管理監督者と名ばかり管理職

労働者を8時間を超えて働かせると残業代を支払う義務があります。
しかし、管理職であればこの義務がありません(労働基準法41条2号)。

このように聞くと
「従業員をすべて管理職にすれば、残業代を支払わずに定額働かせ放題になる。」
と考える人が出てきます。

しかし、会社が管理職だと定めればすべて管理職になるわけではありません。
裁判所は、残業規制における管理監督者について次のような考え方をしています。

① 労務管理上,使用者と一体的な立場にあること
② 労働時間管理を受けていないこと
③ 基本給や手当の面でその地位にふさわしい処遇を受けていること

分かりやすく言うと、実質的に経営者側であり、働き方も自由であり、それに見合った給料をもらっている、
という場合に管理職と認められるということになります。
中小企業であれば、役員クラスでなければ管理職と認められないとイメージするとよいでしょう。

管理職扱いにして残業代を支払っていなかったものの、実態としては管理職に当たらないといえるような場合を、いわゆる名ばかり管理職と呼んでいます。

名ばかり管理職と認定されると、支払っていなかった残業代を支払う義務が発生します。
しかも、残業代規制がない前提で働いていると、通常よりも長時間の残業を行っている場合が多いです。
さらに、従業員としても「3年くらい働いて辞める時にまとめて請求しよう。」という発想になります。
このため、会社には3年分の残業代がまとめて請求されることになります。
この支出は会社にとってかなり重い支出になります。

このため、自社の雇用内容が管理監督者に該当するか否かは慎重に検討する必要があります。