取引先から売掛金が支払われないとき、手段の選択を誤ると、回収が遅れたり、不要な手続きで時間を浪費することがあります。売掛金回収は、①相手に支払いを促す、②裁判手続で権利を確定させる、③必要なら差押え等で回収する、という順番で考えると分かりやすくなります。
代表的な4つの手段の特徴と使い分けを解説します。
4つの手段は役割が違う(通知→債務名義→執行)
売掛金の回収手段は、任意の支払いを促す手段、債権を法的に確定させる手段、強制的に回収する手段に分かれます。強制的に回収するには、債務名義(債務の存在を法的に確定させる書面)を得る必要があり、いきなり差押えをすることはできません。
内容証明郵便とは
内容証明は、「いつ・どんな内容の文書を・誰から誰へ差し出したか」を郵便局が証明する制度です。売掛金回収では、⑴請求の事実を客観的に残す、⑵交渉の入口として相手にプレッシャーを与える、という意味があります。
また、消滅時効が迫っているときは「催告」により時効完成が最長6か月猶予されます(ただし猶予に過ぎず、その間に訴訟提起等を検討する必要があります)。
限界:内容証明だけで相手の財産を差し押さえたり、支払いを強制したりはできません(あくまで通知や証拠化の手段です)。
支払督促とは
支払督促は、金銭などの一定の請求について、簡易裁判所で書面審査を中心に進む手続です。申立てがあると裁判所書記官が審査し、支払督促が発付されます。債務者(相手)は支払督促を受け取ってから2週間以内に督促異議を出すことができます。異議が出ると通常訴訟に移行します。
相手が異議を出さなければ、次は仮執行宣言の申立てを行います。仮執行宣言付支払督促に基づいて強制執行(差押え等)に進むことができます。
向いている場面:請求額や契約関係が比較的明確で、相手が本格的な争いをしない(または放置される)と見込まれるとき。
注意点:相手が異議を出すと訴訟に移行します。相手が争う可能性がある場面では最初から訴訟を行う方が良いといえます。
訴訟とは
訴訟は、裁判所で主張・立証を行い、判決または裁判上の和解などで請求権(債権)の存否や内容を確定させる手続です。
回収の観点で重要なのは、判決や和解調書などが債務名義となり、相手が任意に払わない場合には強制執行が可能になる点です。ただし、判決や和解に基づいて任意の支払いがされることが多く、強制執行に移行することは多くはありません。
向いている場面:相手が支払義務を争う可能性がある場合。
注意点:支払督促より時間がかかりやすく、手続きも複雑であるため、多くの場合は弁護士による代理が必須になります。
強制執行
強制執行は、相手が払わないときに、相手の預貯金・売掛金・給与などを差し押さえて回収する手続です。申立てには債務名義(判決や和解調書)が必要になります。
注意点:相手の財産(銀行口座、勤務先、取引先、不動産など)が分からないと、差押え先を特定できず空振りになり得ます。
まとめ
売掛金の回収手段は複数ありますが、どれか一つだけで完結するものではなく、これらの手段を組み合わせて実現することになります。また、取引開始時から、未払いが発生した場合の対応や、傷が大きくならないための与信管理なども重要になります。
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この記事の執筆者
寺岡法律事務所
弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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