計算書類の種類と意味

 会社には、債権者や投資家(株主)を保護するため計算書類(決算書など)の作成が義務付けられています。
 計算書類は会社の成績表に例えられる通り、計算書類を分析することで自社の財務上の優れている点や改善が必要な点を知り、経営改善に役立てることができます。
 ここでは、基本的な計算書類と簡単な読み方を紹介します。

貸借対照表

貸借対照表の例

流動資産 450
 現金預金 50
 売上債権 100
 棚卸資産 300
固定資産 300

流動資産 400
 買入債務  100
 短期借入金 300
固定負債 250
 長期借入金250
負債合計 650
株主資本 100
 資本金 100
純資産合計 100
資産合計 750 負債及び純資産合計 750

 上の表は貸借対照表の例です。
 かなり簡略化していますが、税理士さんなどに作ってもらったものでも書かれている内容は同じです。 

 貸借対照表はある時点における会社の財政状態(ストック)を示す計算書類であることや、左側が借方、右側が貸方であり双方の数字が一致することは聞いたことがあると思います。

 左側の借方は、資産をどのような状態で保有しているかを示しています。
 上の例であれば、固定資産(機械など)として300万円、棚卸資産(商品在庫など)として300万円を保有していることなどが分かります。

 右側の貸方は、資産の元となっている資金の出どころを示しています。
上の例であれば、資本金(自己資金)として100万円調達し、足りない650万円は借入と買入債務(後払い)で調達していることがわかります。

 意味を理解した上で貸借対照表を眺めると様々なことが分かります。

 例えば上の例では、流動資産(比較的短期間で現金化できる資産)が流動負債(比較的短期間で支払期日が到来する負債)を上回っています。
 このため、短期的な安全性は確保されており、通常の事業活動を行っている限りは倒産の危険はないといえます。
 一方で、現金預金や売上債権のようなすぐに現金化することのできる資産(当座資産)は流動負債を大幅に下回っています。
 このため、棚卸資産(商品など)が予定通りに売れない場合には支払いに窮する危険があります。

損益計算書

損益計算書の例
売上高 100
売上原価 60
 ①売上総利益 40
販売管理費 25
 ②営業利益 15
営業外収益
営業外費用
 ③経常利益
特別利益
特別損失
 ④税引前当期純利益 15
税金等支払
 ⑤当期純利益

 損益計算書は、ある期間における企業の利益を表示する計算書類です。
 最初にその期間における売上高を記載し、そこからさまざまな支出をひいて最終的な利益を算出します。

 表の見方としては以下のようになります。

①まず売上高があり、そこから仕入代金などの売上原価をひいた売上総利益が算出されています。
 いわゆる粗利益と呼ばれるものです。

②続いて、販管費(営業費用や店舗・オフィスの維持費など)をひいて営業利益が算出されています。
 営業利益は、会社の本業における稼ぐ力を示しています。

③次に、営業外費用(利息の支払いなど)をひいた経常利益が算出されています。
 経常利益は、資金調達の上手さなども含めた会社の総合的な稼ぐ力を示しています。

④そして、特別利益(設備の売却など非常の利益)を加えて税引前当期純利益が算出されています。
 特別利益や特別損失は偶発的に発生するものなので、税引前当期純利益がたまたま黒字になっていても会社の業績が良いとは限りません

⑤最後に、税金等の支払いを差し引いて当期純利益が算出されています。
 これが最終的に利益として会社の手元に残るものです。

 売上と最終的な純利益に目が行きやすいですが、途中の支出を分析することで会社の現状や改善すべき点を知ることができます。

 上の例であれば、純利益(④や⑤)は生み出していますが、これはたまたま設備の売却などによる特別利益が発生したためであり、経常利益(③)はあまり大きくありません。
 これは、営業利益(②)は十分に生み出しているものの、営業外費用(利息の支払いなど)の負担が重くなっていることが原因になっていることが分かります。
 このため、利息の支払い負担を減らすことができれば経営状況を向上させることができることが分かります。
 そこで、借り換えなどによって利息の支払いを減らすことができないかを検討してみることになります。

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書の例
Ⅰ 営業キャッシュフローの計算
税引前当期純利益 +50
減価償却費 +10
売上債権の増加 -20
棚卸資産の増加 -10
仕入債務の増加 +20
合計 +50
   
Ⅱ 投資キャッシュフローの計算
有形固定資産の購入 -50
合計 -50
   
Ⅲ 財務キャッシュフローの計算
長期借入による収入 +50
合計 +50
   
Ⅳ キャッシュの増加額 +50
キャッシュの期首残高 20
キャッシュの期末残高 70

 キャッシュフロー計算書は、ある期間において会社がどれくらいのキャッシュ(現金・預金)を確保できたかを示す書類です。
 貸借対照表や損益計算書と異なり、キャッシュフロー計算書は一般的な中小企業では作成が義務付けられていません。
 しかし、キャッシュフロー計算書やその考え方は、会社を存続させるために必要になるため、簡略化したものでもよいので作成してみることを推奨します。

 会社が倒産しないために最も重要なことは、赤字を出さないことでも債務超過にならないことでもなく、キャッシュが不足しないことです。

 例えば、「100万円を支払わなければならない。」という期日があったとします。
 この時に、「会社は債務超過だが、キャッシュは200万円ある。」という場合は100万円を支払って事業を継続できます。
 他方で、「売掛金が1000万円あるが、キャッシュが50万円しかない。」という状況では支払いができず倒産に至ります。
 このように、キャッシュを確保することが会社を存続させるために重要な事項となります。

 キャッシュフロー計算書は、キャッシュをどのような方法でどれくらい確保したかを示す書類です。

 実際に例のキャッシュフロー計算書を見ると次のような意味になります。

 最初に営業キャッシュフローから見ます。
 まず、税引前当期純利益である50万円分のキャッシュが確保されたものとして一番上に記載されています。
 しかし、実際にはキャッシュの出入りをしていない支出や収入、キャッシュの出入りをしているのに収入や支出に計上されていないものなどがあります。そこで、これを差し引きしていきます。

 減価償却費10万円は支出として計算されますが実際にはキャッシュは流出していません。また、仕入債務10万円もまだキャッシュは流出していません。このため、これらの金額を加算しています。
 他方で、売上債権20万円は利益として計上されますがまだキャッシュが入っていません。同様に、棚卸資産10万円もはまだ売れていないので支出には計上されていませんが、購入のためにキャッシュが流出しています。このため、これらの金額を減産しています。
 最後にこれらの営業活動によって、50万円のキャッシュを確保したことが示されています。

 投資キャッシュフローと財務キャッシュフローを見ると、有形固定資産の購入のために50万円を支出し、その資金調達のために50万円の長期借り入れをしています。
 最後に、これらの合計額として、今期で50万円のキャッシュを確保したこと、前期までの残額である20万円と合わせて、現在70万円のキャッシュが確保できていることが分かります。

資金繰表

資金繰表の例
日付 項目 入金 支払 残高
機首      
1/15 ③B社に支払い   100 -100
1/25 ⑤A社から支払 150   50

 資金繰表は、日々の支払いに必要なキャッシュ(現金・預金)を管理するための表です。
 法律上作成が義務付けられる書類ではありませんが、銀行融資の際に提出を求められる場合があります。

 例えば、以下のようなX社の事業活動を想定します。
 ⓪ 期首残高は0円と仮定する。
 ① 1月1日に、商品をA社に売却する契約をする。
 ② 1月10日に、商品をB社から仕入れる。
 ③ 1月15日に、B社に代金100万円をB社に支払う。
 ④ 1月20日に、商品をA社に納品する。
 ⑤ 1月25日に、A社から代金150万円を受け取る。
 これを、資金繰表に記載すると上の表になります。
 資金繰表を確認すると1月15日に残高がマイナスになることが分かります。
 そこで、この日までに銀行からの借入を受けるなどしてキャッシュを確保する必要があります。

 資金繰表を活用することで、いつの時点でどれくらいキャッシュが足りなくなるかを把握することができ、余裕を持った資金繰りを行うことができるようになります。