不貞慰謝料請求で脅迫的な交渉をされたときの対処法

不貞慰謝料を請求された際、「会社にばらす」「家族に言う」などと脅されていませんか。慰謝料請求自体は正当でも、脅迫的な手段は犯罪や不法行為に該当する可能性があります。本ページでは、適用される法律と具体的な対処法を解説します。

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脅迫的な慰謝料請求に関する法律の仕組み

不貞慰謝料の請求は、不貞行為によって精神的苦痛を受けた配偶者の正当な権利です。しかし、請求する権利があるとしても、どのような方法で請求してもよいわけではありません。請求の手段が社会的に許容される範囲を超えている場合、刑法上の犯罪に該当したり、民法上の不法行為として損害賠償の対象になったりすることがあります。

以下では、脅迫的な請求が問題になる場合に関係する主な法律について説明します。

脅迫罪とは(刑法222条)

脅迫罪とは、相手方に対し、生命・身体・自由・名誉・財産に害を加えることを告知して脅す犯罪です(刑法222条)。

不貞慰謝料請求の場面では、たとえば「家族にばらす」「会社の上司に不貞の事実を伝える」などと告げる行為がこれに該当する可能性があります。ポイントは、実際に害を加えたかどうかではなく、害を加える旨を「告知」したこと自体が処罰の対象になるという点です。金銭の要求を伴わなくても、脅すだけで脅迫罪は成立します。

強要罪とは(刑法223条)

強要罪とは、脅迫や暴行を手段として、相手方に義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害したりする犯罪です(刑法223条)。

不貞慰謝料請求の場面では、脅迫に加えて、具体的な行為を要求することで成立する可能性があります。たとえば、「会社にばらされたくなければ今すぐ500万円を振り込め」「家族に知られたくなければこの書面にサインしろ」などと告げて、金銭の支払いや書面への署名を強いる場合です。

脅迫罪が「脅す行為」そのものを罰するのに対し、強要罪は「脅して何かをさせる行為」を罰する点で異なります。強要罪のほうがより重い犯罪であり、法定刑も脅迫罪より重くなっています。

名誉毀損罪とは(刑法230条)

名誉毀損罪とは、公然と事実を摘示して、他人の社会的評価を低下させる行為を処罰する犯罪です(刑法230条)。

不貞慰謝料請求の場面では、相手方が実際に第三者へ不貞の事実を伝えてしまった場合に問題となります。たとえば、請求者が勤務先に電話して「あなたの社員は不貞行為をしている」と伝えた場合や、SNS等で不貞の事実を公開した場合がこれに該当します。

重要な点は、伝えた内容が真実であっても名誉毀損罪は成立するということです。「不貞行為は事実なのだから言っても問題ないはずだ」という考えは誤りです。不貞行為が本当にあったとしても、正当な理由なく第三者にその事実を伝えれば名誉毀損罪が成立する可能性があります。

民法上の不法行為による損害賠償(民法709条)

上記の刑法上の犯罪に該当する行為は、同時に民法上の不法行為(民法709条)にも該当し、損害賠償請求の根拠となります。

不貞慰謝料の請求権を持っている側であっても、その請求手段が違法であれば、逆に損害賠償を請求される立場になります。たとえば、「会社にばらす」と脅して請求を続けた場合、不貞慰謝料の支払義務とは別に、脅迫行為自体について慰謝料を請求される可能性があります。

つまり、請求権があることと、請求方法が適法であることは別の問題であり、請求する側にも法的なルールを守る義務があるということです。

「訴える」「弁護士に相談する」と言われただけでは違法ではない

相手方から「支払わなければ裁判を起こす」「弁護士に相談して法的手続をとる」と言われた場合、不安に感じるかもしれません。しかし、これらは正当な法的手段をとることの予告に過ぎず、脅迫には該当しません。

裁判を提起することや弁護士に相談することは、法律上認められた正当な権利です。そのため、これらを予告する行為自体は、たとえ厳しい口調で伝えられたとしても、直ちに違法となるわけではありません。

弁護士からの書面に「会社に伝わる可能性」と書かれている場合

弁護士が作成する内容証明郵便等には、「支払いがない場合は給与差押えの手続をとることがあり、その場合は勤務先に通知が届く可能性があります」や「連絡が取れない場合はやむを得ず勤務先に訴状を送達する可能性があります」といった記載がされていることがあります。

これらは、法的手続の結果として会社に伝わる可能性があるという事実を説明しているに過ぎず、「会社にばらす」と脅しているわけではありません。正当な法的手段の説明であるため、違法にはなりません。

脅迫的な請求を受けたときにとるべき対応

脅迫的な請求を受けた場合、最も効果的な対応は弁護士に依頼することです。弁護士が代理人として相手方に警告を行うことで、脅迫的な言動が止まるケースが多くあります。また、実際に勤務先への連絡などの被害が生じた場合には、損害賠償請求を行うことも可能になります。

弁護士に依頼する前に、ご自身で対応せざるを得ない場合は、次の3つのポイントを意識してください。

証拠を確保する

相手方とのやり取りは、電話ではなく、メール・郵便・メッセージアプリなど記録に残る方法で行うようにしてください。相手方がどのような脅迫的な発言をしたかを後から証明できるようにしておくことが重要です。もし相手方が電話をかけてくる場合は、着信履歴を保存し、できれば録音も試みましょう。

連絡方法のルールを明示する

相手方に対して、「連絡はメールまたは郵便でお願いします」と明確に伝え、その記録を残しておきましょう。これにより、相手方が「連絡がつかなかったから会社に連絡した」などと主張することを防ぐことができます。

会社への連絡は不法行為になると警告する

本人に連絡が可能である以上、会社に不貞の事実を伝える正当な理由はありません。「会社に連絡した場合は不法行為として損害賠償請求を行います」と文書で明示しておくことが有効です。ただし、ご本人からの警告は弁護士からの警告に比べて効果が限定的である点にはご留意ください。

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まとめ

「会社にばらす」「家族に言う」といった脅し文句は、脅迫罪・強要罪・名誉毀損罪に該当する可能性があり、民法上の損害賠償の対象にもなり得ます。不貞をしてしまった場合でも、過大な請求に応じる必要はありません。冷静に証拠を確保しつつ、弁護士を代理人に立てて対応することが有効です。お早めにご相談ください。

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この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
 弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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