2026年1月施行「取適法(旧下請法)」で委託取引はどう変わる?

2026年1月1日から、いわゆる「下請法」は「取適法(とりてきほう)」へ変わり、委託取引の対象範囲や禁止行為が見直されます。規制対象の拡大(従業員基準の追加・運送委託の追加など)により、これまで対象外だと思っていた業務委託が新たに該当する可能性もあります。ここでは、取適法で委託取引がどう変わるのかを解説します。

法制度解説

取適法とは

取適法は、正式には「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」といい、旧下請法(下請代金支払遅延等防止法)が改正されて2026年1月1日に施行されました。法律名・用語も見直され、「親事業者/下請事業者」は「委託事業者/中小受託事業者」へ、「下請代金」は「製造委託等代金」へ変更されています。
用語が変更されたのは、「下請」という用語が対等な取引当事者ではないという語感を与えること、取引当事者間でも「下請」という用語を用いていないことが理由とされています。

対象となる「委託取引」はどう広がったか

取適法は、委託事業者が中小受託事業者に対して「物品の製造・修理」「情報成果物(ソフトウェア等)の作成」「役務(運送、情報処理、ビルメンテナンス等)の提供」などを委託する取引に適用されます。2026年改正で、目的物の引渡しに必要な運送を委託する「特定運送委託」が対象取引として追加されました。

対象になるかどうかは、①取引類型と、②当事者双方の規模(資本金に加え、常時使用する従業員数)で決まります。従来の資本金基準に加え、従業員基準(例:300人・100人の区分)が追加され、資本金が小さくても人員規模が大きい企業が「委託事業者」に該当しやすくなりました。これは、大きな会社でありながら資本金を減らして「中小企業化」する会社が出てきているためです。

委託事業者(発注側)に課される4つの義務

取適法の対象取引になると、委託事業者には主に次の義務が課されます。

発注内容等を明示する義務
委託後「直ちに」、給付の内容、代金額、支払期日、支払方法などを明示します。2026年改正で、電磁的方法(メール、EDI、SNSメッセージ等)での提供が、中小受託側の承諾の有無にかかわらず可能になりました(ただし、受託側から書面交付を求められた場合は遅滞なく書面交付が必要です)。

取引記録の作成・保存義務(2年)
給付内容、受領(提供)日、支払状況等の記録を作成し、2年間保存します。

支払期日(受領後60日以内)を定める義務
受領日(役務提供なら提供を受けた日)から60日以内で、できる限り短い期間内に支払期日を定めます。

遅延利息(年14.6%)の支払義務
支払遅延がある場合は、遅延利息(年14.6%)の支払が必要です。

禁止行為が強化:価格協議と支払手段

取適法には、受領拒否、支払遅延、減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、報復措置などの禁止行為があります。実務インパクトが大きいのは次の2点です。

「協議に応じない一方的な代金決定」の禁止
中小受託側から価格協議の求めがあったのに、協議に応じない/必要な説明をしないまま一方的に代金を決める行為が禁止されます。

「手形払」等の禁止(支払手段の適正化)
手形の交付による支払が一律に禁止されます。電子記録債権やファクタリングについても、支払期日までに代金相当額の満額を得にくいもの(つまり割引がされるもの)は認められなくなります。

注意したい勘違い

  • 「業務委託なら全部、取適法の対象」ではありません。
    取引類型(誰が何を請け負い、何を再委託しているか)で判断します。
  • 「資本金だけ見ればよい」ではありません。
    従業員基準が追加されたため、資本金が小さくても対象になるケースがあります。
  • 「メールで発注できる=内容はざっくりでよい」ではありません。
    電磁的方法でも、必要事項の明示が必要です。

対応方針

義務や禁止事項、対象となる取引をすべて理解するのは大変です。
自社の資本金と従業員数をもとに、どのような相手であれば取適法の対象になるのかを整理しておきましょう。

一般の取引の場合

  • 自社の資本金が3億円超
    委託するとき:資本金3億円以下
  • 自社の資本金が1億円~3億円
    委託するとき:資本金1千万円以下
    受託するとき:資本金3億円超
  • 自社の資本金が1千万円以下
    受託するとき:資本金1千万円超
  • 自社の従業員が300人超
    委託するとき:従業員300人以下
  • 自社の従業員が300人以下
    受託するとき:従業員300人以上

情報成果物作成委託等の場合

  • 自社の資本金が5千万円超
    委託するとき:資本金5千万円以下
  • 自社の資本金が1千万円~5千万円
    委託するとき:資本金1千万円以下
    受託するとき:資本金5千万円超
  • 自社の資本金が1千万円以下
    受託するとき:資本金1千万円超
  • 自社の従業員が100人超
    委託するとき:従業員100人以下
  • 自社の従業員が100人以下
    受託するとき:従業員100人以上

まとめ

取適法(旧下請法)の施行で、委託取引は「対象の拡大」と「運用の厳格化」が進みました。従業員基準の追加で対象判定が複雑になり、特定運送委託の追加で物流関連での適用も生じます。自社における適用要件を整理しておき、適用対象の相手と取引する場合には、公正取引委員会のサイトなども参考にしながら適切な手続きを行いましょう。
なお、発注内容の明示、価格協議への適切な対応、手形等の支払手段の見直しは、いずれもトラブル予防の基本です。適用対象にならない場合でも実施することが望ましいです。

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この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
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退職代行を使われた会社側の対応

退職代行業者から突然連絡が来ると、会社側としては「誰と連絡すべきか」「貸与物はどうするのか」「給与どうするのか」という混乱が発生します。
結論としては、①連絡窓口は本人宛の郵便に一本化して記録を残す、②貸与物返還は郵便で請求する、③賃金は原則どおり支払う、という対応を行うべきです。
このページでは、退職代行業者からの連絡が届いた時の会社の対応を解説します。

法制度と会社の対応

退職代行とは

退職代行は、本人に代わって「退職の意思表示を会社へ伝える」サービスです。
退職代行業者ができるのは、代わりに郵便を送る行為までであり、それ以上のことはできません。
弁護士でない業者が、未払残業代・退職金・慰謝料など請求をしている場合にはすると、非弁行為(弁護士法72条)であり犯罪です(弁護士法77条3号)。

会社としては、退職代行業者から未払い残業代の請求などがあってもこれに対応してはいけません。特に、労働者の口座以外にこれらの支払いを行うことは絶対に行ってはいけません。

連絡窓口は「本人宛+書面(記録化)」

最初に、社内の連絡窓口を人事・総務(または法務)に一本化し、現場が個別に電話・SNS等で対応しないルールにします。口頭は行き違いが起きやすいので、原則メールや書面でやり取りし、受領日・内容・担当者を記録します。
連絡の相手方は退職代行業者ではなく本人とします。弁護士でない退職代行業者との合意では、後から労働者とトラブルになる危険があります。
退職通知を行った者が弁護士であれば、その弁護士を窓口とします。この場合は、逆に本人に直接連絡を取ってはいけません。

貸与物返還は請求できるが、賃金支払いを拒むことはできない

貸与物(PC・スマホ・社員証・鍵・制服・資料など)は会社の所有物なので、会社は返還を求められます。返還対象のリストを作り、返還期限・返送方法などを文書で案内します。
「返ってくるまで給与を払わない」「給与から差し引く」ことはできません。賃金は全額払いが原則であり、法令・労使協定に根拠のない控除はできません。貸与物未返還の問題は、返還請求や損害賠償など別の枠組みで処理する必要があります。

具体例でイメージをしましょう

退職代行業者から「即日退職」「未払残業代請求」の連絡、貸与PCが未返還

X社の従業員Zについて、退職代行業者Yから「Zは本日付で退職する。100万円の未払い残業代があるので当社指定の口座に支払って下さい。」と内容証明郵便が届きました。
Zは出社せず、ノートPCと入館カードを所持したままです。
X社としては、残業代は適切に支払ってきたつもりであり未払いは発生していないつもりです。

賃金は適切に支払い、返還請求をしつつ、必要であれば訴訟準備

X社では、まずは粛々とZの最終の賃金額を計算し、支払いをします。同時に、Z宛に郵便で貸与PCと入館カードの返還を求めます。
Zからは、「退職代行業者に依頼しているからそちらに連絡してほしい」と連絡がありましたが、X社としては「Yは弁護士ではないので、Yと交渉することはできない」と回答します。

X社内で検討したところ、貸与PCのデータや入管カードのデータは外部から消去できるため、返却がされなくても重大なセキュリティリスクがないと判断しました。そこで、返却を求める訴訟は行わないものの、Zから未払い残業代を求める訴訟があれば、反訴で返還請求を行うこととして、資料を保存しておくこととしました。

まとめ

退職代行を使用するかどうかは労働者の自由ですが、中には非弁行為を行っている悪質な業者が存在します。
そのような業者との対応を誤った場合には、せっかく支払った賃金が労働者に届かなかったり、二重払いの危険を負うこともあります。
退職代行からの連絡があった場合には、弁護士かどうかを確認した上で、適切な対応を行いましょう。

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無期拘禁(無期懲役)とは?

先日、安倍元首相の銃撃事件について無期判決のニュースがありました。
このページでは、無期拘禁(無期懲役)について解説します。

無期拘禁とは(無期懲役との関係)

「無期懲役」は、刑期(年数)を定めず、刑事施設に収容し続ける刑です。近年は制度・用語が変わっていて、懲役・禁錮が廃止され、「拘禁刑」に一本化されました(法律上は「無期懲役」ではなく「無期拘禁刑」という表記が基本になります)。
※ただし、事件の日付(改正前後)などにより、報道や裁判の場面で「無期懲役」という言葉が引き続き使われることになります。

無期拘禁になり得る罪

無期拘禁規定されているのは、「最も重い部類の犯罪」です。
殺人、強盗致死、現住建造物等放火などについて無期拘禁刑が規定されています。

なお、強盗致死については、死刑か無期しか規定されておらず、闇バイトで強盗を行い人を死亡させた場合や、万引き後に逃走のために人を死亡させた場合にも、最低でも無期拘禁となります。

無期(無期懲役)で仮釈放を受けられる「最短の期間」

無期の受刑者も、制度上は仮釈放の対象になります。
無期刑の場合には、最短で10年で仮釈放を受けられることになります(刑法28条)。

実際の仮釈放の可能性

法務省の公表資料

法務省の発表によると過去10年間の、仮釈放になった無期受刑者の人数と死亡した無期受刑者の人数、仮釈放された人の平均在監期間は次の通りです。

仮釈放(人)死亡(人)年数
平成26年72331年4月
平成27年112231年6月
平成28年92731年9月
平成29年113033年2月
平成30年102431年6月
令和元年172136年
令和2年142937年6月
令和3年92932年10月
令和4年64145年3月
令和5年83037年4月

実際の仮釈放の可能性

この表を見ると、仮釈放をされるのは一部の受刑者であり、大半の受刑者は在監のまま死亡していることが分かります。仮釈放を受けられる場合でも、30年後半から40年以上の在監期間があることが分かります。
つまり、限定された一部の受刑者(模範囚)が40年程度の在監期間を経て仮釈放される可能性があるにとどまります。

よくある勘違い

まれに「仮釈放は10年で出られる」と説明されることがありますが、実態に即しない単純化しすぎた説明ということになります。

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謹賀新年

新年のご挨拶

明けましておめでとうございます

昨年は万博に弁護士会での活動と、仕事以外でも充実した1年を過ごさせていただきました。
本年も多くの方に法的サポートを提供できるよう駆け抜けていきたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。

デジタル遺産の相続

インターネット上で財産を管理できるようになり、最近はデジタル遺産の相続が発生する機会も増えています。
このページではデジタル遺産の相続について解説します。

デジタル遺産とは?

デジタル遺産とは、一般的には、故人がデジタル形式で保存していた財産のことを言います。
決まった定義があるわけではなく、インターネットバンクなどのように財産的な価値があるものに限定して言及されたり、ウェブ上に保管した記念写真などのように財産的な価値がないものも含めて言及される場合があります。

デジタル遺産の例

デジタル遺産の例としては次のものがあげられます。

財産的な価値のあるもの

  • インターネットバンキング口座
  • ネット証券口座
  • 暗号資産(ビットコインなど)
  • 電子マネー(ICOCAの先払いなど)

財産的な価値のないもの

  • インターネット上に保存した写真などのデータ
  • サブスクリプションなどの月額利用契約

デジタル遺産が相続の対象になるか

相続では、故人のすべての財産関係が相続の対象になります。
プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も引き継ぎます。
また、故人と誰かとの間の契約関係も引き継ぎます。

このため、サブスクリプション契約なども含めてデジタル遺産は相続の対象になります。

デジタル遺産の相続の手続き

それでは、財産の種類ごとにデジタル遺産の相続の手続きを紹介します。

インターネットバンキング

インターネットバンキングでは、次のような手続きの流れとなります。通常の銀行とほとんど違いはありません。
ログインパスワードなどが分からなくても大丈夫です(パスワードが分かる場合でも手続きをせずに引き出しなどを行ってはいけません。)。

・銀行に連絡
・手続き書類の受け取り
・書類の記入と必要書類(戸籍の写し、印鑑証明、遺産分割協議書など)の提出
・預貯金の払い戻し

主要なインターネットバンキングの相続手続きのリンクを記載します。
(リンクは執筆時のものになります。)

ネット証券口座

ネット証券口座は、インターネットバンキングと同様の流れとなります。

主要なネット証券会社の相続手続きのリンクを記載します。
(リンクは執筆時のものになります。)

暗号資産

暗号資産取引であっても、ほとんどは暗号資産用の取引業者に口座を開設して取引をしています。
このため、この取引業者に連絡をして相続手続きを行うことになります。
銀行や証券会社と同じですが、それらと比べて手続き窓口が見つけにくくなっています。

主要な取引業者の相続手続きのリンクを記載します。
(リンクは執筆時のものになります。)

電子マネー

各会社に連絡をして、払い戻しなどの手続きを行うことになります。

主要な電子マネー会社の相続手続きのリンクを記載します。
(リンクは執筆時のものになります。)

インターネット上の写真データなど

ログインをしてデータをダウンロードした上でアカウントの削除をします。
アカウント作成時に本人確認などがされないため、ログインアカウントやパスワードが分からない場合には手続き不可能な場合が多いです。

サブスクリプション契約など

多くの場合は、クレジットカードや銀行の引き落としで契約が判明することになります。

運営会社に連絡をして利用停止をするか、ログインして利用停止をします。
どちらの手続きもできない場合には、クレジットカード会社や銀行に連絡をして引き落としを停止します。

生前の対策(被相続人の準備)

デジタル遺産は相続人に存在を気付かれず失われてしまったり、代金を支払い続けたりしてしまうことがあります。
デジタル遺産に限ったことではないですが、相続人のために次の作業をしておきましょう。

  • 財産や契約関係のリスト化
  • ログイン情報の保存
  • 各財産の相続時の手続きの確認

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 寺岡法律事務所
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ビットトレント(BitTorrent)を利用したことによる開示請求や損害賠償請求が増えています

ビットトレント利用をめぐる発信者情報開示請求とは

近年、「ビットトレント(BitTorrent)」を利用したことで発信者情報開示請求を受けたという相談が増えています。特に、アダルトビデオ業界が積極的に発信者情報開示を進めており、本来の賠償額を大きく超える金額を支払ってしまったというケースも散見されます。ここでは、ビットトレントの仕組みと発信者情報開示請求の特徴、そして適切な対応について解説します。


ビットトレントとは

一般的に、違法アップロード・ダウンロードと言えば、誰かがサーバへデータをアップロードし、別のユーザーがそこからダウンロードする形が想定されます。アップロードした人物には故意が明らかで、責任追及もしやすい構造です。

一方、ビットトレントはファイル共有の仕組みが根本的に異なります。データが小さく分割され、利用者同士が直接やり取りする点が特徴です。ユーザーは作品をダウンロードすると同時に、その断片を他のユーザーへ自動的に提供(アップロード)する状態になります。つまり、ひとつの作品の流通に多数のユーザーが同時に関与する仕組みです。この点が、後述する発信者情報開示請求にも大きく影響します。


違法になるのか

ビットトレントというシステム自体は違法ではありません。しかし、実際には著作物を違法にアップロード・ダウンロードする手段として用いられることが多く、権利者が法的措置を取る事例が増えています。とくに「自分はアップロードしたつもりがない」という認識の利用者でも、仕組み上、自動的にアップロードに協力してしまう点が問題になります。


最近増えているトラブル

特にアダルトビデオ業界では、ダウンロードを理由とする発信者情報開示請求が活発です。作品データが断片化されているため、10分程度の作品でも数十人単位のユーザーが「アップロードに関与した」として請求対象となることがあります。
さらに、「家族や勤務先に知られたくない」という心理につけ込み、数十万円〜百万円程度の高額な示談金を提示され、そのまま支払ってしまうケースも珍しくありません。


適切な対応とは何か

① 発信者情報開示請求への対応

まずは、開示請求に対して適切に対応することが重要です。争う姿勢を示すことで、開示が認められない可能性も十分にあります。実際、証拠が不十分なケースや、権利侵害が明らかでないケースでは、開示が否定される例もあります。
早期に弁護士へ相談し、法的に妥当な反論を行うことが重要です。

② 請求への向き合い方

多数の相手に一斉請求を行い、一部が支払ってくれればよい——という対応をしている権利者も存在します。弁護士が代理人として争う姿勢を示すことで、請求側が態度を軟化させる、あるいは請求自体を断念することもあります。


まとめ

発信者情報開示請求を受けたからといって、請求額をそのまま支払う必要はありません。安易に示談に応じてしまうと、本来負う必要のない高額な金銭を支払う結果につながります。まずは仕組みを理解し、適切な法的対応を行うことが何より重要です。


費用

ビットトレント(BitTorrent)関連の開示請求の対応については、特殊性を踏まえて通常よりも低めの料金設定を用意しております。

開示請求対応・意見書文案作成:5.5万円
・意見対応の代理:11万円
損害賠償請求対応・受任時:11万円~(税込)
・終了時:減額した15.4%(税込)
・訴訟移行時:+22万円(税込)
・期日日当:3.3万円/日

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【解決事例】困った親族との接触を避けつつ遺産分割を完了させた事案

相談内容

Xさんは、お母さま(Aさん)が所有するマンションで、Aさんの介護をしながら二人で暮らしていました。
Xさんにはお兄さん(Zさん)がいますが、ZさんはたびたびXさんやAさんのもとを訪れては金銭を無心するなど、二人を困らせていました。

そうした状況の中、Aさんは90代まで長生きされましたが、ついに亡くなられました。
Xさんは、しっかりと葬儀を執り行い、Aさんを見送った後、預貯金やマンションの名義変更などの相続手続きを進めようとしました。
しかし、ここで問題が生じました。
相続手続きを行うには、共同相続人であるZさんと連絡を取り、二人で手続きを進める必要があります。
Zさんの連絡先や住所はわかっているものの、これまでの経緯を踏まえると、連絡を取れば再び金銭を無心されることが予想され、何よりもZさんと連絡を取ること自体がXさんにとって大きな精神的負担となってしまいます。

そこでXさんは、弁護士に相談しようと考え、私のもとを訪れました。

解決までの流れ

ご相談を受けて、私は「法的には難しくないものの、実際の手続きの面では非常に複雑になりそうだ」という印象を持ちました。

まず、Zさんとは裁判所以外で交渉を行うべきではないと判断しました。
これまでの経緯を踏まえると、たとえ何らかの法的合意ができたとしても、Zさんがそれを無視して再び金銭を無心してくる可能性があると考えられたからです。
そこで、裁判所という公的な場で手続きを行うことで、Zさんに対して「後から蒸し返すことはできない」という強い印象を与えることを目指しました。

まずは、Aさんの遺産を整理するために、預貯金や不動産に関する資料の収集を開始しました。
幸いにも、Aさんは生前からとても几帳面な方で、財産を分かりやすく整理してくださっていたため、この作業は2~3か月ほどで完了しました。

ところが、その途中で問題が発生しました。
弁護士からの受任通知を受け取ったZさんが、突然弁護士事務所を訪れ、「早く金が欲しい」と主張してきたのです。
もちろん、弁護士としてそのような要求に応じることはできません。
その場で、事務所に直接押しかけて金銭を要求するような行為は場合によっては犯罪となり得ることを警告し、正式な手続きを経るように、すなわち調停の申立てを待つよう指示しました。

このように、Zさんの突然の来訪というトラブルはあったものの、無事に弁護士から家庭裁判所へ調停申立てを行うことができました。
調停が始まってからは、Aさんの生前のご意向も踏まえ、相続分に応じて財産を公平に分割することで合意に至りました。

そして、Xさんが懸念していた「今後もZさんが金銭を無心しに来るのではないか」という不安にも対応する必要がありました。
そこで、調停合意の条件として、Zさんから「今後Xさんに直接接触しないこと。もし連絡が必要な場合は、必ず弁護士を通すこと」といった誓約を取り付けました。

このようにして、XさんとZさんが顔を合わせることなく、無事に調停を成立させ、預貯金や不動産の名義変更も滞りなく行うことができました。

弁護士のコメント

遺産分割について弁護士に相談するのは、「分割方法をめぐって揉めている場合」と思われがちですが、実際にはそうとは限りません。
他の相続人と連絡が取れない、取りたくない、あるいは連絡を取りにくいといった理由でご依頼いただくケースも少なくありません。
法的な争いがない場合でも、弁護士にご相談・ご依頼いただくことで、遺産相続の手続きをよりスムーズに進められることがあります。

初めて団体交渉の申し入れを受けた場合の対応

中小企業であってもある日突然労働組合から団体交渉を申し入れられることがあります。
このページでは、団体交渉の基本から、申し入れを受けた際の初動対応、拒否の可否、交渉の進め方、注意点まで詳しく解説します。

団体交渉とは?

団体交渉とは、労働組合が代表者を通じて使用者(企業側)と労働条件について交渉することを指します。憲法第28条で保障されている労働基本権の一つであり、使用者が正当な理由なく団体交渉を拒否することは違法とされています(労働組合法第7条第2号)。

団体交渉の申し入れを受けたら最初にすべきこと

申し入れを行った労働組合の性質を調査

中小企業の場合には社内に労働組合がないケースも多く、労働者が「●●ユニオン」などのような外部の労働組合に加入して、その組合から申し入れがあるケースがほとんどです。このような外部の労働組合であっても「労働組合」に該当します。
外部の労働組合の場合にはホームページなどを設置している場合も多いので、まずはインターネットで検索をして性質や傾向を調べてみます。攻撃的な性質が強い労働組合や、政治団体としての性質が強い労働組合の場合には特に対応を考える必要があります。

適法な団体交渉の申し入れか確認

使用者が正当な団体交渉を拒絶することは違法となります(労働組合法7条2号)。
一方で、法律上の団体交渉の要件を満たさない場合には交渉を拒絶することが許されます。
そこで、団体交渉を拒否できるケースに該当するかを確認します。

団体交渉を拒否できるケース

①「労働者」に該当しない場合

団体交渉の申し入れを行うためには労働組合法上の「労働者」(労働組合法3条)に該当することが必要です。労働組合法上の「労働者」は、労働基準法などの労働者とは異なる場合があります。

自社の従業員や、従業員であった者であれば当然に「労働者」に該当します。
雇用契約ではなく業務委託などの場合であっても、労働組合法上の「労働者」に該当する場合がありますので慎重に検討する必要があります。
詳しくは労働組合法上の労働者について解説したこちらの投稿をご参照ください。

②団体交渉の対象にならない場合

団体交渉は労使間の交渉なので、その交渉対象は労働条件に関わるものと、労使間の交渉方法などに関わるもので、使用者が決定できるものに限られます。

交渉対象になる例賃金、休暇などの労働条件、解雇の撤回など
会社の合併に伴う人員整理など
交渉対象にならない例労働関連法規の改正など
会社の合併の反対など

拒否する場合の注意点

団体交渉を拒否する場合には、本当に拒否が許される場合に当たるか否かを慎重に検討する必要があります。
必ず専門家に相談しながら行うようにしましょう。

団体交渉の進め方

交渉の方法を交渉する

団体交渉を進める際には、まず交渉の方法を決めるための事前協議を行います。主に次の点を決定します。

交渉の日時所定労働時間外に行なう
1回●時間以内で行なう
 など
交渉の場所外部の会議室を借りる
使用料は折半する
 など
交渉の出席者双方●人以内とする
弁護士の同席を認める
 など
記録の方法それぞれで録音する、議事録を作成するなど

団体交渉で注意すべきポイント

実際の交渉では次の点に注意しましょう。

誠実に交渉する会社は形式的に交渉に出席するだけではなく誠実な交渉をする義務があります。
理由も示さずに要求を拒否したり、根拠資料を示さずに要求を拒否したりすると団体交渉を拒否したと認定される場合があります。
曖昧な回答をしない直ちに決められないこと、その場で分からないことについてはあいまいな回答をせず次回の回答として構いません。
曖昧なまま回答しても会社としての正式な見解と評価されます。
感情的にならない団体交渉では双方がヒートアップしていくことがあります。この時に会社として不用意な発言をしたりすると、そのことが不法行為になることがあります。
相手方が感情的になるほど、こちらは冷静な対応をするように意識しましょう。
記録を残す双方の間で決まったことはその都度記録に残すようにします。
ヒートアップしての不用意な発言を控える抑止力にもなります。
粘り強く交渉する誠実な交渉をしても合意ができない場合には交渉を打ち切ることも許されます。
しかし、交渉を打ち切った場合には争議行為や訴訟に移行することも多く、手間としても結果としても交渉よりも負担が大きくなる可能性があります。
1回や2回では終わらず長期間の交渉になることを見据えて粘り強い交渉をしましょう。

まとめ

初めて団体交渉の申し入れを受けると、対応方法が分からず不安になることが多いですが、適切に対応すれば過度に恐れる必要はありません。
特に中小企業では団体交渉の経験が少ないことが多いため、専門家のサポートを受けながら慎重に進めることが重要です。
適切な交渉方法を学び、冷静かつ誠実に対応することで、労使双方にとって適切な解決を図ることができます。

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この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
 弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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【解決事例】家賃収入の行方が不明な不動産相続を遺産分割調停で円満に解決した事例

ご相談内容

ご相談者のXさんは、2年前にお母さまを亡くされました。
相続人は、Xさんとご兄弟のZさんのお二人です。

お母さまの相続財産には、預貯金のほか、複数の不動産が含まれており、その一部は他人に賃貸して家賃収入が発生していました。
しかし、お母さまのご逝去後、家賃の振込が止まり、入金の行き先が分からない状態となっていました。

XさんはZさんに家賃の状況を確認しましたが、回答が得られず、不動産相続と遺産分割の進め方に不安を感じ、当事務所へご相談に来られました。

弁護士による対応と解決の流れ

まず、弁護士が相続財産の全体像を明らかにするため、

  • 不動産の登記事項の調査
  • お母さま名義の預貯金口座の取引履歴の取得
  • 不動産の評価額(時価)の調査

を行いました。

その後、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、家賃収入の行方についての開示を求めました。
調停の結果、家賃はZさんが受け取っていたことが判明。
一方で、Zさんは建物の修繕・管理費用を負担していたため、合理的な管理費用については相続財産から差し引くこととしました。

最終的に、以下の内容で遺産分割の合意が成立しました。

  • 不動産・預貯金・家賃収入から合理的な管理費用を控除した金額を相続財産とする
  • 相続財産を2分の1ずつ分ける
  • Xさんは現金で、Zさんは不動産と預貯金で受け取る

これにより、Xさんは遠方のN県へ出向くことなく、相続手続きをすべて完了することができました。

弁護士からのコメント

相続人の一方が財産を管理していて、他の相続人が内容を把握できないケースは珍しくありません。
しかし、弁護士が調査を行うことで、正確な財産の内容や家賃収入の流れを明らかにし、公平な遺産分割を実現することが可能です。

「相手が財産を開示してくれない」「家賃収入の管理状況が不明」など、
不動産相続に関するお悩みがある方は、ぜひ一度ご相談ください。

労働契約と業務委託契約の違いと法的リスク|弁護士×社労士が解説

近年、企業が従業員を労働契約から業務委託契約(個人事業主)に変更する動きが活発化しています。企業側は社会保険料や人件費の削減、従業員側は柔軟な働き方の実現といったメリットが注目される一方、両契約の法的性質は大きく異なります。安易な契約変更は法的リスクや労働基準法違反につながる恐れがあるため、専門家による正確な制度設計と契約書作成が必要です。
本記事では、労働契約と業務委託契約の基本的な違い、具体的なメリット・デメリット、そして実務上の注意点を弁護士×社労士が解説します。

労働契約と業務委託契約の基本的な違い

労働契約とは?

労働契約は、使用者が従業員に対して「指揮監督」を行い、業務遂行に応じた賃金を支払う契約です。(労働契約法6条)

特徴:
・勤務時間に基づく賃金支払い
・使用者が業務の指導・監督を行える
・労働法や社会保険の適用対象

業務委託契約とは?

業務委託契約は、仕事の完成を委託し、仕事の完成に対して報酬を支払う契約です(民法632条)。

特徴:
・業務の成果物に対して固定報酬が支払われる
・受託者は自律的に業務を遂行
・使用者による「指揮監督」は行えない

労働契約と業務委託契約の比較

労働契約業務委託契約
指揮監督不可
労働法の適用適用不適用
社会保険料の負担企業が負担負担なし
報酬の支払勤務時間に対応業務の完成に対応

労働契約と業務委託契約のメリット・デメリット

【労働契約の場合】

メリット:
企業が従業員に対して指揮監督を行い、業務進捗や納期を柔軟に管理可能

デメリット:
労働基準法に基づく残業代の支払い、労働時間管理などの法的義務、社会保険の負担が発生

【業務委託契約の場合】

メリット:
報酬が固定され、残業などの追加コストが発生しにくい
受託者が自律的に業務を遂行できるため、効率化を期待できる

デメリット:
指揮監督ができず、進捗管理や品質のコントロールが難しい
フリーランス法による一定の配慮義務が存在する

違法な業務委託契約とその法的リスク

労働契約と認定されるケース

業務委託契約を「定額働かせ放題」として労働法の規制を回避しようとする場合、実態が労働契約と判断されるリスクが高まります。裁判例や厚生労働省の指針では、「指揮監督の有無」と「報酬の労働対償性」が重要な判断基準とされています。
厚生労働省のガイドライン

労働契約と認定された場合の影響

実態が労働契約であると認定されると、労働基準法による残業代支払い義務、解雇規制、さらに労働基準監督署の指導対象となり、企業に大きな法的リスクが生じます。

業務委託契約制度導入時の注意点

①労働法の回避手段として利用しない
業務委託契約は、あくまで業務効率化や柔軟な働き方を実現するための手段であり、労働法の抜け道としては利用できません。

②適切な契約書の作成
個別契約書や取引基本契約書には、委託内容、報酬額、報酬支払時期、成果物の帰属など必要な項目を明確に記載することが重要です。
外部の業者に委託する場合に定めている条項を適切に定めるように意識しましょう。

③指揮監督の限界を認識する
業務委託契約では、受託者に対する日常的な指導や監督ができないため、業務内容や指揮系統を明確に分ける必要があります。
社内の従業員と同じような指示を行わないように注意しましょう。

④報酬設定の適正化
報酬が仕事の完成に対して算定されるような条件を整え、労働時間に基づく賃金体系とならないよう注意が必要です。

まとめ

労働契約と業務委託契約は、それぞれ異なる法的性質とリスクを持ちます。
企業が契約形態を変更する際は、弁護士や社労士と連携し、法的リスクや実務上の注意点を十分に検討することが不可欠です。正確な制度設計と適切な契約書作成により、リスク回避と業務効率化の両立を目指しましょう。

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この記事の執筆者
 寺岡法律事務所
 弁護士 寺岡健一(大阪弁護士会)
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