財産分与は結婚生活の中で夫婦が協力して築いた財産を、公平に分けるための重要な手続きです。
ここでは、財産分与の基本的な考え方や、対象となる財産・ならない財産の違い、そして実際の分け方の基準について解説します。
財産分与とは
婚姻中、夫婦は互いに協力して生活を築き、経済的にも支え合っています。
たとえば、夫が働き、妻が家事や育児を担うという形であっても、双方の貢献があってこそ家庭が成り立っています。
そのため、離婚時には「夫婦が協力して築いた財産」を公平に分ける必要があります。これが「財産分与」です。
たとえば、夫が会社員として働き、妻が専業主婦だった家庭で、10年間の婚姻生活の間に夫名義の口座に500万円の貯金ができた場合。
この500万円は夫婦が共同で築いた財産ですので、250万円ずつ分けることになります。
手続き上は、夫が妻に250万円を支払う形で処理することになります。
分け方の基準
財産分与は、夫婦が財産の形成にどの程度寄与したかによって割合を決めます。
現在は家事・育児による貢献も経済的寄与と同等に評価される傾向にあります。
そのため、共働き・専業主婦(主夫)を問わず、原則として「2分の1ずつ」とするケースが多くなっています。
ただし、一方が仕事と家事の両方を担っていた場合など、特別な事情がある場合には、比率が1:1でないこともあります。
財産分与の対象となる財産
財産分与の対象になるのは、婚姻生活中に夫婦が協力して築いた財産です。
代表的なものは次のとおりです。
- 預貯金
- 不動産(自宅や投資用物件など)
- 退職金(婚姻期間中に積み立てられた部分)
- 株式や投資信託などの金融資産
- 車や家財道具など
名義がどちらか一方になっていても、実際に夫婦の協力で築いたものであれば、分与の対象になります。
財産分与の対象にならない財産
次のような財産は、婚姻生活とは無関係に得たものとして、財産分与の対象になりません。。
- 婚姻前に築いた財産(結婚前の貯金など)
- 親族から相続・贈与された財産
- 別居後に新たに得た財産
これらは「特有財産」と呼ばれ、夫婦共同で形成したものではないため、原則として本人のものと扱われます。
よくある質問と実務上の注意点
婚姻前の財産を生活費に使った場合
たとえば、婚姻前の貯金を生活費に充て、その結果、夫婦の共有財産を減らさずに済んだような場合には、その分を考慮して財産分与で調整することがあります。
つまり、支出した側に財産を戻すことになります。
借金がある場合
夫婦での共同生活中に借金を作っていた場合には借金も分けることになります。
もっとも、借金の名義人を変更することはできないため、借金を負う側がより多くの財産を取得するなどの方法で調整します。
住宅ローンが残っている場合
不動産にローンが残っている場合、不動産とローンを別々に引き継ぐことも可能です。
しかし、不動産を取得した側がローンの返済を怠ると、金融機関が抵当権を実行して差し押さえるおそれがあります。そのため、ローンと不動産は同一人が引き継ぐことを推奨しています。
まとめ
財産分与は、夫婦が築いた財産を公平に分ける制度であり、離婚後の生活基盤にも大きく関わります。どの財産が対象となるか、どのように評価するかは事案ごとに異なるため、専門家の助言を得ながら進めることが重要です。
具体的な財産の範囲や分け方で迷われた場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。