退職代行業者から突然連絡が来ると、会社側としては「誰と連絡すべきか」「貸与物はどうするのか」「給与どうするのか」という混乱が発生します。
結論としては、①連絡窓口は本人宛の郵便に一本化して記録を残す、②貸与物返還は郵便で請求する、③賃金は原則どおり支払う、という対応を行うべきです。
このページでは、退職代行業者からの連絡が届いた時の会社の対応を解説します。
目次
法制度と会社の対応
退職代行とは
退職代行は、本人に代わって「退職の意思表示を会社へ伝える」サービスです。
退職代行業者ができるのは、代わりに郵便を送る行為までであり、それ以上のことはできません。
弁護士でない業者が、未払残業代・退職金・慰謝料など請求をしている場合にはすると、非弁行為(弁護士法72条)であり犯罪です(弁護士法77条3号)。
会社としては、退職代行業者から未払い残業代の請求などがあってもこれに対応してはいけません。特に、労働者の口座以外にこれらの支払いを行うことは絶対に行ってはいけません。
連絡窓口は「本人宛+書面(記録化)」
最初に、社内の連絡窓口を人事・総務(または法務)に一本化し、現場が個別に電話・SNS等で対応しないルールにします。口頭は行き違いが起きやすいので、原則メールや書面でやり取りし、受領日・内容・担当者を記録します。
連絡の相手方は退職代行業者ではなく本人とします。弁護士でない退職代行業者との合意では、後から労働者とトラブルになる危険があります。
退職通知を行った者が弁護士であれば、その弁護士を窓口とします。この場合は、逆に本人に直接連絡を取ってはいけません。
貸与物返還は請求できるが、賃金支払いを拒むことはできない
貸与物(PC・スマホ・社員証・鍵・制服・資料など)は会社の所有物なので、会社は返還を求められます。返還対象のリストを作り、返還期限・返送方法などを文書で案内します。
「返ってくるまで給与を払わない」「給与から差し引く」ことはできません。賃金は全額払いが原則であり、法令・労使協定に根拠のない控除はできません。貸与物未返還の問題は、返還請求や損害賠償など別の枠組みで処理する必要があります。
具体例でイメージをしましょう
退職代行業者から「即日退職」「未払残業代請求」の連絡、貸与PCが未返還
X社の従業員Zについて、退職代行業者Yから「Zは本日付で退職する。100万円の未払い残業代があるので当社指定の口座に支払って下さい。」と内容証明郵便が届きました。
Zは出社せず、ノートPCと入館カードを所持したままです。
X社としては、残業代は適切に支払ってきたつもりであり未払いは発生していないつもりです。
賃金は適切に支払い、返還請求をしつつ、必要であれば訴訟準備
X社では、まずは粛々とZの最終の賃金額を計算し、支払いをします。同時に、Z宛に郵便で貸与PCと入館カードの返還を求めます。
Zからは、「退職代行業者に依頼しているからそちらに連絡してほしい」と連絡がありましたが、X社としては「Yは弁護士ではないので、Yと交渉することはできない」と回答します。
X社内で検討したところ、貸与PCのデータや入管カードのデータは外部から消去できるため、返却がされなくても重大なセキュリティリスクがないと判断しました。そこで、返却を求める訴訟は行わないものの、Zから未払い残業代を求める訴訟があれば、反訴で返還請求を行うこととして、資料を保存しておくこととしました。
まとめ
退職代行を使用するかどうかは労働者の自由ですが、中には非弁行為を行っている悪質な業者が存在します。
そのような業者との対応を誤った場合には、せっかく支払った賃金が労働者に届かなかったり、二重払いの危険を負うこともあります。
退職代行からの連絡があった場合には、弁護士かどうかを確認した上で、適切な対応を行いましょう。
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この記事の執筆者
寺岡法律事務所
弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
