荷主から依頼を受けて荷物を受け取りに向かったにもかかわらず、現場に到着してから突然キャンセルされた場合、車両の手配や人員の確保、燃料費などの損失が発生します。
このページでは、このような場面で運送事業者がキャンセル料や配送料を請求できるかどうかについて、法律上の根拠を交えて解説します。具体的な請求については、弁護士にご相談ください。
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目次
運送契約とキャンセルに関する法律の仕組み
運送契約とは
運送契約とは、運送人(運送事業者)が荷送人(荷主)から荷物を受け取り、これを目的地まで運んで荷受人に引き渡すことを約束し、荷送人がその対価として運賃を支払うことを約束する契約です(商法第570条)。
また、運送契約は「請負契約」の一種であるため、性質上可能な範囲で民法の請負の規定が適用されます。
荷主には運送を中止する権利がある
商法上、荷送人には運送品の処分権が認められており、運送の中止や返送、届け先の変更などを運送人に指図する権利があります(商法第580条)。同時に、この場合には、運送人は、既にした運送の割合に応じた運送賃、付随の費用、立替金及びその処分によって生じた費用の弁済を請求することができると定められています。
つまり、運送の途中で配送の必要が無くなった場合には、キャンセルをすることができる代わりに、そこまでの作業量に応じて費用を支払う義務があるということになります。
標準貨物自動車運送約款に基づく中止手数料
多くのトラック運送事業者は、国土交通大臣が定めた「標準貨物自動車運送約款」を採用しています(貨物自動車運送事業法第10条第3項)。この約款は、運送事業者と荷主の間の運送契約における基本的なルールを定めたもので、キャンセル時の中止手数料についても規定があります。
標準貨物自動車運送約款(令和8年時点)の第38条では、荷送人の都合で運送が中止された場合、運送事業者は中止手数料を請求できると定められています。具体的な中止手数料の割合は以下のとおりです。
集貨予定日時の前々日に中止の指図をしたとき:運賃・料金等の20%以内
集貨予定日時の前日に中止の指図をしたとき:運賃・料金等の30%以内
集貨予定日時の当日に中止の指図をしたとき:運賃・料金等の50%以内
キャンセル料を請求できないことが契約上明示されている場合
キャンセル料が発生しないと明示されている場合には原則として請求することができません。ただし、このような規定は取適法(旧下請法)に違反する可能性があります。このため、キャンセル料の発生を否定する規定が無効であるとして、法律の原則通りキャンセル料を請求する余地があります。
キャンセルされた場合に運送事業者がとるべき対応
まず契約内容を確認する
荷主からキャンセルを告げられた場合、まず確認すべきは、自社が採用している運送約款や、荷主との間で交わした個別の運送契約書の内容です。標準貨物自動車運送約款を採用している場合は、前述の中止手数料の規定が適用されます。独自の約款や契約書を使用している場合は、キャンセルに関する条項を確認してください。
キャンセルの経緯と損害を記録する
キャンセル料を請求する場合、キャンセルがいつ・どのような形で通知されたかを記録しておくことが重要です。電話でのキャンセルの場合は、通話日時と内容をメモに残し、可能であればメールやFAXなどの書面で確認をとっておきましょう。また、すでに発生した費用(燃料費、高速道路料金、ドライバーの稼働時間など)を具体的に把握しておくことも、後の請求をスムーズに進めるために大切です。
請求書を発行し、荷主に通知する
約款や契約に基づくキャンセル料、または実際に生じた損害について、請求書を作成して荷主に通知します。請求の根拠(約款の条項や民法の規定)を明示し、金額の算定根拠も示すことで、荷主の理解を得やすくなります。荷主が支払いに応じない場合は、内容証明郵便による請求や、弁護士への相談を検討してください。
まとめ
荷主から配送のキャンセルを告げられた場合でも、運送事業者はキャンセル料や損害賠償を請求できる場合があります。標準貨物自動車運送約款を採用している場合は、同約款第38条の中止手数料の規定が適用され、キャンセルの時期に応じて運賃・料金等の20%から50%以内の手数料を請求できます。約款の適用がない場合でも、民法第641条に基づき、運送事業者に生じた損害の賠償を荷主に求めることが可能です。
ただし、請求の可否や金額は、契約の内容、キャンセルの経緯、実際に発生した損害の額などによって異なります。荷主との交渉がうまくいかない場合や、高額な損害が発生している場合は、法的な観点から適切な請求額や手続きを検討するために、弁護士に相談されることをおすすめします。
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この記事の執筆者
寺岡法律事務所
弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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