取引先が倒産しそうなときの売掛金回収

取引先の支払いが遅れ始めたり、資金繰り悪化の噂が出たりすると、どのように売掛金を回収するかの不安が発生します。
倒産の直前は、急いで回収したつもりでも、後に破産管財人から返還を求められるなどのリスクもあります。
このページでは、倒産リスクが高まった場面での回収や予防措置について解説します。

倒産前に検討すべき回収手段と法的な注意点

相殺とは

相殺とは、当事者双方が互いに債権・債務を持つときに、一定の要件を満たせば、意思表示により対当額で債権を消滅させる仕組みです(民法505条以下)。
分かりやすく言うと、売掛金債権と買掛金債務がある場合に、両方を消滅させることができるというものです。相殺が成立すれば、実質的に売掛金を回収できます。

相殺を実現するためには、両方の債権に弁済期が到来している必要があります(民法505条)。例えば、買掛金債務の履行期は到来しているが、売掛金債権の履行期はまだ到来していないような場合は、相殺をすることができず、買掛金債務のみを支払う義務があります。そのような場合に備えて、もともとの契約書に、どれかの売掛金の支払いが滞ったり、信用不安が発生したりした場合には、すべての売掛金について履行期が到来するなどの、期限の利益の喪失の定めを置くことが有効です。このような定めを置いておくことで、信用不安が生じているのに買掛金だけを支払うという事態を予防することができます。

担保を取ると優先回収できる可能性がある

担保(抵当権など)を設定しておくことで、優先的に債権を回収することも可能です。しかし、倒産直前に新しく担保を取っても、無効になることがあります。
担保を取る場合には、契約当初など信用不安が生じる前に事前に設定しておく必要があります。

保証(人的担保)で代表者などに請求できるようにする

保証契約を締結すると、主たる債務者(会社)が支払わないときに、保証人(代表者など)に請求することができます(民法446条)。逆に言えば、保証契約を締結していなければ代表者などに請求することはできません。なお、保証契約は書面(電磁的記録を含む)で締結しなければ効力を生じません(民法446条2項・3項)。
もちろん、信用不安が生じている状況で単に保証契約を求めても応じる可能性は低いです。支払猶予や分割に応じる対価として、保証契約を締結させることが考えられます。

倒産直前にできることは少ない

倒産直前には、債権者間の平等の要請が働くため、一部の債権者だけが債権を優先的に回収できる手段は限られています。
このページで紹介している方法を参考に、もともとの契約締結時に、債権の回収可能性を高めたり、適切な与信管理をするなどの予防策を講じていくようにしましょう。

まとめ

取引先が倒産しそうなときの売掛金回収は、破産手続で取り戻される可能性があるなど、できる方法は限られます。このため、どうしても傷を小さくする手段にとどまります。
普段から、信用不安時に対応ができるような契約書ひな形を用意するなど準備を行うようにしましょう。

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この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
 弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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