裁判所の特別送達に身に覚えがない|届いたときの確認事項と対処法
身に覚えがなくても、無視は禁物です。期限内に裁判所へ反論しなければ、相手の主張どおりの判決が出てしまいます。
裁判所から特別送達が届いたものの、まったく身に覚えがなく、戸惑っていませんか。過去の借入れ、知らない間の相続、交渉なしの慰謝料請求、架空請求など、原因はさまざまです。しかし、いずれの場合も無視は禁物で、期限内に反論しなければ相手の主張どおりの判決が出てしまいます。確認事項と対処法を解説します。
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まず開封して内容を確認し、本物か確かめることが大切です。やるべきことを見る
特別送達の仕組みと届く理由
特別送達とは
特別送達とは、裁判所から訴訟関係者に対して重要な書類を届けるための特別な郵便方法です。通常の郵便とは異なり、郵便配達員が受取人に直接手渡しします。受け取りの際には署名または押印が必要となるため、郵便受けに投函されることはありません。封筒の表面には「特別送達」の記載があり、差出人として裁判所名が記されています。
特別送達で届く書類には、訴状、支払督促、期日呼出状などがあります。いずれも裁判手続に関する重要な書類であり、法的な対応が必要となるものです。
特別送達は受取拒否できない
特別送達は法律上、受取拒否ができません。仮に受け取りを拒んだ場合でも、郵便配達員がその場に書類を置いていく「差置送達」が認められています。
不在の場合には不在票が投函されます。不在票を無視し続けた場合でも、受け取らないことで手続を止めることはできません。受け取りを拒否し続けても、最終的には敗訴扱いに陥ることになります。
身に覚えがない場合に考えられる原因
特別送達に身に覚えがないと感じても、実際には正当な手続であることが少なくありません。よくある原因は次の4つです。
過去の借入れに関する請求
過去の借入れや未払い債務に関する請求であるケースがあります。債権者が債権譲渡や回収委託を行っている場合、訴状の原告欄には聞き覚えのない会社名が記載されていることがあります。その場合でも、訴状の「請求の原因」欄を確認すると、元の貸金業者名や契約内容が記載されています。何年も前の契約であれば記憶が薄れていることもあるため、「身に覚えがない」と感じることがあり得ます。
知らない間に相続人となり遺産分割調停を申し立てられた場合
面識のない親族が亡くなったことで、自分が法定相続人になっていたというケースもあります。疎遠になっていた親の兄弟姉妹が亡くなり、代襲相続によって相続人の地位を引き継いでいた場合などです。他の相続人が家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てると、相続人全員が当事者となるため、相続人であることを知らなかった方のもとにも、調停の申立書や呼出状が届くことがあります。戸籍上の親族関係に基づく正当な手続である可能性があります。呼出しを無視すると、調停が不成立となった後に審判手続に移行し、自分の意見を伝える機会を失うことになります。
交渉なく突然損害賠償や慰謝料を請求された場合
事前の交渉や連絡がないまま、いきなり裁判所を通じて損害賠償や慰謝料の請求を受けるケースもあります。民事訴訟の提起にあたって事前の交渉は必須ではないため、相手方が交渉を省略して直接訴訟を提起することもあります。たとえば、不貞行為の慰謝料を請求する配偶者側が、示談交渉を経ずに訴状を提出するケースです。訴状の内容をよく読むと思い当たる出来事が記載されていることもあります。事実と異なる点や反論すべき点がある場合は、答弁書にその旨を記載して提出することが重要です。
架空請求や詐欺の可能性
まれに、簡易裁判所の支払督促手続を悪用した架空請求詐欺が行われることがあります。国民生活センターも、過去に架空請求業者が実際に裁判を起こした事例があることを注意喚起しています。ただし、たとえ架空請求であったとしても、本物の裁判所から届いた特別送達であれば、放置してはいけません。架空の内容であっても、裁判所で反論を行わない場合には、相手の主張する事実が本当に存在するものとして認定され、相手の主張通りの判決(支払命令)が出てしまいます。
身に覚えがなければ無視してよいわけではない
「身に覚えがないのだから放っておけばよい」という考えは、最もよくある勘違いのひとつです。特別送達を無視すると、裁判は相手方の主張のみに基づいて進行します。
訴状に対して答弁書を提出せず、口頭弁論期日にも出席しなければ、相手方の言い分をそのまま認める判決が出ます。支払督促の場合は、受領から2週間以内に督促異議の申立てをしなければ、仮執行宣言が付され、最終的には給与や預貯金などの財産が差し押さえられるおそれがあります。身に覚えがない請求であっても、裁判所を通じてきちんと反論することではじめて、不当な請求を退けることができます。
本物の特別送達と偽物の見分け方
裁判所や法務省を名乗った架空のはがきや封書が届くケースも報告されています。本物の特別送達と区別するために、以下のポイントを確認してください。
まず、裁判所からの正式な書類は必ず「特別送達」の方法で届きます。はがきで届くことはありません。また、郵便受けに直接投函されることもなく、郵便配達員から手渡しで受け取り、署名または押印を求められます。封筒には裁判所名と事件番号・事件名が記載されています。
もし書類が本物かどうか判断がつかない場合は、書類に記載されている連絡先ではなく、インターネットや電話帳で裁判所の電話番号を自分で調べたうえで、直接問い合わせるようにしてください。書類に記載された電話番号に連絡すると、架空請求の相手に個人情報を知らせてしまうおそれがあります。
全国対応・オンライン相談可能・秘密厳守
特別送達を受け取ったらまずやるべきこと
身に覚えのない特別送達を受け取った場合、最も大切なのは放置しないことです。以下の手順で対応を進めてください。
封筒を開封し、中の書類を確認する
まず封筒を開封し、中の書類を確認します。訴状なのか支払督促なのか、どこの裁判所から届いたのか、原告(申立人)は誰か、どのような請求がなされているかを把握してください。
本物の裁判所からのものか確認する
書類が本物の裁判所からのものかどうかを確認します。前述のとおり、裁判所の連絡先は書類の記載ではなく、裁判所のホームページから調べて問い合わせてください。書類に記載された番号に連絡すると、架空請求の相手に個人情報を知らせてしまうおそれがあります。
内容に応じた対応を期限内に取る
書類の内容に応じた対応を取ります。訴状が届いた場合は、同封の答弁書に自分の言い分を記載して裁判所に提出します。支払督促が届いた場合は、受領日から2週間以内に督促異議の申立てを行う必要があります。この期限を過ぎると、相手方の請求がそのまま認められてしまう可能性があります。答弁書や異議申立書の書き方がわからない場合や、対応に不安がある場合は、早めに弁護士に相談することを検討してください。
まとめ
裁判所からの特別送達は、身に覚えがなくても決して無視してはいけません。過去の債務に関する請求から、突然の慰謝料請求、架空請求まで原因はさまざまですが、いずれの場合も期限内に裁判所へ反論しなければ、相手の主張どおりの判決が出てしまうおそれがあります。まずは開封して内容を確認し、本物の裁判所からのものか確かめることが出発点です。
一方で、「自分には関係ない」と思い込んで放置してしまうと、本来であれば退けられたはずの不当な請求が、そのまま確定してしまうことになりかねません。期限が限られている手続もありますので、対応に迷う場合は、できるだけ早く弁護士へご相談ください。書類の内容を伺えば、本物かどうかの確認や取るべき対応を具体的にお伝えできます。
この記事の執筆者
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