代理人が弁護士ではないときはどうすればよいですか?|不貞慰謝料請求のよくある質問

「代理人」と名乗る人物が交渉してくるものの、その人が弁護士ではないことがあります。弁護士以外の者が慰謝料の示談交渉を代理することは、法律上認められていません。にもかかわらず交渉に応じてしまうと、合意が無効になったり二重払いになってしまう危険があります。

このページでは、弁護士ではない代理人から請求を受けた場合の法的なリスクと、具体的な対処法を解説します。対応に迷う場合には、弁護士への相談もご検討ください。

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弁護士以外の「代理人」と不貞慰謝料請求に関する法律知識

代理人とは

代理人とは、本人に代わって意思表示を行う権限(代理権)を与えられた人のことです。たとえば、慰謝料の金額交渉や和解の合意といった法律行為を、本人の代わりに行います。

代理権を持つ者が行った法律行為の効果は、本人に帰属します。つまり、正当な代理人が結んだ和解は、本人が結んだ和解と同じ効力を持ちます(民法99条1項)。

不貞慰謝料の示談交渉は弁護士にしかできない

不貞慰謝料の請求は、すでに発生している法的な紛争です。このような紛争について、代理して交渉を行うことは「法律事務」にあたり、弁護士以外の者が取り扱うことは弁護士法72条によって禁止されています。これを「非弁行為(ひべんこうい)」と呼びます。

弁護士法72条は、弁護士以外が法律事務の代理を行うことを禁止しています。その趣旨は、法律の専門知識を持ち、職務上の規律や懲戒制度に服する弁護士に限定することで、依頼者や相手方の利益を守り、法的紛争を適正に解決することにあります。

弁護士ではない者が慰謝料請求の代理人として交渉を行っている場合、その行為は弁護士法72条に違反する違法行為に該当します。

行政書士や司法書士でも慰謝料交渉の代理はできない

法律系の資格として行政書士や司法書士が知られていますが、これらの資格があるからといって、不貞慰謝料の交渉を代理できるわけではありません。

行政書士の場合

行政書士の業務は、官公署に提出する書類やその他権利義務に関する書類の作成が中心です(行政書士法1条の3)。法律事件の代理を行う権限はありません。

実務上、「交渉書類の代筆をしているだけだ」と主張して示談交渉に関与する行政書士がいますが、実質的に交渉を行っているのであれば、弁護士法72条に違反する非弁行為にあたります。

司法書士の場合

司法書士の主な業務は、登記や供託に関する手続の代理です(司法書士法3条)。原則として法律事件の代理を行うことはできません。

ただし、一定の要件を満たした認定司法書士であれば、簡易裁判所の管轄に属する民事事件(訴額140万円以下)について代理することが認められています(司法書士法3条1項6号、7号、2項)。しかし、不貞慰謝料の請求額は300万円程度から主張されることが多く、140万円を超えるため、認定司法書士であっても取り扱うことはできません。

弁護士ではない代理人と交渉することの危険

合意が無効になり二重払いの危険がある

弁護士資格のない者が代理人として交渉し、和解に至ったとしても、その和解の効力が本人に及ばないおそれがあります。この場合、後日あらためて本人から慰謝料を請求され、結果として二重に支払う羽目になる危険があります。

慰謝料が本人に届かない危険がある

非弁行為を行う者のなかには、慰謝料の振込先として自分名義の口座を指定するケースがあります。このような場合、支払った慰謝料が請求者本人に渡らず、代理人と称する人物に持ち逃げされるおそれがあります。また、不当に高額な報酬を差し引かれることもあり、せっかく支払った慰謝料が本来の目的を果たさない危険があります。

違法な交渉により紛争が拡大する危険がある

弁護士には弁護士職務基本規程をはじめとする職務上の規律や、弁護士会による懲戒制度が設けられています。そのため、弁護士が相手方として交渉する場合には、一定の枠内で適正な交渉が行われることが期待できます。

一方で、資格のない者が代理人を名乗る場合には、こうした規律が働きません。「応じなければ職場に連絡する」といった脅迫的な要求や、不当に高額な慰謝料の請求など、違法な交渉が行われ、紛争がかえって拡大する危険があります。

弁護士ではない代理人から請求を受けたときの対処法

弁護士ではない人物から不貞慰謝料を請求された場合には、以下の手順で対応することが考えられます。

相手が弁護士かどうかを確認する

まず、請求書や通知書の差出人が弁護士であるかを確認します。日本弁護士連合会や都道府県弁護士会のウェブサイトには弁護士検索ページがあり、氏名や事務所の住所で検索することができます。請求書に記載されている情報と一致するかを照合してください。弁護士でないことが確認できた場合は、その人物に交渉代理の権限がない可能性が高いと判断できます。

資格団体へ通報する

差出人が行政書士や司法書士を名乗っている場合には、それぞれの資格団体(行政書士会や司法書士会)に通報することが考えられます。各会の会員検索システムで登録情報を確認し、その上で非弁行為に該当する可能性がある旨を連絡します。

本人との直接交渉に切り替える

弁護士でない者を代理人として認めることはできないため、請求者本人と直接交渉するようにします。交渉の窓口を本人または弁護士に限定する旨を書面で伝えましょう。
なお、弁護士ではない代理人による代理は無効なので、連絡先を代理人に指定されていても無視して本人に連絡してかまいません。

やりとりは書面で記録を残す

無資格者が関与する場合には、脅迫的な言動が行われることもあります。電話での交渉は避け、書面(内容証明郵便など)でやりとりを行い、記録を残しておくことが重要です。万が一紛争が拡大した場合にも、書面の記録は有力な証拠となります。

弁護士への相談・依頼を検討する

無資格者が介入している場合、相手は弁護士が関与していないことに乗じて不当な交渉をしてくることがあります。ご自身で対応することに不安がある場合は、弁護士に相談または依頼することで、無資格者を排除し、適正な手続きで解決を図ることが可能です。

まとめ

弁護士ではない代理人から不貞慰謝料を請求された場合のポイントは、次のとおりです。不貞慰謝料のような法律事件の交渉代理は弁護士にしか認められておらず、行政書士や司法書士であっても当然に代理できるわけではありません(弁護士法72条)。弁護士でない者との交渉に応じてしまうと、合意が無効になる、二重払いになる、慰謝料が本人に届かないなどのリスクがあります。まずは相手が弁護士であるかを確認し、弁護士でない場合には交渉の窓口を本人または弁護士に限定するとともに、やりとりは書面で記録に残すことが重要です。

無資格者からの違法な交渉に困っている場合には、弁護士に相談されることをお勧めします。弁護士が代理人として介入することで、無資格者を排除し、適正な手続きのもとで紛争の解決を図ることができます。

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この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
 弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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