不貞行為が会社にばれたら懲戒処分される?法的な視点から解説

不貞慰謝料を請求されたことをきっかけに、不倫の事実が勤務先に知られてしまうケースがあります。「会社をクビになるのではないか」「減給や降格になるのではないか」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

このページでは、不貞行為を理由に会社から懲戒処分を受ける可能性があるのかどうか、法律の仕組みや裁判例の傾向をもとに分かりやすく解説します。

不安な場合には、弁護士に相談されることをおすすめします。

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不貞行為と懲戒処分の関係を法的に整理する

懲戒処分とは

懲戒処分とは、従業員が就業規則に違反したり、企業秩序を乱す行為をした場合に、会社が制裁として課す処分のことです。懲戒処分にはいくつかの種類があり、一般に、戒告(厳重注意)、けん責(始末書の提出を求める)、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇(退職を勧告し、応じなければ懲戒解雇とするもの)、懲戒解雇などがあります。

懲戒処分を行うためには、あらかじめ就業規則に懲戒の種類と事由を定めておく必要があります(労働基準法第89条第9号)。

さらに、労働契約法第15条は、懲戒処分が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には、懲戒権の濫用として無効になると定めています。つまり、就業規則に懲戒事由が規定されていたとしても、実際の処分内容が行為に対して重すぎる場合などは、無効と判断される可能性があります。

不貞行為だけを理由に懲戒処分はできないのが原則

裁判例の傾向としては、不貞行為のみを理由に会社が従業員に懲戒処分を下すことは、原則としてできないと考えられています。

労働契約上の労働者の義務は労務の提供であり、勤務時間外の私生活上の行為は原則として労働者の自由だからです。不貞行為は民法上の不法行為にあたりますが、あくまでも個人のプライベートな行為であり、会社の業務とは直接の関係がありません。

例外的に懲戒処分が認められるケース

ただし、不貞行為が私生活上の問題にとどまらず、会社の業務や企業秩序に具体的な悪影響を及ぼした場合には、例外的に懲戒処分が有効と判断されることがあります。私生活上の行為であっても「企業秩序に直接の関連を有するもの」や「会社の社会的評価の低下・毀損につながるおそれがあると客観的に認められるもの」については、懲戒処分の対象となり得るとされています。

具体的には、次のようなケースが考えられます。

企業秩序を乱した場合

不貞行為の発覚によって職場内の人間関係が著しく悪化し、業務に具体的な支障が生じた場合です。たとえば、不貞相手やその配偶者が会社に押しかけてきて業務が妨害されたケースや、同じ部署内での不倫が発覚して部署全体の協調性が損なわれ、業務遂行に支障が出たケースなどが考えられます。

会社の名誉・信用を著しく毀損した場合

不貞行為の事実が社外に広まり、会社の企業イメージや信用が大きく損なわれた場合です。特に、役員や管理職など社会的な立場にある従業員の場合には、不貞行為の発覚が企業イメージの低下に直結しやすいため、懲戒処分が有効と判断される可能性が高まります。また、取引先との関係に悪影響が生じた場合なども該当し得ます。

職務専念義務に違反している場合

職務専念義務とは、従業員は勤務時間中、会社の指揮命令に従い職務に専念しなければならないという義務のことです。不貞行為そのものが勤務時間中に行われていた場合や、勤務中に不貞相手と頻繁に私的なやり取りをしていた場合、会社の経費を不正に使って逢瀬を重ねていた場合などは、職務専念義務違反として懲戒処分の対象となり得ます。この場合、不貞行為自体ではなく、職務専念義務違反や経費の不正使用が処分の理由になる点に注意が必要です。

「不倫=即クビ」ではない

不貞行為が会社に知られると、「懲戒解雇されるのではないか」と考える方は少なくありません。しかし、前述のとおり、不貞行為のみを理由に懲戒解雇が認められるケースは、裁判例上も極めて限定的です。

仮に就業規則に「社内不倫をした場合は懲戒解雇とする」と定められていたとしても、それだけで直ちに懲戒解雇が有効になるわけではありません。労働契約法第15条に基づき、処分が客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であると認められなければ、懲戒権の濫用として無効となります。

懲戒解雇は、従業員にとって退職金の不支給・減額、再就職への影響など非常に大きな不利益をもたらす処分です。そのため、裁判所は懲戒解雇の有効性について特に厳しく判断する傾向にあります。不倫を理由に懲戒解雇が許されるのは、かなり限られたケースに限ると考えてよいでしょう。

不貞行為に関連して想定される処分の程度

仮に不貞行為が企業秩序に影響を与えたと認められる場合でも、実際に課される懲戒処分は比較的軽いものにとどまる傾向があります。多くのケースでは、戒告やけん責といった口頭注意・始末書提出程度の処分が相当と考えられています。

また、懲戒処分に至らない場合でも、会社から厳重注意を受けたり、配置転換(配転)を命じられたりすることはあり得ます。配置転換は懲戒処分ではなく人事上の措置ですが、実質的に不倫当事者を引き離す目的で行われることがあります。

不貞行為が会社に知られた場合にとるべき対応

不貞行為が会社に知られた場合、まず冷静に状況を把握することが大切です。会社から事情聴取や面談を求められた場合には、事実関係を正確に説明するようにしましょう。

会社から退職勧奨を受けた場合には、応じる義務はありません。退職勧奨はあくまで「退職を勧める」行為にすぎず、最終的に退職するかどうかは従業員本人の意思に委ねられています。退職する意思がないのであれば、その旨を明確に伝えることが重要です。

懲戒処分を言い渡された場合には、処分の内容が適正かどうかを確認する必要があります。不貞行為のみを理由とする懲戒処分は原則として無効となる可能性がありますので、処分に納得できない場合は、処分通知書などの書面を保管した上で、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

まとめ

不貞行為は民法上の不法行為ですが、あくまで私生活上の行為であるため、それだけを理由に会社が懲戒処分を行うことは原則としてできません。例外的に、企業秩序の侵害や会社の名誉・信用の毀損、職務専念義務違反などが認められる場合に限り、懲戒処分が有効となる可能性があります。ただし、その場合でも懲戒解雇のような重い処分が認められるケースは限定的で、処分の相当性は厳しく判断されます。

不貞行為が会社に知られた場合には、冷静に状況を把握し、不当な処分を受けることのないよう適切に対応することが大切です。

慰謝料の請求対応と併せて、会社との関係でもご不安がある場合には、弁護士への相談をご検討ください。

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この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
 弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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