆されることであるため、感情に左右された判断はしにくい構造になっています。
ただし、和解案の内容は裁判官がその時点で妥当と考える解決案であることが多い点には注意が必要です。和解案を拒否しても判決で大きく異なる結論が出るとは限らず、和解案に近い判決が下される可能性が高いです。特に尋問後に示された和解案であれば、判決の結論とほぼ同じ内容である場合が少なくありません。
和解を勧められたときにとるべき対応
裁判所から和解を勧められた場合、まず重要なのは、和解案の内容を冷静に検討することです。「和解=妥協」「和解=負け」と捉えてしまう方もいますが、実際には和解には判決にはない柔軟性があります。
たとえば、分割払いの条件を設定したり、謝罪条項を盛り込んだり、口外禁止条項(和解内容を第三者に知らせない約束)を入れたりすることが可能です。これらは判決では実現できません。
また、判決で決まった内容よりも、和解で決まった内容の方が、任意の履行が得られやすいという傾向があります。
和解に応じるか拒否するかの判断は、訴訟の見通し、和解案の内容、解決までにかかる時間や費用、精神的な負担などを総合的に考慮して決めるべきものです。判断に迷う場合には、弁護士と十分に相談して方針を決めることをお勧めします。
まとめ
和解の勧試は、民事訴訟法89条に基づいて裁判官が当事者に和解を促す手続きであり、訴訟のどの段階でも行われる可能性があります。訴訟上の和解が成立すると、その内容は確定判決と同一の効力を持ち、強制執行も可能になります。和解を拒否したこと自体が判決に不利に働くことは制度上ありませんが、和解案は裁判官の心証を反映していることが多いため、その内容は慎重に検討する価値があります。和解には判決にはない柔軟な条件設定が可能であり、紛争の早期解決というメリットもあります。
訴訟手続きで困ったときは、ご自身の状況を弁護士に相談して、専門的な助言を受けることをお勧めします。
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この記事の執筆者
寺岡法律事務所
弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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