慰謝料交渉に第三者の同席を求められたときの対応方法
対面交渉にも、友人・家族の同席にも、応じる法的義務はありません。同席に応じると、人数で圧力をかけられるリスクがあります。
相手から「対面で話し合いたい」「友人や家族を連れて行く」と言われ、自分に非があるからと断りづらく感じていませんか。第三者を同席させた対面交渉に応じる法的義務はなく、応じれば人数で圧力をかけられるなどのリスクがあります。同席要求への正しい対応を解説します。
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同席に応じると、人数で圧力をかけられる危険があります。同席させるリスクを見る
第三者の同席要求に対する法律上の考え方
慰謝料の交渉において、対面での交渉にも、第三者の同席にも、法律上応じる義務はありません。以下、その根拠を説明します。
対面での交渉に応じる義務はない
慰謝料請求の交渉は、必ずしも対面で行う必要はありません。電話や書面(内容証明郵便など)でも交渉は可能であり、話し合いがまとまらなければ、請求する側が訴訟などの法的手続きに移行することになります。対面交渉を断ったとしても、それ自体が裁判で不利に扱われることはありません。裁判所は、交渉の方法ではなく、不貞行為の事実関係や損害の程度に基づいて判断します。したがって、「直接会って話がしたい」と言われても、それに応じなければならない法的義務はないのです。
第三者の同席に応じる義務はない
慰謝料の交渉は、本来、当事者間で行うものです。相手方の友人や家族は当事者ではなく、交渉に参加する法的な根拠がありません。相手方から「友人を連れて行く」「家族も同席させる」と言われたとしても、第三者の同席に応じる義務はありません。同席を断ることは正当な対応であり、断ったことで不利益を受けることもありません。
「非弁行為」とは
弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことを禁止しています。これに違反する行為は「非弁行為」と呼ばれます。第三者が慰謝料の金額について意見を述べたり、交渉を主導したり、代理するような場合には、その行為が非弁行為に該当する可能性があります。友人や家族であっても、本人に代わって交渉を行うことは法律上認められていません。弁護士以外の第三者が交渉に実質的に関与する場合、その交渉自体の適法性に疑義が生じるため、このような交渉には応じるべきではありません。
「非があるから言いなりになるしかない」わけではない
不貞行為をしてしまった側は、「自分が悪いのだから、相手の要求を断れない」と考えがちです。しかし、不貞行為の責任と、交渉の進め方は別の問題です。慰謝料を支払う義務があるとしても、それは法律上適正な金額を支払えば足りるものであり、交渉方法について相手の指示に従う義務はありません。対面交渉を断ること、第三者の同席を拒否することは、いずれも法的に正当な対応です。また、相手方が「会わないなら慰謝料を増額する」などと主張することがありますが、交渉の形式と慰謝料の金額は無関係です。このような主張に応じる必要はありません。
第三者を同席させることのリスク
万が一、第三者の同席に応じてしまった場合、次のようなリスクがあります。
人数で圧力をかけられるリスク
相手方が第三者を連れてくる場合、交渉の場では相手側の人数が多くなります。複数人に囲まれた状況では冷静な判断が難しくなり、本来であれば受け入れる必要のない条件を飲まされる危険があります。場合によっては強面の人物を連れてきて、威圧的な言動で不利な合意を迫られることもあります。
なお、威圧により合意させられた場合、その合意は「強迫」(民法96条1項)を理由に取り消せる可能性がありますが、立証は容易ではありません。そのような状況に身を置かないことが最善の対策です。
プライバシーが守られないリスク
慰謝料交渉では、不貞行為の具体的な内容や個人的な事情に触れることが避けられません。弁護士には守秘義務がありますが、友人や家族にはそのような法的な義務はありません。第三者が同席することで、交渉の内容が外部に漏れるリスクが生じます。交渉で知り得た情報を使って、第三者が後から不当な要求をしてくる可能性も否定できません。
非弁行為に巻き込まれるリスク
弁護士以外の者が交渉を代理することは非弁行為として禁止されています(弁護士法72条)。第三者が同席して実質的に交渉を行った場合、そのような場で成立した合意の有効性が後に問題となる可能性があります。「ただ見ているだけ」と説明されていても、実際に交渉に介入すれば非弁行為に該当しうるため、このような場に参加すること自体がトラブルの種になりかねません。
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第三者の同席を求められたときの具体的な対応
第三者の同席を求められた場合には、以下のように対応することをお勧めします。
対面交渉自体を断り、書面での交渉を提案する
まず、対面での交渉そのものを断ることを検討してください。書面(内容証明郵便など)での交渉であれば、冷静に内容を検討する時間が確保でき、感情的な対立が生じにくくなります。交渉を書面で行うこと自体は適法であり、これを断ることで裁判上の不利益は生じません。
対面に応じる場合でも、第三者の同席は明確に拒否する
やむを得ず対面で交渉する場合には、第三者の同席を明確に断りましょう。「第三者が同席するのであれば交渉に応じない」という態度を事前に伝えておくことが有効です。また、対面交渉を行う場合は、喫茶店などの人目のあるオープンスペースを選ぶようにしてください。
第三者が勝手に来た場合は、すぐに交渉を打ち切る
事前に断っていたにもかかわらず、相手方が第三者を連れてきた場合には、直ちに交渉を打ち切って席を立ちましょう。無理にその場で交渉を続ける必要はありません。その後は、書面での交渉に切り替えるか、弁護士に相談して方針を決めることをお勧めします。
「訴訟になっても構わない」という心構えを持つ
交渉の場面では、相手方から「話し合いに応じないなら裁判にする」と言われることがあります。しかし、裁判は法律に基づいた手続きであり、むしろ感情的な対面交渉よりも適正な結論に至りやすいといえます。裁判を必要以上に恐れず、「訴訟に移行しても構わない」という態度で臨むことが、不利な合意を避けるために重要です。
まとめ
対面交渉も第三者の同席も、応じる法的義務はありません。同席に応じれば、人数で圧力をかけられて不利な合意を迫られたり、プライバシーが漏洩したり、非弁行為に巻き込まれるリスクがあります。まず書面での交渉に切り替えることを検討し、対面でも第三者の同席は明確に拒否してください。当日連れてきた場合は席を立つことが重要です。
一方で、相手の勢いに押されて同席を受け入れてしまうと、その場の雰囲気で不利な条件に合意してしまいかねません。直接の話し合い自体を避けたい、窓口を任せたいという場合は、一度弁護士へご相談ください。状況を伺えば、弁護士が窓口となって対面交渉自体を回避する方法を具体的にお伝えできます。
この記事の執筆者
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