荷主による長時間待機と待機費用の請求|下請法(取適法)違反の可能性と運送事業者がとるべき対応

荷主の都合で長時間の待機を強いられているにもかかわらず、待機費用を支払ってもらえない。このような悩みを抱える運送事業者は少なくありません。待機時間に関する費用負担の問題は、独占禁止法や下請法(2026年1月以降は「取適法」)によって規定されていますし、標準貨物自動車運送約款でも定められています。

本ページでは、物流事業における長時間待機の問題について解説します。具体的な状況に応じた判断が必要な場合には、弁護士への相談もご検討ください。

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荷主の長時間待機に関する法律の仕組み

「荷待ち時間」とは

荷待ち時間とは、運送事業者(ドライバー)が荷主の指定する場所に到着した後、荷物の積み込みや荷卸しが開始されるまでに待機させられる時間のことを指します。荷主の都合による出発時間・到着時間の変更に伴い、運送事業者に待機時間が発生するケースが典型例です。

荷待ち時間は、ドライバーの拘束時間に含まれるため、人件費などのコストが運送事業者側に発生します。この時間が長くなるほど、ドライバーの労働環境が悪化するだけでなく、他の運行に充てるべき時間が圧迫されるという問題があります。

標準貨物自動車運送約款でも規定されている

国土交通省が公表している標準貨物自動車運送約款(平成29年(2017年)11月改定以降のもの)でも、荷待ちに対する対価として「待機時間料」などが定められています。

標準貨物自動車運送約款は、あくまでも国土交通省が作成して公表している契約書案に過ぎず、これ自体には法的拘束力はありません。
しかし、一般的には標準貨物自動車運送約款で契約締結されていることが多く、契約書を確認してみると、待機時間料を請求できる構造になっていることが多いので確認するようにしましょう。

独占禁止法による荷主の規制

荷待ちによって、物流事業者に運転手の人件費、待機時間料等の追加費用が生じたにもかかわらず、荷主が当該費用を負担しない場合には、優越的地位の濫用として独占禁止法違反になる可能性があります。
(「荷待ち」については、公正取引委員会の調査項目にもなっています。)

2026年1月施行の取適法(旧下請法)による新たな規制

令和8年(2026年)1月1日から、従来の下請法(下請代金支払遅延等防止法)が改正・施行され、「中小受託取引適正化法」(通称「取適法」)となりました。この改正は、名称変更にとどまらず、取引の適正化に向けた大幅な制度強化を含むものです。

最も重要な変更点の一つが、「特定運送委託」が取適法の対象取引に追加されたことです。特定運送委託とは、事業者が販売する物品や製造・修理を請け負った物品を取引の相手方に運送する場合に、その運送業務を他の事業者に委託する取引を指します。これにより、従来は独占禁止法の枠組みでしか規制できなかった荷主から運送事業者への委託取引が、取適法による直接的な規制の対象となりました。

取適法で禁止される荷主の行為

取適法の適用対象となる取引において、委託事業者(荷主)が運送事業者(中小受託事業者)に対して行う以下の行為は、禁止行為に該当する可能性があります。

まず、荷役・荷待ちを無償で行わせることは「不当な経済上の利益の提供要請」に該当しえます。運送の役務を提供させることに加えて、無償で荷積み・荷下ろし・倉庫内作業等の運送以外の役務を提供させることが禁止の対象です。

次に、配車後のキャンセルやルート変更に伴うコストを支払わないことも問題となります。荷受人の都合で待機が発生しても運賃に反映させない場合も同様です。

さらに、取適法では、中小受託事業者(運送事業者)からの価格協議の求めに応じず、一方的に代金を決定することが新たに禁止されました。待機時間料の請求について荷主が協議のテーブルにつかないこと自体が違反行為となりえます。

長時間待機への具体的な対応手順

長時間待機の問題に対処するためには、以下の手順で進めることが考えられます。

第一に、待機時間の記録を正確に残すことが重要です。到着時刻、積み込み・荷卸し開始時刻、終了時刻などを日報やデジタルツールで記録してください。客観的な記録は、費用請求の根拠となるだけでなく、紛争時の証拠としても有用です。

第二に、契約の見直しを行いましょう。運送契約において、待機時間料の発生条件(何分以上の待機で料金が発生するか)や金額の算定方法を明確に定めることが望ましいです。標準貨物自動車運送約款や標準的な運賃を参考に、具体的な待機時間料を設定しておくと、請求時のトラブルを防ぐことができます。

第三に、荷主に対して書面で待機時間料の支払いを求める協議を申し入れてください。取適法の下では、荷主は協議の求めに誠実に応じる義務がありますので、書面での申入れは法的に重要な意味を持ちます。

荷主との協議がうまくいかない場合や、取引停止の報復を受けた場合には、公正取引委員会、中小企業庁の「下請かけこみ寺」、国土交通省の「トラック・物流Gメン」などへの相談を検討してください。匿名での情報提供を受け付ける仕組みも整備されています。

まとめ

荷主の都合による長時間の待機は、運送事業者が一方的に負担すべきものではありません。独占禁止法や取適法(旧下請法)により、荷主に対して待機時間の費用負担を求める法的根拠は確立されています。待機時間の正確な記録、契約条件の見直し、そして荷主への書面による協議の申入れが、問題解決の基本的なステップです。

法律上の権利を適切に行使するために、具体的な対応についてお困りの場合は、運送業に詳しい弁護士への相談をお勧めします。

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この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
 弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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