元請運送会社に対する下請運送代金の請求|請求書だけで立証できるのか

口頭での発注が慣行的に行われているケースがあり、いざ代金が支払われないときに請求することができるのかという不安が発生します。

このページでは、下請運送代金債権の立証に必要な証拠や、請求書の証拠としての位置づけについて解説します。請求について不安がある場合は、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

※中小企業のページはこちら

全国どこでも、ご自宅から、オンラインで相談・依頼をお受けしています。
※オンライン相談はお使いのPCまたはスマートフォンで可能です。

下請運送代金債権と立証の基本

下請運送代金債権とは

下請運送代金債権とは、元請運送会社から運送業務の委託(再委託)を受けた下請運送会社が、その運送業務を遂行したことにより発生する運送代金の支払いを求める権利のことです。

運送業界では、元請会社が荷主から受けた運送業務の一部または全部を、下請会社に再委託することが広く行われています。この場合、元請会社と下請会社の間には運送委託契約が成立し、下請会社が運送を完了すれば、元請会社に対して運送代金を請求する権利(債権)が発生します。

立証責任の基本的な考え方

民事訴訟において、ある権利の存在を主張する側は、その権利の発生原因となる事実を証拠によって証明しなければなりません。

下請運送代金を請求する場合、原告(下請運送会社)が立証すべき主な事実は、おおむね次のとおりです。

・元請会社との間で運送委託契約が成立したこと(契約の成立)
・運送代金の額について合意があったこと(代金額の合意)
・下請会社が運送業務を実際に遂行したこと(債務の履行)

どのような証拠でこれらの事実を証明できるかが、重要な問題となります。

請求書の証拠としての位置づけ

請求書は証拠として提出すること自体は可能ですが、請求書だけで運送代金債権の存在を十分に立証できるかは、別の問題です。

請求書は、下請会社が一方的に作成して元請会社に送付するものです。このため、請求書があるだけでは「契約が成立した」「代金額について合意があった」といった事実を直接に証明する力は弱いといえます。

請求書だけでは不十分になりやすい理由

請求書は、あくまで「下請会社が一定の金額を請求した」という事実を示す文書にすぎません。元請会社が争う場合、次のような反論が想定されます。

・そもそも運送を依頼した事実がない(契約の不成立)
・請求書の金額は合意した代金額と異なる(代金額の争い)
・すでに代金は支払済みである(弁済の抗弁)

このような反論に対して、請求書だけでは十分な反証が難しい場合があります。特に、契約の成立や代金額の合意について元請会社が否認した場合には、請求書以外の証拠によって補強する必要が生じます。

請求書を補強するために有効な証拠

下請運送代金債権の立証を強化するためには、請求書に加えて以下のような証拠を収集・保全しておくことが重要です。

・運送委託契約書・発注書・引受書:契約の成立と代金額を直接証明する最も有力な証拠です。運送契約締結時には、内容を明示した書面の交付が義務化されています(貨物自動車運送事業法第12条)。
・配車指示書・運送依頼のメール・FAX・LINEなどのやりとり:口頭で発注が行われた場合でも、発注内容を記録したメールやメッセージが残っていれば、契約の成立を推認させる間接証拠となります。
・運送状(送り状)・配送伝票・受領書:運送業務を実際に遂行した事実を証明するための証拠です。荷物の受領印や配送記録が残っていると、業務遂行の事実の立証に役立ちます。
・過去の取引履歴・入金記録:過去に同様の取引で同額またはそれに近い金額が支払われていた事実は、代金額の合意を推認させる有力な間接証拠です。通帳の入金記録や過去の請求書・領収書なども重要です。
・運賃料金表・単価表:あらかじめ取り決めた運賃単価があれば、代金額の合意を証明する補助的な証拠になります。
・デジタコ・GPS記録・日報:車両の走行記録やドライバーの業務日報は、いつどの区間を運行したかを客観的に示す証拠となります。

未払い運送代金を回収するためにとるべき対応

まず、手元にある証拠を整理してみてください。請求書のほかに、メールやLINEでのやりとり、配送伝票、運行記録など、運送を行った事実や代金額の合意を裏付ける資料がないか確認しましょう。過去に同様の取引で代金が支払われていた実績があれば、その入金記録も重要な証拠になります。

証拠が請求書しかない場合でも、ただちに請求を諦める必要はありません。元請会社が契約の存在自体を争わない場合には、請求書や取引の経緯などから代金額を認定できるケースもあります。ただし、元請会社が全面的に争ってきた場合には、請求書だけでは立証が困難になる可能性があることも認識しておく必要があります。

将来に向けては、運送契約の書面化を徹底することが最も効果的な対策です。貨物自動車運送事業法で書面交付が義務化されていますので、法令遵守の観点からも契約の書面化を進めてください。また、日常的に配車指示や代金額のやりとりをメールやチャットで記録に残す習慣をつけることも、万が一のトラブルの際に大きな助けとなります。

まとめ

元請運送会社に対する下請運送代金債権は、請求書だけで立証できるかという問題については、請求書のみでは立証として十分でないケースが多いというのが実情です。請求書は、契約の成立や代金額の合意を直接証明する力は強くありません。立証を確実にするためには、契約書、発注メール、配送伝票、入金記録など、複数の証拠を組み合わせることが重要です。

請求書しかないように見える場合であっても、探せば他の証拠が見つかる場合もあります。証拠の評価や訴訟の遂行については専門的な判断が必要となりますので、運送代金の未払いでお困りの場合は、弁護士に相談されることをおすすめします。

※中小企業のページはこちら

この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
 弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
 ※弁護士紹介ページはこちら

全国どこでも、ご自宅から、オンラインで相談・依頼をお受けしています。
※オンライン相談はお使いのPCまたはスマートフォンで可能です。