安全性の分析

会社が倒産せずに継続できるか維持できるか否かの指標として「安全性」の指標があります。
これはさらに短期的な安全性と長期的な安全性に分けられます。
短期的な安全性を流動性,長期的な安全性を単に安全性という場合があります。

主に貸借対照表の数字で分析します。

1 短期的な安全性(流動性)

短期的な支払い能力(資金繰りの余裕)を示す指標です。
問題がある場合には「支払期限が到来した債務の支払いができなくて黒字倒産」という危険があります。 

⑴ 流動比率

流動資産÷流動負債(×100%)

流動負債(短期に期限が到来する負債)を,流動資産(短期間で換価できる資産)で支払う能力についての指標です。

業態にもよりますが,100%を割っている場合には資産状況に問題があり改善の必要があります。
一般的には120%程度を維持したいですが,日々売り上げが入る業種(コンビニ,飲食店など)の場合は60%程度でも足りる場合があります。

ただし,流動資産の中には現金化に時間を要したり,短期間で現金化しようとすると安くしか売れない資産もあるため,100%を超えていれば絶対に安全というわけではありません。

⑵ 当座比率

当座資産÷流動負債(×100%)

流動負債(短期に期限が到来する負債)を,当座資産(直ちに換価できる資産。現金預金,売掛金など)で支払う能力がどの程度あるかという指標です。

適切な数値は業態によって大きく異なりますが,90%程度を維持できていればひとまず安全といえます。

2 長期的な安全性(安全性)

長期的な支払い能力を示す指標です。
問題がある場合には徐々に倒産に近づいていくことになります。

 ⑴ 自己資本比率

自己資本÷総資本(×100%)

総資本(貸借対照表の左側)のうち,どれくらいを自己資本でまかなえているかという割合です。
高いほど安全であるといえます。
積極的な設備投資とそのための借り入れを行ったような場合にも数字が低くなるため,低いからといって直ちに経営状態が悪いということにはなりません

設備投資を行っていないのに数値が悪化しているなどのように,経営方針や認識とギャップがある場合には問題があるといえます。

⑵ 固定比率

固定資産÷自己資本(×100%)

固定資産のうち,どれくらいを自己資本でまかなえているかという割合です。
高いほど安全であるといえます。

長期にわたって保有する固定資産は自己資本でまかなうことが望ましいという考え方に基づいた指標です。
言い方を変えれば,運転資金は借り入れでまかなって問題がないという考え方になります。

積極的な設備投資とそのための借り入れを行ったような場合にも数字が低くなるため,低いからといって直ちに経営状態が悪いということではないという点は自己資本比率と同様です。

⑶ 固定長期適合率

固定資産÷(固定負債+自己資本)(×100%)

固定資産のうち,どれくらいを固定負債と自己資本でまかなえているかという割合です。

固定資産は長期資金(自己資本だけでなく固定負債を含めたもの)で調達すればよいという考え方に基づいています。
100%を割っている場合には,固定資産(長期間で投資を回収する資産)を流動負債(短期間で返済しなければならない負債)でまかなっていることになり,問題があるといえます。